赤と青の閃光編
第145話
ダラダラと汗が流れる。
そうだ、超大型ハザマ施設、ドリーム1に行こう。
「きょ、今日は新しい施設に泊まって来る」
外に出ようとするとがしっと体を掴まれた。
「フトシ君、私も行きます」
「私も」
「私も行くわ」
「い、いや、み、みんな今日は疲れただろ?俺が部屋を開けるから大丈夫だ。皆はゆっくり休んでくれ」
3人がにっこりと笑った。
◇
皆ついて来た。
「きれいな施設ですね、楽しみです」
「は、ははははは」
俺は作り笑いをした。
「トイレに、うわ!めっちゃ混んでる!」
「今冒険者を呼び込むキャンペーン中よ」
「仕方がない、ハザマに入ってみよう」
「受付も並んでいるわね」
「マジかよ」
俺はトイレに並び、受付に並んだ。
「お待たせしました。アプリのダウンロードはお済ですか?」
「……え?」
「まだのようでしたら10番にお並びください」
「あ、はい」
また並び直しか?
トイレで並んで、受付で並んで専用アプリのダウンロードが必要?
10番に並ぶと面倒な個人情報の入力とアプリのダウンロードを行って、アプリを画面にかざす事でやっとハザマに入る事が出来た。
上級のハザマは予約待ちになっており、中級のハザマを狩って出てくると受付のお姉さんが声をかけて来た。
「ドロップ品がありましたら是非とも納品をお願いします」
「わ、かりました」
納品の催促まであるのか。
受付のテーブルはまだ空いている。
受付より納品催促の人員を優先している。
利益が無いと駄目なのは分かるが、今は混みあっている。
今くらいは受付に人を回しても良かったと思うんだけど、何かがしっくりこない。
融通が利かない感じがした。
冒険者専用のホテルに宿泊する。
施設はきれいだけど、なぜか居心地が悪い。
ベッドに横になるとゴウタさんのハザマを閉める為にハザマを消滅させるあの気持ちを思い出した。
ハザマ施設の合理化は必要だ。
でも、ゴウタさんのハザマは居心地が良かった。
施設が古くても皆が気を使ってくれた。
ゼンさんの施設も良かったし、サードプレイスも良かった。
「俺は、何のためにゴウタさんとゼンさんのハザマを消したんだ?」
だから、きれいな施設でも、居心地が悪いのか。
次の日、みんなでドリーム1を出た。
「なんか、しっくりこない」
「まだ、働く人が慣れてないのかも」
「3か月くらいすれば良くなるかもしれないわ」
「……そうだな、しばらく来なくていいか」
ドリーム1からスタッフが走って来た。
「オオタフトシさん! 待ってください! お話を聞かせてください!」
「はい? なんでしょう?」
「よろしければドリーム1の感想をお聞かせください」
「きれいな施設でしたがスタッフさんがまだ慣れていない感じでしたね。じゃ、学校があるので」
「ま、待ってください! 是非お話をお聞かせください。中でお話を聞かせてください」
この必死さは何なんだ?
まるで、命令でも受けているようだ。
俺はドリーム1の中に入った。
【ドリーム1・????視点】
たくさんの、ハザマが見える。
結界を抜けられない。
結界を抜けさえすれば、
ハザマに出さえすれば、
すぐにあっちの世界に出られるのに。
物質界の力が欲しい。
でも、この感じだと、もうすぐだ。
楽しみだ、1万年ぶりに、人間を殺せる。
黒い影がハザマへの侵入を今か今かと待っていた。
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