第78話

 家に帰りベッドに横になった。

 そして考える。


 ユイは弓の火力不足に悩んでいる。

 今日のような感じでハザマに行けばユイは魔石を食べてくれる。

 でも、100体狩ってやっと1個出るかどうか……

 時間がかかりそうだ。


 中級モンスターの魔石は能力値をアップするスキルを得られる。

 ガーゴイルは魔力アップのスキルだから、少なくともユイは弓をたくさん撃てるようにはなるだろう。

 アマミヤ先生はユイを助ける事が出来て元気になっている。

 今日の感じで何度もハザマに行く。

 それをやれば、徐々に2人は良くなっていくだろう。


 そして、中級ハザマに潜れば、ヒトミに堂々と素材を渡す事が出来る。

 そうなればヒトミの素材不足は気にしなくて良くなる。


 もうすぐ夏休みだ。


 ……スキルを試したい。

 我慢できなくなってきたのだ。


 砦を発生させた。

 そして部屋にいながらハザマを出して侵食する。


 するとモンスターが砦に現れてオートでモンスターを狩っていき、魔石が溜まっていく。

 便利だな。

 今度はベッドで横になりながら試すと、問題無く出来た。


 寝ながらレベルアップ出来る。


 でも、ゴブリン・オーガ・グレートオーガのハザマは不足している。

 あまり浸食しすぎるのは……やめておこう。

 オーガとグレートオーガの魔石は、力がアップするスキルを取れるんだ。

 最近、俺がハザマを消すと、他のハザマが消えているような。そんな気がして来た。


 俺の能力値は、ほぼオートで上がっていく。

 放置レベルアップか。


 少し、食べておくか。

 アイテムボックスから魔石を取り出して食べる。

 甘い。


 今日も、良い日だった。

 俺は眠りに落ちていった。




【ユイ視点】


 朝の陽ざしが気持ちいい。

 同じ家にフトシが眠っている。


 なんだか落ち着かない。

 フトシの部屋に行ってもいいかな?

 う~ん、でも……



 ◇



 行こう、もう2時間も経った。 

 フトシも起きているはず!


 私はフトシの部屋に行き、ドアをノックした。


「フトシ、おはよう、入っていいかな?」

「ん、んん、ユイ?いいぞ」

「入るね」


 ガチャ!


「うわ!え!これは!」


 フトシが慌てている。

 フトシの隣にシーツの膨らみがあった。

 まさか!


「ヒトミ!」

「ん、んん、おはようございます。ユイ」


 ユイが起き上がるとシーツがはらりと落ちた。


「な、何で裸なの!」

「裸の方が、寝心地がいいと思って、フィット感が上がって」

「フィット感!」


 フトシの手を引いてベットから降ろすとヒトミはフトシに抱き着いたまま離れない。


「ちょ!ちょっと!」

「まだ間に合います。フトシ君のおんぶダッシュがあれば」

「ダメ!ダメダメ!」


 私はヒトミに下着をつけてフトシを連れて朝食に向かった。

 後ろから服を着たヒトミがついてくる。


 3人、無言で食事を摂った。

 フトシを挟んでヒトミを見た。


「あらあら、今日は静かね」


 フトシの母さんがにこにこして言った。

 ヒトミが隣で寝ていても気にせず放置するだろう。


「ヒトミ、フトシのベッドで寝るの禁止ね」

「羨ましいならユイもやればいいじゃないですか」


「ダメダメ!」

「ユイとフトシ君は一緒にハザマに行っています。私はその後にフトシ君と一緒にいます。フィフティーフィフティーです」

「フィフティーフィフティーって何?全然フィフティーフィフティーじゃないよね?」


「私はユイも一緒に寝ていいって言ってます。1000歩以上譲ってのフィフティーフィフティーです……仕方ありませんね」


 ヒトミが立ち上がって部屋に戻り、武器を持って来た。


「フトシ君に頼まれていたロングナイフ2本です。太ももに取り付けるホルダーも付いています」

「ありがとう。でも一緒に寝るのはダメ」


「あ、フトシ君、レン君の武器もありますよ。取ってきます」

「う、うん、サンキュー」


 ヒトミはまた部屋に戻っていった。


「すぐに歯みがきをして学校に行こう。遅れるとヒトミがおんぶでサボるから」


 私はフトシの手を引いて歩いていた。


 私から手を引いて歩いている自分の事に違和感を覚えた。


『ユイ、次はあっちな』


 小さいころ、フトシに手を引かれてついて行った記憶を思い出す。

 でも、私が手を引く事は、あまりなかったように思う。

 いつも受け身だった。


 私の何かが変わろうとしている?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る