第25話

【ツムギユイ視点】


 今日は1年生の身体測定と体力テストだ。

 身体測定を終えたフトシが落ち込んでいる。


「フトシ、どうしたの?」


 レンが代わりに答えた。


「65キロを目指していて、67キロまでしかダイエット出来なかったみたいだよ」

「えええ!もう充分痩せたよね?ダイエットはもういいよ!」

「ユイ、ありがとう。でも俺、まだまだだから」


「身長が伸びたから、体重の目標も変わるよ。ダイエットは終わりでいいと何度も言ったよ。でも何を言っても聞かないんだ」

「俺、まだまだだから」

「何度言ってもこうなんだ」


「男子は1500メートルのタイムを測定する!すぐに集まれ!」


 レンとフトシが先生の所に集まっていくと女子が集まって来た。


「ねえねえ、最近フトシ君がカッコよくなったよね?」

「レン君とフトシ君が一緒にいるよ」

「私、フトシ君に告白しようかな?」


「え?」


 心がざわざわした。

 レンとフトシが一緒に走り出すとフトシはズボンを押さえながら走っていた。

 体操服のサイズがまた合わなくなったようだ。


 レンが先頭を走り、次にフトシが走る。


 アマミヤ先生が話しかけてきた。


「最近キイロだけじゃなく、オオタも人気だな」

「そう、ですね」

「オオタは背が伸びて痩せた、少し痩せすぎだがな。それに、体力測定は1年男子の中でキイロとオオタが二強だ」


 フトシは痩せすぎている、でも、減量中のボクサーのようでも、顔立ちが整っている。


「オオタは今でもゴブリンを倒しているようだ。他の生徒は料金を払い、違うモンスターと闘っている」

「そうみたいですね」


「所でこんな仮説がある。魔石を食べた時の成長率は魔石の大きさに対して一定であると、だがその仮説には矛盾が出てくる。ゴブリンの魔石はその大きさに対して能力値の伸びが低い割にスキルも覚えられない。となれば仮説は間違いである事になる」


 先生はフトシが頑張っているのを見ながら嬉しそうに話を続けた。


「リトルスケルトンの魔石は攻撃力アップのスキルを覚え、ベビーガーゴイルの魔石は攻撃魔法を覚える。そしてリトルゴーレムは防御力アップスキルだ。だがゴブリンだけは何もスキルを覚えられない。ゴブリンだけが魔石の大きさに対して成長率が低すぎる」


 戦士タイプは攻撃力アップと防御力アップのスキルを覚えやすく、魔法タイプは攻撃魔法を覚えやすい。

 リトルスケルトンの魔石とリトルゴーレムの魔石は戦士タイプに人気でベビーガーゴイルの魔石は魔法タイプに人気なのだ。


「仮説が間違っているんですか?」


「いや、私はそうは思わない。ゴブリンの魔石は能力値の伸びがあまりにも小さい。魔石の大きさに対して効果が小さい。その差は、自覚できないスキルに使われていると思っている」

「自覚できない、スキル」


「そうだ、それが何かは分からない。だが、その研究がアメリカで行われている。しばらくすれば結果が出るだろう」


「フトシは殆ど、ゴブリンの魔石だけを食べて強くなっています」

「珍しい行動、効率が悪いと言われる行動も案外バカに出来ないのかもしれない。私たち人間は自分で思うほど頭のいい生き物ではないからな」


「フトシは、何かスキルを覚えているかもしれないんですか?」

「ああ、ゴブリン狩りを馬鹿にする人間が、悔しい思いをする、そういう未来もありえなくはない」



 フトシは毎日ゴブリンを狩っている。

 体操着のサイズがどうでもよくなるくらいゴブリン狩りに熱中している。

 小学校の頃、ダンスに熱中している頃のフトシを思い出した。

 ズボンを押さえて走るフトシはゴブリン狩りのどこに熱中しているんだろう?


 放課後になるとクラスメートの女子がフトシに告白しに行った。

 そして教室に戻ってきて振られたと言って落ち込んでいた。


 私は、


 それを見て、


 ほっとしていた。


 窓を見るとフトシは忍者のように3メートルの高さがある学校のフェンスを飛び越えて走って行った。

 フトシは、どこに向かっているんだろう?


 幼馴染なのにフトシが変わってしまうような、不思議な感覚を覚えた。





 あとがき

 お盆より早いですがフライングして連続投稿します!


 作品のフォローや星を頂けますとやる気が上がります。

 どうかお盆中もよろしくお願いします。

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