第142話
レイカさんと俺はサードプレイスに戻り配信を始めた。
俺はハヤテさんの黒いスーツを着て、レンは白いスーツを着て先頭に座る。
その後ろにはシンさん、レイカさん、ゼンさん、ハヤテさんが座る。
「今回は期待の高校生冒険者、フトシ君とレン君にお話を聞いて行きます」
レイカさんが普通の話から始めて、俺が魔石を渡す流れを作ってくれた。
「レン、魔石を貰って欲しい」
「それは出来ないよ」
「そうか、長い話になるんだけど、俺がレンをどう思っているか聞いて欲しい」
「いいですよ。話してください」
レイカさんが俺に話を続けるように促した。
「俺レンが羨ましかったんだ。何でも出来て、俺は中学の頃、俺が家でゲームをして過ごしていた時も、レンは戦闘訓練を受けてそれが羨ましいのに自分では動かなかった。いや、何でもできるレンに嫉妬する事もあった。ほら、よくいるよな？ 部活には出たくないけど選手になりたい奴、俺はそういう人間だった」
レンは黙って俺の話を聞いた。
「高校1年の時さ、レンの家に遊びに行っただろ？ その時に気づいたんだ。レンは食べ物が無くて剣を買うのも苦労したんだろうなって。でも俺は食べすぎて太ってて、武器は父さんに言うだけで買って貰えた、そうか、俺は本当に何もしてなかったんだなって思ったよ。あ、サイダーをください！」
ヒトミがサイダーを持って来た。
俺はサイダーを飲み干した。
「ふう、そこから俺は、自分なりに頑張ろうと思ったんだ。毎日毎日ただただゴブリンを狩って、頑張ったと思っていた。でもレンは中学の頃から頑張って頑張って、母さんを助けて、パーティーのみんなを助けて、そうやって助け続けてレンの成長を犠牲にしている。パーティーの前衛はレンだけでバランスが悪い。それでもレンは前に出るんだろ？ 自分が危険を冒して前に出るだろ？ パーティーのみんなはその事を気にしている。母さんも苦労を掛けた事を気にしている。レンはその事を気づいているだろ？」
「そうだけど、みんな気にし過ぎだよ」
「レンはさ、きれいすぎるんだ。そのきれいさが皆を苦しめている。もっと俺に頼って欲しい。魔石をくれと言ってくれ！ 俺に魔石をプレゼントさせて欲しい」
『あれ？ 目から液体が、これ何？』
『心にジーンときた』
『頼む、魔石を受け取って食べてくれ、レン！』
『ここはレンが受け取る所だろ』
『フトシの本心をさらけ出したか、かなり正直な気持ちを告白したと思う』
「ごめん、受け取れない、優しすぎるのはフトシだよ。僕は大丈夫なんだ」
「……駄目か」
「受け取れない。魔石はフトシが食べて欲しい」
「ワイングラスを持って来てくれ」
「かしこまりました」
ヒトミがワイングラスを俺に手渡す。
「ぶどうジュースをここに」
「かしこまりました」
『ワインじゃないのかよ！』
『一応高校生だし』
『フトシが偉そうに足を組みだしたぞ！』
俺はぶどうジュースを飲み干した。
ワイングラスを置いて左手を顔に当てた。
「くっくっく、血は満たされた。今から我の時間だ！」
「フトシ？」
「プランBだ！」
俺は椅子から立ち上がった。
そう、やることはいつもと変わらない。
俺の成功パターンだ。
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