第21話

 朝早く起きて早めの食事を済ませるとハザマ施設に向かった。

 そして偽クイーンのハザマに入った。


 マイルームを発動させるといつものようにアローでゴブリンを倒す。

 その間に金棒で素振りをした。

 金棒がブオンと音を鳴らし、金棒が軽く感じる。


 これなら昨日よりも楽に戦えるだろう。

 だが、ゴブリンの動きに変化があった。

 マイルームに繋がる魔法陣をゴブリンが囲んだ。

 更に、マイルームに侵入してくるゴブリンすべてに1本角が生えている!

 数は50体ほどと少ないが全部ボスか!


 俺が逃げられないようにした上で確実に殺しに来た!?


 ボスの動きが速い!

 それにアロー1発で倒せない!

 ボスの強さは雑魚の3倍と言われている。

 能力値は3倍も無いようだが、1体だけでゴブリン3体分と同時に闘うのと同じ程度の強さがあるらしい。


 だが、その分ボスはドロップ率が良い。


 アローで倒したボスが魔石を落とした。


 あの魔石を食べたいな。

 そう思った瞬間にアイテムボックスがマイルーム内で発動して魔石を回収した。


「え!」


 俺はアイテムボックスで魔石を取り出して飲み込んだ。


「おおおお!」


 戦いながら強くなれる!

 だが、問題は最後の部屋に来たボスだ。

 囲まれて、俺は耐えられるのか?

 ……シャドーランサーを前に出す。

 更に門を閉じて時間を稼ごう。


 ボスゴブリンがシャドーランサーに迫ってくる。

 その瞬間に俺は覚えたてのスキルを使った。


「ダブル!」


 シャドーランサーが2体に増えて、通路に並びながらボスゴブリンを攻撃する。

 更にアローの魔法陣が2つに増えた。


 アロー2つとシャドーランサー2体で前にいるボスゴブリンを集中攻撃した。


 ダブルは、1分間アローとシャドーランサーを2つに増やすスキルだ。

 その分魔力を消費するデメリットがある。


「この感じだと、ダブルは数回しか使えないか」


 だが、ボスゴブリンは順調に倒している。




 俺は4回ダブルを使ってボスゴブリンを一気に殲滅させた。

 ダブルの使用は4回が限界か。


 後ろから更にボスゴブリンマイルームに侵入して迫って来るが門にたどり着く前に倒す事が出来た。


 隙を見て魔石を回収し飲み込んだ。

 能力値は上がった、でもダブルの効果が切れて一気に押され始めた。


「く、門開け!シャドーランサー後ろに下がれ!」


 最後の部屋で迎え撃つ!


 部屋にボスゴブリンが侵入した瞬間に俺とシャドーランサーで攻撃し、更にアローで攻撃するとあっけなく倒れた。

 行ける!

 倒せる!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 ボスゴブリンが雑魚のようにまとまって攻めてくる。

 俺は何度も金棒を振り回して倒した。


 途中で変化に気づいた。

 ボスが攻めてこなくなったのだ。

 モンスターが1体も入ってこない?


 マイルームの魔石を飲み込み外の様子を映し出す。

 偽クイーンが豪華な椅子に座っている。

 遠くから高みの見物か!


 俺のマイルーム魔法陣を囲むようにボスゴブリンが囲む。


「……包囲して俺が出てきた瞬間に殺す気か」


 どうする?

 どうする!?

 マイルーム内じゃないとシャドーランサーもアローも使えない。

 偽クイーンはゴブリンの数が100より少なくなるとすぐに新しいゴブリンを増やしてくる。

 ハザマのモンスターの上限数は101体と決まっているのだ。


 消耗戦では勝てない。

 偽クイーンは何度も何度もゴブリンを出し続けるだろう。

 逃げてまた再戦しても偽クイーンは奇策を使って来る。


 逃げて大人に任せれば、いや、俺は全然追い詰められていない。

 金棒を振っただけでゴブリンを倒せる。

 マイルームのスキルが無くても戦える。

 俺はマイルームを解除してハザマに出た。


「おりゃあああ!」


 即金棒を振り回し周りにいたボスゴブリンを吹き飛ばした。

 金棒をふりながら偽クイーンに迫った。


「うああああああ!死ねええええええええええええええええ!偽クイーン!!」


 護衛のボスゴブリンを金棒で瞬殺し、椅子から立ち上がり逃げるクイーンを追って金棒を頭に叩きつけた。


 更に横に金棒を振って他のゴブリン事なぎ倒すように攻撃を続けると偽クイーンが魔石に変わった。

 俺は急いで偽クイーンの魔石を拾って飲み込むとその瞬間に俺の力が大きく増したのを感じた。


 周りの景色が虚ろになっていく。

 ハザマが消えるように薄くなり、気づくと元の世界に戻っていた。


「勝った。勝てた!おっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 冒険者とゴウタさんが驚いたように俺を見た。

 ボスを倒すとハザマが消える、罰金だな。


「フトシ?血だらけじゃないか!?」

「え?あ、つい拠点のボスを倒してしまいました。罰金でしたよね?」


「それより大丈夫か!?今日は休め!家まで送る!?」

「大丈夫です。罰金を」

「いいから休め!?」


 俺の体を見ると、制服がボロボロになり、血が付いていた。

 マイルームの外に出た時に攻撃を受けたか。


 2着目の制服も駄目にしてしまった。

 丁度いい、また痩せたんだ。

 新しい制服を貰いに行こう。


 罰金が発生しても、


 疲れても、


 血が出ても、


 服がボロボロになっても、


 それでも心地いい。


 やり切った感覚で満たされていた。

 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る