第137話
「奇遇だね」
「皆と遊びに来たんです。いやあ、家に来るマスコミに馴れなくて、逃げて来たのもあるんですけどね」
「そうか、ここはリゾート施設で人が来るけど、隣にあるハザマ施設の冒険者専用ホテルならマスコミは入ってこない、そこに住めば落ち着くと思う、でも高校生は学校があるからここに住むのは難しいか」
「あーいいですよ、そんなに真剣に考えなくても」
「暗い話をしてしまった。こういう時は楽しい事を考えよう。僕の夢は特級冒険者全員に握手と写真撮影をお願いする事だ。フトシ君の夢はあるかな?」
「その時によって夢というか目標はその時によって変わりますね。特級冒険者……チュンチュンジャンプならタイミングが合えば来てくれるかもしれません」
「本当か!」
シンさんは俺の背中を掴んで揺さぶった。
「ちょ! ちょ! ちょ! 待ってください! 呼べるかどうか分かりません。今で良ければスマホで連絡してみますけど、ロッカーに行ってきますね」
「よろしくお願いします!」
シンさんはロッカーまで付いてきてハンマさんにメッセージを送ると電話がかかって来た。
「もしもし、スズメさん? ハンマさんじゃなくて?」
『うん、どうしたの?』
「実は……」
事情を説明した。
『1日、私と一緒にハザマに潜るなら、行ってあげてもいい』
「それくらいなら、行けます」
『サードプレイスで、1日一緒にハザマに潜る、OK?』
「わ、分かりました。1日って、12時間くらいですかね?」
『それでいい、3時間以内に着く』
「え? 今日! もう外は暗いですけど。あ、切れた」
「フトシ君、聞いていたよ! ありがとう! 何でも言って欲しい!」
「いや、多分ですけど、シンさんがお願いすれば普通にみんな握手してくれますし、写真も撮らせてくれますよ」
「いや、それは、特級冒険者の方に、し、失礼があってはいけない。僕はすぐに体を清めてこなければ!」
シンさんが乙女のような顔をした。
シンさんは冒険者用の宿泊施設の方に帰って行った。
サードプレイスのハザマ施設。
その上に冒険者と錬金術師専用の宿泊施設がありそこの快適性は有名だ。
ハザマ施設でドロップ品やアイテムなどを納品すればするほど割引きや無料のサービスが増えていく。
飲食店は品数が少し控えめだがバイキング方式で味も接客もいい。
売店には武器や防具、アイテムの販売だけでなく日用品まで揃っている。
部屋は1人部屋で定期的に掃除が入る。
ハザマ施設を出ると武器防具のクリーニングサービスと入浴施設への導線が近い。
ここに住む冒険者は多い。
サードプレイス最大の売りは冒険者の快適性を追求した居住空間にある。
入浴を済ませ、皆で食事を摂り終るとチュンチュンジャンプが来た。
「お待たせ」
「はあ、俺は明日にするって言ったんだがねえ」
「今すぐ、握手と写真撮影」
「今連絡しますね。もしもし、シンさん、来ましたよ」
『ま、待ってくれ、もう一回手を洗ってから行く』
「分かりました」
電話を切った後もシンさんがなかなか来ない。
シンさんが来たがそわそわしだした。
「すまないが手汗が出てしまって、ま、また手を洗って来る」
「いいっていいって、ほい、握手」
「私も、握手」
ハンマさんとスズメさんがシンさんの手を取った。
「きょ、恐縮です! ありがとうございます!」
「シンさん、恐縮ですって……」
「今日はありがとうございました!」
「シンさん! 写真写真!」
「そうだった。あの、申し訳ありません。よろしければ写真を撮らせてもらっていいでしょうか」
「私から!」
「よ、よろしくお願いします!」
カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!カシャ!
「シンさん、武器を構えた状態じゃなくていいんですか?」
「ああ、ぽ、ポーズをお願いします」
こうしてシンさんが緊張したまま写真撮影が終わった。
「ありがとうございました!」
「どういたしまして」
「シン、あんまり緊張しなくていい、俺達は同じ人間なんだ」
「いえ、特級の方々は僕とは違う人間です! フトシ君、ありがとう、君は僕の恩人だ。何かあれば協力するから何でも、いつでも言って欲しい」
「多分シンさんが声をかければ握手と写真撮影位ならやってくれると思いますよ。シンさんは信頼度が高いですし」
「い、いや、と、特級の方に、失礼があってはいけない、きょ、今日は写真を厳選してSNSにアップします。お疲れさまでした!」
シンさんが去って行った。
じーーー!
スズメさんの視線を感じる。
「何ですか?」
「12時間」
「え?」
「12時間、一緒にハザマに行く」
「それなんですけど、俺今砦のスキルが使えなくて、魔石集めは大して役に立たないと思います。進化を待った方が良くないですか?」
「いい、今から向かう」
「頑張れよ。色んな意味でな」
ハンマさんが手を振った。
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