第4話
ゴブリンが4体迫ると俺はすぐにスキルを発動させた。
「マイルーム!」
味方全員がマイルームに転移した。
部屋は2部屋に分かれている。
俺達がいるのが快適空間で、残りの半分がモンスター迎撃用の部屋にしてある。
部屋を挟むように壁と門が1つ設置されている。
門を突破されればモンスターがここになだれ込んでくるのだ。
画面に外の様子を映し出した。
監視カメラ機能もある。
「俺のマイルームスキルは10×10メートルの異空間を作り出すのと、キッチン・バス・トイレ・ベッド付きの快適空間を」
「待て待て!ゴブリンが外の魔法陣からマイルームに入って来た!」
「あー、侵入してきましたね。計画通りです」
「マイルームには防衛能力があるんだろ?」
「あります!シャドーランサー!」
2つあるマイルームの別部屋に俺と同じ形をした黒い影が槍を持って現れた。
シャドーランサーが4体のゴブリンと戦う。
「行け!シャドーランサー!頑張ってゴブリンを倒すんだ!」
俺は別室から全力で応援した。
シャドーランサーがゴブリン1体を倒すがゴブリンに包囲された。
「あああ!包囲されたか!く!頑張れ!シャドーランサー!」
俺は声を張り上げて全力で応援した。
シャドーランサーは更に1体を倒すが、残ったゴブリンに連続攻撃を受けて消えた。
「ああああ!シャドーランサーああああああああああああああ!」
残った2体のゴブリンがこの部屋に繋がる門を攻撃する。
「まずい!ここに来る!マイルームを解除して逃げます!」
「「えええええええええええええ!!!」」
俺はマイルームを解除して全力でハザマの魔法陣まで走った。
そして転移して無事逃げ切った。
遅れて来たみんなが俺を見る。
「よし、逃げ切った。逃げられる!」
キリっと決め顔をした。
そう、俺はただのデブではない。
歌って踊れる!そして走れるデブなのだ!
「フトシは戦わないの!?」
「シャドーランサーとフトシで戦えば勝てたと思うんだ」
「フトシ、言いたいことが2つある。まず、無理せず逃げるのは有りだ。ハザマに入り始めた冒険者見習いは死亡率が高い。最初はそれでいい。ゴブリンに囲まれれば死ぬ可能性はあるからな」
「うんうん、俺もそう思います。ゴブリンはすばしっこいので囲まれたら危ないですよね」
「でだ、その上でシャドーランサーをおとりにしてフトシも戦えばさっきは楽に勝てた」
「う~ん、ユイやレンと違って戦闘訓練がまだだから、戦闘には不安がありますね」
「なるほど、そうか、武器を選んで戦闘訓練をやれば戦えるわけだな」
「まあ、検討します」
「高校入学一カ月で基本的な戦闘訓練をするだろ?そこで自分に合った武器を選べ」
「前向きに善処します」
「シャドーランサーと門は復活するよな?」
「シャドーランサーと門は、俺の魔力を吸って明日の今くらいには直っていると思います」
「1日かかるか……」
「マイルームの部屋は色々配置とかを変えられるの?」
「変えられるし快適設備を撤去できるけどキッチン・バス・トイレ・ベッドを無くしたらマイルームの快適性能は失われるからな」
「キッチンとかは撤去できるんだね。最初は快適空間を無くしてその分ダンジョンみたいな迷路にすればいいと思うよ」
「う~ん、今を大切に生きていきたいからなあ。快適空間を消すのはちょっとなあ」
「……そ、そっか、壁は自由に配置できるの?」
「ある程度自由にできるけど、通路を行き止まりにしてモンスターがここに来れないようにするずるいことは出来ない」
「マイルームを出来るだけ迷路構造にすれば楽になりそうだね」
「半分は快適空間で半分は迷路にしてみよう」
「毎日ここに通えばダイエットになるよ?一緒にパーティーを組もうよ」
「レンとユイは強いからなあ。足手まといになりそうで嫌だな」
「足手まといにはならないよ。一緒にパーティーを組もう」
「レンは早く強くなりたいんだろ?俺がいない方がいいと思う」
「そんな事はないよ」
レンは気を使っている。
ユイもそれは同じだ。
今日分かった。
俺は2人ほど強くない。
俺だけが戦闘訓練を受けていなかった。
俺も中学の頃に戦闘訓練を受けていれば戦えたかもしれない。
レンの家は貧乏で、早く強くなってお母さんを助けたいと思っている。
でもレンはそれでも俺とパーティーを組んでくれるだろう。
だからこそダイエット目的の俺が2人とパーティーを組むわけにはいかない。
ガチ勢に俺が入るのは良くない。
足手まといにはならない!
「俺、毎日一人でここに通おうと思うんだ」
「オオタ、それは駄目だ。先生が毎日付き添う。皆も同じだ。高校入学から一カ月までは引率無しでここに来るのは禁止だ」
高校入学後一カ月は基礎となる戦闘訓練を行う。
基礎訓練が終わるまでに無断でハザマに入れば先生から呼び出しを受けるだろう。
上を見るとたくさんの監視カメラが際立って見えた。
15歳以上でスキルを持っていればハザマに入っていい事になっている。
でも、高校では暗黙のルールで基礎訓練が終わるまで基本ハザマには入らない。
法律ではハザマに入っていいが、今入ると呼び出しを受ける。
今は微妙な状態なのだ。
「分かりました。でも、レンやユイとパーティーは組めませんよ」
「言っている事は分かるぞ」
「フトシ……」
「気にし過ぎだよ」
「いや、ダメだ。レンのお母さんが楽になるまでは駄目だ」
ここまで言わないと駄目だ。
パーティーは組めない。
2人は悲しそうな顔で俺を見た。
「フトシのスキルは悪くない。その気になれば十分戦えるぜ」
「……」
「ユイ、どうした?」
「なんか、ゴキブ〇〇イホイみたい」
マイルームのスキルがゴキブ〇〇イホイか。
確かに似ているけれども、それは言っちゃ駄目だろ?
ユイの事だから気が抜けて思ったことをそのまま言ってしまったんだろう。
「……ゴキブ〇〇イホイ」
「ああああ!ごめんごめん!ごめんってば!悪口じゃないから!」
ユイが焦ったように両手で俺の体を掴む。
「ぷくくく、ユイ、それは駄目だろ。ゴキブ〇〇イホイとか、くくくく、言って良い事と悪い事が、くくくくく」
「あああああ!笑った!ゴウタさんの笑いの方が一番頭にくる!」
「悪い悪い!悪かった悪かったよ!フトシ、怒るな。ぷくくく」
ゴウタさんが俺の背中をポンポンと叩く。
「ごめんごめん!つい言っちゃったの!」
ユイが俺と握手をするようにして謝る。
「それが一番駄目だろ。くくく」
「……俺はゴウタさんの笑い方が一番頭にくる」
「バカにする気はないんだ。ただフトシとユイを見てるとつい笑っちまった。悪かった。アイスでも食うか?お詫びに奢るぞ」
「……食べます」
全員が俺を見て笑った。
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