第186話

 城からマイルームに進化を開始して、最初の日。

 1時間も眠れなかった。

 やる事は変わらない。

 俺が戦って疲れるとシャドーが戦う。

 シャドーの戦闘経験と俺の戦闘経験、そしてシャドーを画面から見る事で得られる経験を総動員して戦う。

 魔石はとにかくすべて食べる。

 出し惜しみせずレッドオーラを使い、シャドーが持っている間だけ休む。


 慣れてくると睡眠時間が2時間、3時間と増えていった。

 消耗が激しく、6時間寝るようになったがそこからさらに変化があった。

 攻撃を受ける頻度が減り、3か月経つ頃にはレッドオーラは必要無くなっていた。

 今はもう、3時間の睡眠でいい。


『城がマイルームに進化しました』


『シャドー憑依を習得しました』


 俺は毎日イナゴの第三形態と戦った。

 4月が終わり、卒業式には出られなかった。

 それでもいいと思う。

 俺は今、充実していた。

 ダンスに没頭して時間を忘れる感覚と同じだ。


 俺は戦い続けた。


『フトシ、第三形態に対応しやがった!』

『凄すぎ!』

『でも、第三形態がどんどん出てくる』


『フトシ、今からハザマを消滅させますね。後7日でお休みです☆』

「後、7日か」


 4日後、異変が起きた。

 レギオンが攻めてこない。

 そして第三形態と色違いの漆黒のイナゴが現れた。


『あれは! レギオンの王、ブラックです! 倒しても共食いをして何度でも王を生み出します』


 見た瞬間に分かった。

 漆黒の人型イナゴは強い。

 普通に戦っても勝てるかどうか分からない。


 普通じゃ駄目だ。

 圧倒的な力が必要だ。


「シャドー、憑依!」


 シャドーが俺に憑依して俺の能力値を引き上げた。

 レギオンの王、ブラックが構えた。


 狂気が必要だ。


 レッドオーラ4発分


 シャドー憑依


 金棒召喚


 すべてを使い切る。


 ブラックが俺に向かって走った。


「レッド&ブラック!」


 黒いオーラと赤イオーラが混ざり合って輝く。

 すべてを使い切って一瞬に圧縮する。


 レッドオーラも、シャドーも、金棒も、全部使い切っていい。


「グロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


 金棒の攻撃を一瞬で無数に繰り出した。

 金棒が粉々に砕け、レッドオーラを使い切り、シャドーが消えた。


 ブラックが魔石に変わり、その魔石を飲み込んだ。


『うおおおおおおおおおおお! 一瞬で王を倒したぜ!』

『フトシ、お疲れ様、今はゆっくり休もう』

『これで終わったな。後3日、ゆっくり休んでくれ』


 ドームの魔法陣が光り、第三形態が現れた。


「やっぱり、そうくるか」


 レギオンは意識を共有している。

 王が勝てなかった場合に備えて追加のレギオンを用意していた。

 レギオンは王ですら駒の1つだ。

 レギオンの動きを見てそれが分かった。


『次の王を作らずにフトシを殺しに来た!』

『まずいぞ! 多分今のでスキルを使い切ったはずだ!』


 俺はグレートオーガの金棒を取り出して伸びない金棒で戦う。

 イナゴを叩き倒すが、後ろから次の第三形態が現れてキリがない。

 壁を背にして戦うと今度は第三形態に混ざってハチが出てきた。


 攻撃射程外から毒針が飛んできてハチを倒すために前に出ると後ろを取られ、消耗を狙った攻撃を繰り返してくる。

 魔法陣から出てくるレギオンを倒そうとすればドームにいるモンスターが徹底的に邪魔をしてくる。


 俺は丸一日眠らずに戦った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る