第100話

 部屋で眠り、目が覚める。

 朝6時か、よく寝た。


 コンコン!


「入って大丈夫ですよ」


 ガチャ!


「スズメさん?」

「来た」

「えっと?」

「明日になったから」

「あ、明日にしましょうって言いましたよね」

「そう」


「……」

「……」


 なんだ?

 この独特の間がよく分からない。

 耐えられなくなって聞いてしまう。


「何かありました?」

「フトシは付き合ってる人、いる?」

「いませんよ」


 スズメさんが裾を両手でつまんでゆっくりと持ち上げた。

 目が行ってしまう。


「し、知ってますよ。下着の代わりに水着着用なんですよね?」

「うん、モンスターと戦う時はそう、でも今は……」

「水着ですよね?」

「……」


 ゆっくりとスカートの裾が上がっていく。

 水着だよな?

 いや、でも、水着じゃなかったら?

 黒い布が見えた。

 分からない、どっちだ?

 でも、堂々と見せてくるし、水着だろう。

 でも、下着に見える。


 スズメさんがパンツを見せるとスカートのすそを離した。

 次はゆっくりとパンツを脱いでいく。

 でもスカートでガードされている。

 パンツを脱ぐと、ゆっくりと地面に置いた。

 そ、そうか!これはマジック、パンツを2枚履くトリックだ。


「パンツを2枚履いてますね?」

「今は履いてない」

「……嘘だろ」


 次は白いYシャツのボタンを外した。

 そしてブラジャーか水着か分からないが、外した!

 でもYシャツで胸は見えない。

 次はパンツとブラをつけてそれ以外を全部脱いだ。


「水着?」

「に、見えるの? これが?」

「……」

「……」


 スズメさんは服を着て「また今度」と言って出て行った。


「何、だったんだ?」


 その日俺は留守番係でロビーにゆったりと座る。

 皆1人だけでどんどんハザマを消滅させていった。

 ハザマ程度ならパーティーを組むより分散した方が効率が良いのだろう。

 それぞれが自分のペースでモンスターを狩るが、皆ハザマを消すのが早い。


 スズメさんは配信をしながらハザマを消していく。

 蹴りでスケルトンを砕き、スカートがめくれる。

 朝と同じYシャツとスカート。

 ずっと眺めてしまいそうになるが、ダメだ。


 俺は動画をチェックする。


「え?」


 何故か動画のサムネに俺の姿が映っている。

 思わずクリックしてしまう。

 1つ見ると次、次と止まらない。



 ◇



 みんなが俺を天才と言う理由も、話の違和感も分かった。

 みんなは俺を勘違いしている。

 でも、また違う動画を見つけるとまたクリックしてしまう。


 俺は夜になるまで動画を見てしまった。




「話が、おかしくなってる」


 ロビーにいたスズメが話しかけて来た。


「大丈夫?」

「大丈夫です」

「ご飯は食べた?」

「いえ、今から食べます」


 俺はアイテムボックスからサンドイッチを取り出して食べる。


「おいしそう」

「食べますか?」


 そう言って新しいサンドイッチを右手で差し出すと、俺の左手にある食べかけのサンドイッチを食べた。


「うん、おいしい」

「……良かったです」


 俺は右手のサンドイッチを食べるとその食べかけをスズメさんが食べた。


「ええ……」

「おいしい」

「そ、そろそろ部屋に戻りますね」

「うん」


 部屋に戻るとスズメさんが付いてきた。

 そして俺の部屋に入って来る。

 スズメさんはベッドでくつろぐ。


 スルーしよう。

 俺は部屋の風呂に入った。

 まさか、入ってこないよな?


 

 無事風呂から上がると、今度はスズメさんが風呂に入った。

 あれ?帰って来た時にすぐ風呂に入ったよな?

 2回入るのか?

 シャワーの音が聞こえる。



 スズメさんが出てくると、俺と目が合った。

 そして近づいてくる。

 スズメさんは何も言わずに俺とキスをした。


「んんんん!ちょ、うん!」

「くちゅ!ちゅばあうん!」




「はあ、はあ、どういう事?」

「フトシを、誘惑してる」


 そう言って部屋から出て行った。

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