第77話

「ツムギ、気持ちは分かる。私も魔石は貰えない。貰ってしまったら寄生のようになってしまうからな」

「私も、同じ気持ちかな」


 なん、だって!

 俺はユイにもアマミヤ先生にも助けてもらった。

 今日は2人を助けられると思った。

 魔石を渡そうとすると受け取って貰えない。

 3人でパーティーを組んで戦っても受け取って貰えない。


 なら、次は。


「提案があるんだけど、ハザマの可能性を試したい。矢の道にガーゴイルをおびき寄せて、そこでユイにはガーゴイルを狩ってみて欲しい。でも、ドロップしたらユイとアマミヤ先生で交互に貰って欲しい」

「何を試すの?」


「将来、一緒に戦う時にどんな感じになるかイメージしたい」

「将来、一緒に……」

「私はきゅうでユイの治癒力を高めつつ、ユイにガーゴイルが迫ったら注意を引き付ける、でいいか?」

「はい、それでお願いします」


 ハザマを出て、次はガーゴイルが50体以上いるハザマに入った。


「魔法弓!」


 ユイがガーゴイルを倒していく。


 矢の道は一直線だ。

 包囲されにくい。

 更にユイはガーゴイルの魔法より射程が長い魔法弓を使える為、ガーゴイルと相性がいい。

 後ろに下がりながら弓を放てば一方的に攻撃出来て、それでも危なくなればアマミヤ先生が注意を引き付ける。


 更にアマミヤ先生は弱いと言われる召喚系スキルだ。

 ユイが気を使わなくて済む。

 アマミヤ先生は本当は弱いわけではないのもいい。


 ユイとアマミヤ先生は相性がいい気がする。


「これは、私の出番はあまりなさそうだ!きゅう!」

「きゅう!」


 きゅうがユイの背中に乗って治癒力を高めていく。

 魔力も少しずつ回復していくのだ。

 ドロップ率は低いがこれなら安全に戦える。

  

 俺は後ろから2人を見守った。

 そして5回ガーゴイルのハザマに入り、魔石が4個ドロップした。



「はあ、はあ、フトシ、ありがとう。私を助けてくれて」

「きゅうの力をこんなに使えて、気分がいい。オオタ、ありがとう」

「いえいえ、ユイとアマミヤ先生がいなければここに来れないので、次は俺が倒したいので、交代で良いので一緒にハザマに入って欲しいです」


「うん、いこう」

「私も付き合おう」


 俺は入れるハザマにすべて入ってモンスターを狩った。



 ◇



 100のハザマを回った。


「もう100回転やっておこう」

「もう充分だよ!これ以上倒しちゃったらみんなの迷惑になるから!」

「そっか……そろそろやめておこう」


「あ~あ、帰って寝て起きたら学校か」

「大丈夫、もうすぐ夏休みだよ」

「ユイとアマミヤ先生は強化合宿で、俺とヒトミはお留守番か。夏休みの内にスキルのチェックをしておこう」


 レッドオーラのチェックがまだだった。

 いや、あえてチェックしていないのだ。

 グレートオーガとの戦いが終わり、俺は虚しさを感じていた。

 気分を上げる為、夏休みはちょっとずつスキルを試してテンションを維持する。

 毎日1枚だけくじを引く感じでやる気を上げる計画だ。


「……強化合宿だが……いや、まだ決まっていない事だ」

「なんですか?」

「いや、決まったら話そう。まだはっきり決まっていないからな」


「まだたっぷり時間はありますからね。だってもうすぐ夏休みです」

「……そうだな」


 アマミヤ先生がすっと目を逸らした。

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