第24話

 秋になり学校のホームルームが始まると先生が注意喚起の連絡をした。


「最近ゴブリンのハザマに異変が起きている。突如ゴブリンのハザマが世界の至る所で消えている。これが何の予兆なのかはまだ調査段階だ。だが、もし何か異変があればすぐに先生に教えてくれ」


 俺はだらだらと汗が流れた。

 これって原因、俺じゃね?

 いや、待てよ。

 テレビのニュースでやっていた。


『日本に悪影響を及ぼせる政治家は有能なんですよ。その力を悪い事に使っているんです』


 無能はよっぽど運が良くない限り世の中に影響を与えることが出来ない。

 俺如きの動きで世界のバランスを崩す事件を起こせるわけがない、そう、起こせるわけがないんだ!

 世界には数十億の人がいる。

 その中で俺1人が、凡人である俺が何かをやった所で世界は変わらない。


 やった気になるな俺!

 自分を特別視するな!

 うぬぼれるな俺!

 俺はまだまだだ!


 世界を変えられるのは一握りの天才だ。

 俺、天才じゃないし。


「所でオオタ」

「は、はい!」


 俺は名前を呼ばれた瞬間に胸がバクバクと鼓動を早める。

 悪い事は何もないはずだ。


「最近、また痩せたか?」


 俺はほっとした。

 おどけて大きな声で返す。


「はい!痩せました!!」


 笑い声が聞こえる。

 おし!OKOK!

 笑いに変えて乗り切った。


 俺は72キロに痩せた。

 だが、中々体重を落とす事が出来なくなった。

 ネットで何度も調べた。


 最初は楽に痩せる、だが目標に近づくにつれダイエットの難易度が上がっていく。

 つまり最初のダイエットはイージーモードだった。

 甘えている俺でも結果が出たわけだ。


 だが今は難易度が上がった。

 俺は今よりもっと頑張る必要がある。

 ハザマをどんどん消していこう!

 もっと頑張ろう!


「痩せるのは良いが、急激なダイエットは体を壊す。時には休息も必要だ」

「めっちゃ元気っす!体が軽いっす!」

「分かった分かった、だが、無理だけはやめてくれ」

「はい!」


「冬休み前には身体測定と体力テストがある。女子に多いが断食のような無理なダイエットは控えるようにな」


 体力テストか、良い節目になる。

 ダイエットを頑張ろう。

 学校が終わり、放課後になると俺は山まで走った。

 そして周りを確認してゴブリンのハザマを出現させボスを倒してハザマを消した。


「おし!2セット目!」



 ◇



「100セット終了!」


 目標の1日100セットに到達した。

 次は200セット、300セットと目標を引き上げていく!

 身体測定までに60キロの目標までは行かない、でも65キロまではめざそう!

 俺は毎日ハザマを何個消せるかカウントしながらハザマを消した。



 ◇



「おし!300セット終了!」


 これ以上セット数を伸ばすのはきつくなって来た。

 最近おかしい。

 明らかにドロップ率が良くなっている。

 

 ゴブリンの魔石を食べる事でドロップ率が上がるか調べてみたがそんな研究結果は見つからなかった。

 偽クイーンの魔石を食べてから明らかにドロップ率が変わっている。

 雑魚ゴブリンを10体狩れば1つはドロップ品が出る気がする。


 いや、調子に乗るな、俺!

 甘えてはいけない!

 きっと気のせいだ

 こういう考えから甘えが始まる。


 甘えればどうなる?

 もう一度負のループを思い出せ!


 たくさん魔石を手に入れたと調子に乗る→少し休んでもいいか→明日も明後日もダイエットを休もう→ずっと休む→また太るリバウンド


 俺はまだまだ!

 そう、まだまだなのだ!


 もっと、セット数を増やそう!

 もう少しで身体測定だ。


 身体測定は俺の中で節目でもある。

 全力でやり切る!


「まだまだだ!」


 マイルームで雑魚を倒した後走って金棒を振り回して運動する!

 ハザマダイエットはまだまだだ!

 もっと行ける!

 遠くまで行ける!

 まだまだ行ける!

 こうして俺はハザマを消し続けて身体測定と体力テストを迎えた。



 

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