第19話
放課後になりゴブリンのハザマに入った。
魔法陣の光が弱いハザマから順番にモンスターを倒していった。
次のハザマはゴブリンの最大出現数が多い。
ここだけはいつも緊張する。
俺はいつも通り100のゴブリンをアローで倒し、門に迫るゴブリンは門を開けて最後の2×2メートルの部屋に誘い込んだ。
シャドーランサー・アロー・そして俺で順調にゴブリンを倒していった。
だが様子がおかしい。
もう300は倒したはずだ。
終わらない。
戦いながら映像で外を確認する。
3本角のメスゴブリンが拠点から出て椅子に座っている。
マイルームを見て笑っていた。
クイーンか!ゴブリンクイーン!
撤退……いや、待てよ?
俺如きがまだ生き延びている?
……おかしい。
クイーンが出て来たのに俺は生きている。
俺は昔から大げさだと言われていた。
思えば風邪を引くたびに人生史上1番苦しい思いを更新し続けていた。
そんなわけがない。
レンは『フトシは大げさな所があるからね』と言っていた。
ユイも『フトシは話を大きく言いすぎる所があるよ』と言っていた。
アマミヤ先生やゴウタさん、父さんや母さんからも同じような事を言われてきた。
クラスメートからも同じことような事を何度も言われてきた。
俺が痩せられない理由はこの甘えか。
俺は頑張った?違う違う、ほとんどこの部屋で戦わず立っていただけだ。
シャドーランサーと門が危なくなった時だけ門を開けてシャドーランサーと一緒にゴブリンを倒しただけ、俺は楽をしている。
まだまだだ!
俺はまだ本気じゃない!
俺は甘えている!
もし、みんなが今の俺を見たとする。
みんなは俺を信頼してくれるのか?
いや、信頼されないだろう。
あいつはクイーンなんかじゃない!
偽クイーンだ!
偽クイーン如きを倒せない俺が!ダイエットの目標1つ、たった1つさえ達成できていない俺がユイを励ます事が出来るのか?
レンの力になれるのか?
父さんと母さんに貰ったお菓子と自転車をレンに渡した時の空回りするような感覚を思い出した。
ユイに何も言えなかった惨めな感覚を思い出した。
成長しない限りあの惨めな感覚を味わい続ける!
本気を出せよ!
考え事をしている間にシャドーランサーがやられた。
門が突破される。
それがどうした!?
本気を出す!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
部屋に迫って来たゴブリンをすべて倒し、1メートル幅の回廊陣を進みながら金棒を振り回す。
1回振ると4体のゴブリンが霧に変わる。
だが振った後金棒が横壁にぶつかり、衝撃が体に伝わって来る。
ぶつからないように工夫しろ!
俺は腰を落とし、スイングの軌道をU字に変えた。
何度も何度も左右に金棒を振りながら通路を進んだ。
魔石が落ちても気にせず前に進む。
◇
息が、苦しい。
俺は後ろに走った。
そして門を閉める。
門を叩く音が聞こえる。
その間に呼吸を整えた。
息を整えている間に門も破壊される。
攻撃再開だ。
アローと俺だけでゴブリンを狩る!
狩って狩って狩りまくる!
そしてまた通路を進む。
何度も何度も金棒を振り疲れても金棒を振る。
もう何体狩ったか覚えていない。
俺は、ここまでなのか!
手が、痺れてきた。
偽クイーンを倒す力すらないのか!
アマミヤ先生の言葉を思い出した。
『少しでも嫌な予感がしたらすぐに逃げろ』
……そうか、俺は弱い。
今は弱い、今弱い事を認めよう。
何度も、何度もチャレンジすればいい!
俺はマイルームを解除して魔法陣に走った。
後ろを振り向くと偽クイーンが俺を見て笑っている。
次は見ていろよ!
次は対策をしてもっとうまく戦う!
お前のパターンは分かった。
ハザマから出ると、負けて逃げ帰ったのに不思議と達成感を感じていた。
さっきは全力を出していた。
冒険者が俺を見る。
ゴウタさんが俺を見ると走って来た。
どうしたんだ?
「血!血!お前どうした!」
自分の体を見ると、ゴブリンから攻撃を受け、服がボロボロになり、服に血が付いていた。
「は、はははは、ゴブリンの群れに突撃してしまって」
「危ない!ワンパターンでいいんだ!自分の勝ちパターンを守ってくれ!マイルームの力を生かせ!」
「……はい、気をつけます」
「明日からこのハザマに毎日入りたいです。予約は出来ますか?」
「それは大丈夫だがまずは血を拭け!」
「はい、タオルありがとうございます」
新しい目標が出来た。
偽クイーンを倒す。
毎日このハザマに通う。
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