第41話
「どうしたんだろ?」
「分かりません」
アマミヤ先生が戻って来ると、パソコンを開いた。
「オオタ、1年の時に測定した1500メートル走の成績は男子1年の中で2位だったな?しかも合わないズボンを手で押さえて走ってそれでも3位以下に大きく差をつけての2位だ」
「フトシ君は凄かったです」
「俺はまだまだなので」
「ふむ、最近武器をグレートオーガの金棒に変えたようだな。他の生徒が振り回そうとしてうまく扱えない中、お前は片手で振り回していた。何か訂正はあるか?」
「フトシ君は力持ちです」
「訂正は無いですが、俺は、まだまだなので」
「登下校、特に下校の際に3メートルのフェンスを軽々と飛び越え、猛スピードで走り去る姿が何度も目撃されている。良い脚力を持っているな。全生徒が出来ないとは言わないが、出来る生徒は少ないだろう。それよりなにより、走り去るスピードは私よりも速いんじゃないか?」
「せ、先生より速いとか、そういう謙遜はいいですよ」
「私は客観的に事実ベースの発言をしている」
「フトシ君、出来ない詐欺はもう無理ですよ」
「ヒトミさん。本当に俺はまだまだなんだ。まだ初級レベル1だ。レンの足元にも及ばない」
「確かにレンは飛びぬけて優秀だ。100%を求めているわけではないし、完全な護衛が不可能な事は分かっている。だが、アオイは何度も大人の男性から声をかけられて困っている。うむ、言い方が悪かった。護衛ではなく男子生徒が隣を歩くだけでいいんだ」
そう言えば、ユイも同じ目にあっていたな。
店に行くときは俺が一緒に行く。
レンはユイを守るように一緒に登下校している。
「一緒に登下校するだけなら……」
「一緒に登下校するだけなら受けてくれるか。まあ、オオタの許可が無くても同棲は決まっているし、一緒に行動してもらう事もご両親は納得している」
じゃあ何で呼ばれたんだ?
「ふふふ、本当のお願いはこれからだ。同棲と一緒の登下校をして貰った上でアオイに魔石を貸して欲しい」
「魔石、ですか?」
「オオタにとって不利な話である事は重々承知だ。だが、錬金術師の競争は厳しい。どうかアオイの為に魔石を貸してやって欲しい。オオタなら魔石集めを効率よく出来るだろう。頼む」
持っている。
偽ゴブリンキングを倒す少し前から魔石を一定割合でストックしている。
「お願いします!貸してください!」
「もちろん利子はつけるし、契約書もある」
「……何個必要ですか?」
「たくさん貸してください!貸せるだけ貸してください!」
「出来るだけ多く貸して欲しい。重ねて言うが錬金術師の競争は厳しい」
先生は彼女を守りたいんだな。
「……ゴブリンの魔石を、100個でどうだろ?」
「「100!!」」
「少なかったですかね?」
「いや、逆だ。ドロップ品がすべて魔石だったとしても、ゴブリン1万体分に相当になる」
「あ、そうか」
ドロップ率は1%だ。
100のドロップ品を手に入れるだけで1万のモンスターを狩る必要がある。
ドロップ率100%じゃないと普通は1%だもんな。
感覚がおかしくなっていた。
「す、すごいです!やっぱりフトシ君は凄い人です!」
多分、俺のドロップ率は100%だ。
でもこれを言うわけにはいかない。
この秘密がバレればそこからハザマを出せることがバレる可能性がある。
高校生でも冒険者は大人とみなされる。
契約は有効だろう。
早く契約して話を終わらせよう。
「はははは、毎日雑魚ばかりを狩っていましたから。さあ、契約を済ませましょう」
俺はゴブリンの魔石を100個出した。
「「おおおおおおおお」」
2人から吐息のような声が漏れる。
色っぽい声にドキッとする。
俺は無言で契約書にサインした。
「丁度100個あるな」
「全部食べます」
「それでいい」
「では、失礼します」
立ち上がろうとすると彼女に服を掴まれた。
ぐ、出来れば話を終わらせて立ち去りたい。
「ありがとうございます」
服を掴んだままお辞儀をする彼女の胸がプルンと揺れた。
俺は無言で礼を返し、部屋を出て扉を閉める。
「ぷはあああああああああああああああああ。緊張したああああ」
教室に戻り、無事授業を終える。
放課後になると彼女が、アオイヒトミが笑顔で教室に入って来た。
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