第98話


 俺はアイテムボックスに物資を入れて飛行機に乗っていた。


「おおお!小型飛行機に初めて乗りました!感動しますね!」

「ふふふ、そんなに喜んでもらえると嬉しくなるわね、さて、そろそろ目的地よ。何度も言うけど、この飛行機を使い捨てるように強引に降りるわね」


「分かりました!」


 森の中にある狭い草原に降りる為減速し、凹凸のある草原に近づいていく。

 そこにグレートスケルトンがいた。

 スケルトンより背が高くて全体的にゴツイ見た目をしている。


「お姉さんは不時着したら逃げてくださいね!金棒!」


 俺はドアを金棒で壊し、外に飛び降りると金棒を伸ばしてグレートスケルトンの頭を割り倒した。


 飛行機が無事に降りると特級冒険者が集まって来た。


「お!来たな天才!」

「え?」

「オオタフトシ君ね? よろしく」

「あ、はい! よろしくお願いします」


「パイロットは、上級冒険者に頼んで連れ帰って貰うとして、さすが天才、派手な登場だな」

「いや、俺天才じゃないですよ、それを言うなら特級のみんなが天才です」

「なるほど、配信の通り、自覚がない感じか。確かにソウガに似ている」


 ドローンが飛んで配信が行われている。


「今は拠点までフトシを運ぶのが先だな」

「もお、パーティー名くらいは紹介しましょうよ。彼は天才なんだから優しくしないとかわいそうでしょ!」


 いまいち意味が分からないが、特級の言う事だ。

 俺には理解できない領域があるのかもしれない。

 気を使ってくれているんだ、俺の方から知っているアピールをしないと。


「特級の皆さんは全員有名です。

 Tレックスは個々の実力最強の4人で超攻撃的パーティー。

 4本の牙は全員戦士の男性で30代、皆が武器使いの教科書のように参考にしています。

 7本の矢は7人パーティーで全員女性、連携に強みがあり、男性人気が凄いです。

 チュンチュンジャンプは2人だけの兄妹パーティーでスズメさんの配信チャンネルが100万登録突破、なんですよね?」


 スズメさんはドローンで配信を開始していた。


「紹介はいらないか、お、パイロットの迎えが来た。所で、この中で誰が1番強そうに見える?」


 ここの実力は最強と言われるTレックスのリーダーが言った。


「ああ、どうやら俺、まだまだみたいです。Tレックスが一番強いのに、俺にはチュンチュンジャンプのハンマー使い、ハンマさんが一番強そうに見えます。皆の足手まといにならないよう頑張ります!」


 その瞬間にみんなの空気が変わった。


 Tレックスのリーダーが笑い出した。


「はっはっはっは! なんてこった! はっはっはっは!」

「す、すいません。俺実力不足なので失礼な事を言いました」


 うわ!

 こわ!

 声が大きい!


 何で笑った!?

 何で急に笑った!


「ああ違う違う! 俺達が言ってこなかった真実を天才は一発で見抜いちまうんだからよお! そうだ、その通りだよ! この中で最強なのはハンマー使いのハンマだ! 悔しいが当たりだよ! 俺達が個々で最強と言われているのは素人の勝手な決めつけだ!」


 フトシの見ていない所でコメントが盛り上がる。


『衝撃の事実!、天才フトシは一発で見抜いたのか!』

『フトシはやっぱり天才!』

『特級が天才と言ってるんだ。天才だろうな』

『たった一言で皆の思い込みを正して来たか、これが天才』

『努力を継続できるも含めての天才だろうから、嫌な感じがしない』


『フトシは特級の中で誰が好みなんだろ? そこが重要』

『それより何でレン君がいないの? フトシ君とレン君が揃っての完成系なのに』

『たった1分で特級を認めさせたか。流石フトシの兄貴!』


 周りにいたみんなも語り出す。


「天才か。信じるぜ! なあ、ソウガさん?」


 4本の牙のリーダー、ソウガさんに注目が集まる。


「確かにフトシは天才か。羨ましいな」


「「似てる!」」

 

「私も信じるわ。後、優しくしましょう」

「私も優しくするからよろしくね」


「俺は元から優しいから問題無いな」

「「どこがよ!」」


「じゃあ、チュンチュンジャンプ、ハンマとスズメがフトシのメイン護衛係な。スズメが19才で年も近いだろ? この中じゃ一番天才だしな」


 スズメさんが近づいて来た。

 ブラウンの髪をサイドテールで結い、瞳は黒色だ。

 白いワイシャツ、ブラウンのフレアスカートを履いていて膝から上を見れば一見JKにも見える。

 だがバトルブーツだけは大きくゴツイ。

 足技主体の格闘タイプだ。

 背は小さいがスタイルは良く、眠そうなたれ目はどこか色気があった。


「よろしく」


 スズメさんが手を出して来たので手を差し出すと俺の手ではなく体を触った。


「スズメ、さん、ちょ!」

「うん、この感じ、かなり、魔石を食べた?」

「特級冒険者の方ほどではないと思いますが、食べました」

「スンスン、いい匂い」


 脇の匂いを嗅いで尻まで触って来た。

 そして離れると言った。


「強い」

「あ、ありがとうございます?」


『スズメジャッジは正確だ。これは、本物だな』

『まさか、派手に飛行機から飛び降りて、真実を言い当てて、スズメジャッジで強い判定を出しやがった!どれだけ俺を驚かせるんだ!』

『強いはスズメジャッジの5段階評価の中で最上級、やるな!』


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