第48話

 ヒトミは嬉し泣きをしながら魔石を取り込んだ。

 ゴブリンのナイフをたくさん渡すとヒトミは作れるだけ武器を作り、その武器は次の日には完売した。

 売店の収入は俺とヒトミで折半して銀行に振り込まれるようになり通帳の金がどんどん増えていく。

 俺にもメリットがあるのだ。


 みんな前に進んでいる。

 俺も頑張ろう。


 何を頑張る?

 オーガの魔石は力をアップする効果があると言われている。

 たくさん狩って確実に試験に受かる!

 目標はゴブリンのハザマと同じペースでハザマを消す事だ!

 目指せ、一日300ハザマ!

 オーガのハザマに入った。


 マイルームを発動させると、3本角が2体!

 偽キングと偽クイーンか。


 偽クイーンはオーガが倒されるとまたオーガを発生させ続けるだけでマイルームには入ってこない。

 偽キングはオーガを強化しつつマイルームの先頭を走って突撃してくる。

 速攻で俺を潰す気か!


 後方でオーガを出し続ける偽クイーン!

 一気に速攻を仕掛けつつオーガを強化する偽キング!


 コンビネーションが厄介すぎる!


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 偽キングの雄たけびにプレッシャーを感じる。

 どうする?どうする?

 偽キングと偽クイーンを両方倒す事は難しい。


 偽キングだけでも、


 偽キングを確実に潰す!


 扉を開けて偽キングを最後の部屋に誘い込んだ。

 偽キングが部屋に飛び込んできた瞬間に扉を閉めた。

 後ろからオーガが迫って来るがオーガは無視だ。

 オーガと偽キング両方を相手にするのは厳しい!


 一気に行く!

 時間は残されていない!


「ダブル!レッドオーラ!」


 ダブルの効果で即テスラが発動した。

 偽キングにヒットし、更に増えたアローとシャドーランサーで偽キングを集中攻撃する。

 その上で俺自身をレッドオーラで強化して全力で殴り掛かる。


「おりゃああああああああああああああああああああああああああ!」


 1発目で俺の金棒と偽キングの金棒が打ち合い火花を散らして偽キングの金棒を弾いた。

 偽キングが態勢を崩した瞬間に野球のバットのように思いっきりスイングした。

 金棒を腹に叩きこむと偽キングが壁に吹き飛んだ。

 壁に衝突した瞬間に俺は壁に貼り付けるように何度も何度も何度も金棒で攻撃した。


 偽キングが魔石に変わり、俺は即魔石を飲み込んだ。

 俺の能力値が上がるのを感じた。

 新しいスキルも覚えた。


 いきなり偽キングが出て来て即倒す事が出来た。

 偽キングが運良く先行して迫ってきてくれた。

 都合よく閉じ込めて戦う事が出来た。

 俺の金棒は運よく偽キングにヒットして運よく魔石を取り込めた。

 運の力で楽に勝てた、多分そうだろう。


 偽キングを倒してもハザマは消えない!

 偽クイーンを倒さないと駄目か!


 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


 門がメキメキと音を立てて壊れていく。

 強化状態のオーガが迫って来たのだ。

 門はすぐに壊される!


 門を開け、回廊陣を走ってオーガに金棒を振り下ろし倒していく。


 グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!


 レッドオーラの効果が切れる前に倒せるだけ倒す!

 強化状態を無駄にはしない!


「かかってこい!かかって来いよ!」


 マイルームの入り口まで来るとレッドオーラの効果が切れ、走って最後の部屋に戻る。

 急いでアイテムボックスで回収した魔石を更に取り込む。


 違和感を感じる。

 ゴブリンのようにオーガを楽に倒せるのだ。

 オーガが迫って来るが前ほどの恐怖を感じない。


 最後の部屋にオーガが迫って来る。

 クイーンはオーガを出し続ける!

 だが、オーガは金棒を振り下ろせば1発で倒せる。

 おかしい、中級じゃない俺が、初級レベル1如きの俺が1発で、こんなに簡単にオーガを倒せる……

 


 そうか、このグレートオーガの金棒だ!

 グレートオーガの金棒が強いんだ!

 この武器は100万したし!

 RPGの序盤から伝説の武器を装備した、そんな状態に違いない!

 弱いわけがない!


「来いよオーガ!すべて倒してやる!俺にはグレートオーガの金棒がある!」


 マイルームの外には偽クイーンがいる。

 ボーナスタイムだ!

 何度も何度もハザマでオーガを倒す!

 俺にはグレートオーガの金棒がある!


「おりゃあああ!かかってこい!どんどん倒して魔石を食ってやる!ウエーイ!!」


 俺はテンションマックスで金棒を振った。




「はあ、はあ。そろそろ、きつい。調子に乗りすぎた」


 俺はマイルームを解除してハザマを出た。

 オーガの魔石をすべて飲み込む。


 ドロップ率100%でオーガの金棒と魔石が大量に手に入ったのだ。

 力が増している。

 甘い魔石をいくら食べても食べ過ぎにはならないし太る事も無い。

 うまし!


 毎日偽クイーンのハザマに通おう。



 俺は家に帰った。

 何かを忘れている……


 そうだ!スキル!

 偽キングのスキルは期待できる。

 俺は家の中でマイルームを発動させてスキルを使う。


「金棒!」


 オーガの金棒と見た目が同じ……


 俺にはグレートオーガの金棒があるしなあ。

 さっきまでの高かったテンションがすっと下がった。


 金棒に意識を込めると伸び縮みする。


「グレートオーガの金棒の方が、強い気がする」


 強いグレートオーガの金棒で戦おう。

 気分を下げるな、俺。

 こういう事もある。


 初手で偽キングを倒せて、これから毎日オーガを効率的に狩れる。

 むしろ運が良すぎる!

 運がいいんだ!


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