第74話

【山の中】


 俺の名は木山隆太キヤマリュウタ(22)。

 日本の政治を、世の中を憎んでいる。

 背は高いが痩せている。

 苦労してきたからだ。

 昔ガイコツに似ていると言われたが、それも苦労してきたせいだ。


 俺は恵まれない召喚系のスキルを持っている。

 召喚系の能力は戦闘力が低い場合が多い。

 召喚スキルは召喚したスキルが意思を持っていたり、物質化する。

 魔石を食べてもその成長に余分な力を使うと言われている。


 直接剣で斬ったり魔法で攻撃する他の系統より召喚系は成長効率が悪い、これが常識だ。



 高校に入るとみんな俺とパーティーを組んでくれなかった。

 先生に引率を頼んでも付いて来てくれなかった。

 1人でハザマに入り、頑張ってモンスターを倒しても先生に見つかって怒られた。


 何がパーティーを作れだ!

 コミュニケーションが大事?

 俺はパーティーを組んでもらうよう頼んで、先生に引率をしてもらうよう言った。

 その上で駄目だった。

 だから1人でハザマに潜っただけだ!


 しかも、先生たちは俺が死んでも責任を追及されないように自分たちの保身のために俺に怒っている。

 この歪んだ制度や仕組みがおかしいだけだ。

 うまく機能していないのが悪い!

 変えないお前らが悪い!


 俺は1年間バイトをして、戦闘訓練をこなし魔石を買って食べた。

 親に頭を下げて魔石を買って貰った。


 高校2年生から1人で冒険者ランクを上げて、1人でハザマに行った。

 何度も危ない目にあってそれでもやめず、努力し続けた。


 俺の力が認められ、先生が黙ると今度は生徒からパーティーに誘われた。

 俺をパーティーに入れてくれなかったあいつら手のひら返しをして来たときは本当に気色が悪かった。

 俺は呆れながらパーティーの誘いを断った。


 高校を卒業して少しすると中級冒険者になった。

 『イフリート』のスキルが大きくなった。

 更に『炎のカード』を覚え、俺のモンスター狩りは効率を上げた。


 俺はスケルトン狩りが得意だった。

 毎日毎日毎日毎日スケルトンを狩った。


 ある時スケルトンクイーンが出て来た。

 俺は偶然クイーンを倒すとスキルを手に入れた。

 

『スケルトンのハザマを出せる能力』


 そこから俺はハザマを出してスケルトンを狩りまくった。

 そして上級冒険者になっても陰口が聞こえて来た。


『ガイコツみたい』


『なんか怖い』


『人を殺しそう』


 俺は命を賭けて一人でハザマに入って戦った!

 何もせず平和に暮らしている奴に限って陰口が酷い、そいつらの正気を疑った。


 恨みが消えない。

 この世の中は間違っている。


 俺は政治家になろうと思った。

 何もせず文句を言うだけのクズと俺は違う。

 俺が変えてやる。


 だが、政治家になれるのは衆議院で満25歳以上。

 おかしい!

 22才の俺は政治家に立候補すら出来ない!

 何度意見を出しても無視される!


 なぜ俺が駄目なのに半分ボケて利権を守る為だけに動く老人政治家がいつまでも政治をやっている!

 バカなのか!?

 この世の中はやっぱり腐っている! 狂っている! 歪んでいる!


 冒険者が頑張ってもネットで叩かれ、高い税金を払い、老人の養分になり続けている!


 後ろからは錬金術師が高いアイテムを売って安全に金を稼いでいる!


 更に国の仕事を受注して丸投げしたり、補助金をもらい続けて利権を貪る害虫のような経営者ども! 


 俺が、冒険者がいるおかげでお前らは安全に暮らせている!


「クズどもが、余裕を持ちすぎだ。死んでも分からせてやる!」


 俺は日本の山奥、木の茂みに隠すように大量のハザマを発生させた。


 中級・スケルトンのハザマが無数に不気味な光を放つ。






 木山隆太キヤマリュウタはそこそこ恵まれていた。

 不遇ではあるがスキルを授かり、親から魔石を買ってもらう事が出来、更に無料の冒険者学校に通えた。


 彼の怒りは恨みに変わり収まらない。


 この日彼は、テロリストになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る