第182話

 俺は心のダイエットをする事にした。

 心は簡単には変えられない。


 まずは行動を変えよう。

 行動の変化が間接的に心を変えて行くはずだ。


【朝6時】


 朝起きると水を飲み、食事を食べる。

 ドームを映しながらシャドーの動きをチェックしつつオートで回収したレギオンの魔石を食べた。

 最近レギオンが群れでハザマに入って来るようになった。

 イナゴの第二形態が多くなって来た。


 魔石を食べ終わるとドームに入ってシャドーとバトンタッチした。

 迫って来るモンスターをコマのようにくるくると回りながら金棒で倒していく。


『扇風機か!』

『レギオンが死ぬために突撃してくるぞ』

『なお壁に逃げても殺される件』

『完全にハメ技過ぎる! 良いぞ、もっとやれ!』


【12時】


 お腹がすくとシャドーとチェンジしてプライベートルームに戻る。

 シャドーの戦いを見ながら食事を食べる。

 母さんの作ってくれたご飯が美味しい。

 食べ物は10年分ある、まだまだ戦える。

 母さんとみんながたくさん作ってくれたんだ。


 シャドーの経験が俺に流れ込んでくる、更に客観的にシャドーの動きを見る事で俺の動きは良くなっていく。


【13時】


 プライベートルームに入ってシャドーと変わりモンスターを倒す。


【20時】


 シャドーと変わり、ゆっくりお風呂に入り食事を摂って22時に眠る。


 同じルーティンを続けた。

 


 神殿ハザマに入って半年が経った。

 モンスターが増え、イナゴの第三形態(人型)が出てくるようになった。

 気づけば寝る時間が夜の3時になっていた。


 3時間寝れば体力が回復する。

 没頭して金棒を振り、シャドーの動きを見て動きを修正する。

 それだけで時間が過ぎていった。



【ユイ視点】


 私・いのり・ヒトミ・ユズキ・レイカは神殿のそばですごした。

 スズメさんは特級冒険者の為、レギオン狩りに連れていかれる。

 冬になり、山には雪が積もった。


 フトシが帰ってきても大したことは出来ない、でも、抱きしめる事は出来る。

 今日も配信を見ながら外でフトシを待つ。


「ユイ、風邪を引くわよ」


 いのりがココアを持って来た。


「ありがとう」


 私はその場を動かず、ココアを飲んだ。


「ユイちゃん、覚えてる? フトシ君がゴブリン狩りに没頭して、体力テストの時にズボンを押さえながら走っていたわね」

「うん、覚えてる。いのりはその時に、効率が悪いと言われる行動も案外バカに出来ないって、言ってたよね?」


「そうね、フトシ君は、今もゴブリン狩りをしている時と同じに見えるわ。フトシ君は評価されてはいるけど、多くの人が後になってからフトシ君の事を更に高く再評価すると思うの」


 フトシは評価されている。

 でも中には『全部のレギオンを食い止められていない』『たった3割止めただけでどうなるんだ?』『意味が無い』と色んな発言があった。


「フトシが帰ってくれば、フトシの恩恵が分かるのに」

「私もそう思うわ。レイカとも話をしたの。フトシ君を一旦ここに呼び戻せないかって」

「でも、それをすれば人が、多く死ぬかも」


「そうかもしれないわね。でも、フトシ君だけに全部を押し付けすぎるのが嫌なの」

「私も、嫌」


 私も同じ気持ちだった。

 フトシに全部を押し付けているのに、色々言って来る人が嫌だった。

 応援してくれる人もいる。

 でも、そうじゃない人が嫌だ。


 フトシが戻ってくれば、レギオン出現の差が分かって、フトシの功績がはっきりする。


 批判をする人の多くが、何もしない人だ。

 レギオンと戦ったことがあるなら簡単に人を批判できない。

 戦った事が無いから見当違いな事が言える。


「皆で、話をしましょう。フトシ君に会いたいわ」


「うん、そうしよう」


 私は皆を呼んだ。



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