第46話

 放課後になるとヒトミが教室に入って来た。


「フトシ君、今日もボディーガードと家までの移動をお願いします!」


 ヒトミは満面の笑みで言った。

 男子生徒がヒトミに話しかけた。


「ヒトミちゃん、今日は機嫌がいいね」


 ヒトミの笑顔が薄らいだ。


「そうですかね?普通です」

「そ、そうか」


 塩対応すぎるだろ!

 2人は何かあったのか!

 いや、男女の関係を詮索するのは良くない。


「フトシ君、行きましょう!」


 俺は、毎日ヒトミをおんぶして登下校する事になるんだろうな。

 走ってヒトミを家に送った。


「ありがとうございます」


 少し、元気が無いように見えた。


「何かあったか?」

「フトシ君のおかげで錬金術の力は上がっています。でも、素材が無くてアイテムや武器を作れません」


 魔石を使えばアイテムを作れるけど、能力アップの為に全部使ったのか。

 ……ゴブリンのナイフくらいしかないし、これは売っても安い、素材としての価値も高くはないのだ。


「そっか、俺はゴブリンのナイフくらいしか素材は無いから、協力は難しいだろう」


 ヒトミが俺の服を掴んだ。


「錬金術で使わせてください。剣や刀に変えれば価格が上がります」


 俺はアイテムボックスからゴブリンのナイフを100本ほど出した。


「おおおおおおおおおお!」

「こんなので良いならあげるぞ」

「いえ、利益の半分をお返しします。銀行口座に入れておきます、あ、契約書と同じ口座番号でいいですか?」


「それは、助かるけど、一番安い素材だぞ」

「束ねて剣に変えれば価値は上がりますから、やってみたいです」

「そうか。俺は走って来る」


 俺はダッシュで山に向かった。

 オーガのハザマを出して魔石を集めるのだ。


 オーガを倒すと、10個中9個が魔石で、1個がオーガの金棒だ。

 こっちの方が大きいから剣にするには便利だろう。

 でも、初級ランクの俺がオーガを狩っている事がバレると、まずい。

 黙々とオーガの魔石を食べて、金棒は貯めておくか。


 俺はオーガを狩って家に帰るとヒトミが部屋を訪ねて来た。


 

「フトシ君、明日は武器を学校に持って行きたいです」


 魔力切れのせいか疲れた顔をしている。

 俺はベッドに座り、ヒトミを椅子に座らせた。


「うん、アイテムボックスに入れて持って行こう。でも、錬金術を使いすぎて無理し過ぎないようにな」

「大丈夫です!魔石を取り込んでパワーアップしましたから!」


 ヒトミが立ち上がってジャンプする。

 だが、「ああっ」と吐息を漏らして俺に倒れ掛かって来た。

 咄嗟にヒトミを支えるが、俺の両手は偶然にも両胸を鷲掴みにした。


「あ、ごめん」

「……いえ、私が元気アピールをしたばっかりに、立ち眩みがしてしまいました」


 ぷにゅんぷにゅんと手に感覚が伝わって来る。


「早く働いてフトシさんに色々返したいです」


 ヒトミは胸を触られたまま会話を続けた。

 手を放すとヒトミはベッドに横に寝かせるが、俺が離れようとすると手を掴んだ。

 動けない。

 離れる雰囲気ではないのだ。


「飲食店でアルバイトをしても男の人に声をかけられて迷惑をかけて続けられませんでした。私のこの髪と目はギャルのように見えるみたいです。男の人から見て遊んでいそうに見えるみたいですね」


ベッドに横になったまま俺に視線を合わせる。


「錬金のスキルは弱いのでうまくモンスターを倒す事が出来ませんでした。戦闘訓練を受けても、それでもモンスターが怖くて魔石を取り込むことも出来ず錬金術も使えませんでした。私は、能力値が上がって浮かれていたのかもしれません」

「今日はゆっくり休もう」

「一緒に寝ますか?」


「……いや、それは駄目だ」

「2人だけの秘密にすればいいんですよ」

「倒れたばかりだろ」

「私が下で、フトシ君が上なら、いけると思います」


 ヒトミが真っ赤になりながら言った。


「い、いや、今日はヒトミの部屋で眠る」

「お部屋交換ですか?」

「そうだな。今日はこのまま寝てくれ」

「……分かりました」


 俺は部屋を出てヒトミのベッドで眠った。




「うーん、朝か」


 ぷにゅん!


 こ、この感触は!

 隣でヒトミが寝ていた。


「おはようございます」

「な、何でここに!」

「ふふふ、ここは私の部屋ですよ」

「えええ!今日はこのまま寝るって」

「はい、フトシ君の部屋で寝て、早めに起きて部屋に戻りました」


 ぷにゅん!

 

「ふ!……もっと揉みますか?」


 咄嗟に手を放そうとするとヒトミが俺の手を掴んだ。


「フリーおっぱいです」


 フリー、おっぱい!

 なんだその言葉は!

 気になりすぎる。

 念のために後で調べてみよう。


「い、いや、大丈夫だ」


 心の中で俺は叫んだ。

 耐えろ俺!

 アマミヤ先生の信頼を裏切るな!

 うおおおおおおおおおおおおおお!


 俺は柔らかい感触を、引力のように引かれる手を強引にはなし、ベッドから起き上がった。


「元気になったので錬金でまた剣を作れそうです。見てください」


 ヒトミが床に正座した。

 無防備な服装ときれいな正座に目を奪われる。

 ゴブリンの短剣を床に並べて手をかざすと、ヒトミが光を放った。

 下着が透けて見える!

 錬金の様子より無防備な薄い布の奥にある下着に目が行ってしまう。


 気が付くと、ヒトミの手には剣が握られていた。


「出来ました!」

「そ、そうか、成功おめでとう」


 まったく見ていなかった。


「成功しちゃいました」

「うん」


「性交しますか?」

「……んんんんん?」

「性交してみましょう、時間はあります」

「お、俺走って来る」


 俺は全力で金棒を振りオーガを倒した。

 オーガ狩りははかどり、大量の魔石を食べた。

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