第124話

 電車を降りて2人で家に向かって歩く。

 会話は無い。


 俺は、ユイや、ヒトミや、いのりを助けたいと思っていた。

 1つ1つの細かい積み重ねが少しずつ環境を変えて行った気がする。


 思えば、ダンスも、ハザマダイエットも毎日のコツコツとしたことの積み重ねだった。


 近道なんてない。


 夕日を浴びるユイの顔が赤く見えた。


 その横顔が、とてもきれいだ。


「な、なに?」

「ポエマーになっていた所だ」

「ポエムを言ってみて?」

「恥ずかしいだろ」


「え? なになに?」

「ポエムなんて、恥ずかしいだろ?」

「気になる」


「そうか、うおっほん! ユイが服を脱ぎ、生まれたままの姿で、フグフグ!」

「や、やっぱりいいから!」

「ごめんごめん、悪かった。秘密だったよな」

「そう……秘密」


 秘密の関係、俺達は進展した。


「あ、いのりから連絡だ。今からハザマに行かないか?」

「うん、行こう」


【学校前・ハザマ施設】


 3人でハザマに入ると、ユイがガーゴイルに矢を放った。

 矢はガーゴイル3体を貫いた。


「ユイちゃん?もしかしてフトシ君に食べさせてもらったの?」

「……うん、いのりも?」

「そうね」


「そ、そっか、いのりも一緒にお風呂に入ったり」

「え?」

「え?」


 いのりの目が変わった。

 笑顔なのになんか怖い。


「ゆいちゃん、フトシ君、詳しく聞かせて」

「いのりには魔石を食べさせただけだ」

「ふぁあああああ!フトシ、ごめん」

「ユイ、焦らなくて大丈夫だから」

「焦ったり謝るような事なの? 聞きたいわね」


「きょ、今日は終わりにしよ!」

「そ、そうだな!」

「もお、後で教えてね」


「「はい!」」


 2人で逃げるようにハザマ施設から出た。

 こんなに早くバレるってある?

 ユイのガードがいつもより甘かった。

 恥ずかしい思いをさせて平常心を失わせてしまったのかもしれない。



 家に帰るとヒトミが俺に抱き着いた。


「3日もどこに行ってたんですか! どうして連絡を無視したんですか! さみしいです!」

「わ、悪かった」


「……」

「ヒトミ、顔を開けて驚いたような顔をしてどうした?」


「私がフトシに抱き着いているのにユイは余裕ですね?」

「そ、そんな事無いよ」

「スンスン、フトシ君からユイの匂いがします」


「食事にしよう、いい匂いがする」

「まさか……ユイに先を越されるなんて……2人は付き合ってますか?」


「付き合ってないよ」

「そういうお友達、そういう事ですか」

「何も言ってないだろ」

「私もまずはそういうお友達になります! 3日間遊びに行って帰ってこないお友達になります!」


 くわ!


「ずるいです、私を何度ものけ者にしてずるいです! 私もパーティーに入れてください! 錬金術師でハザマに入らなくても同じパーティーになれます! 錬金術師は今貴重です! 役に立てますよ! 私も旅行に行きます! まだ夏休みは終わっていません!!」


「皆、ご飯出来たわよ~」

「ご飯を食べながら話をしよう」

「そ、そうしよう」


 食事が始まってもヒトミのテンションは高い。


「私もパーティーに入れてください!一緒に旅行に連れて行ってください!」

「どこがいいか決まってるの?」


「ユイ、よく聞いてくれました。そう、夏休みと言えばあ!これです!」


 ヒトミがパンフレットを取り出した。

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