第156話

 俺はまた経営破綻した小型のハザマに向かっていた。


「レイカさん、これって何回やるの?」

「ごめんなさい、言いたいことは分かるわ。でも、どこのハザマオーナーも自分たちの都合で経営破綻したり廃業を決めたりするのよ。あまり強引に事を進めると政府が訴えられるのよねえ」

「民主主義かあ」


「そうね、国民の権利を主張できるベターな制度だけど、どの社会制度にも必ず欠点があるわね」

「分かりました。また定期的にハザマを消しに行くんですね」

「ごめんね……でも、ホテルでいい事をしましょう。電話ね。もしもし……分かりました。フトシ君、予定変更よ」


「え? 急に!」

「ドリーム1の前に、ダンジョンが出現したわ」





【ドリーム1前ダンジョン・レン視点】


 現場は多くのドローンで配信されていた。

 特級と上級冒険者が集まり、ダンジョンの前に集まると死神のような男が出て来た。


「1万年ぶりだね♪」


 しゃべった!

 人間なのか、それともモンスターなのかすら分からない。

 ただ顔を見ると人と同じように見えて、その笑顔は歪んでいた。


 僕は前に出た。

 会話が出来るなら情報を引き出す。


「1万年ぶり? 君は一体?」

「ははははは、人間はそんな事も忘れてしまったんだね♪」

「意味が、分からないよ」


 少なくとも彼が人間ではない事は分かった。

 

「ゲームをしよう♪」

「ゲーム?」

「そう、人間どもが僕を倒せたら人間どもの勝ち、僕を倒せなければモンスターがすべてを殺す♪」


 そう言って後ろを向いてダンジョンに入って行く。


「ま、待ってくれ!」

「あーそうそう、あの建物にあるハザマを放置しても君らの負けだ。あの建物のフェイズ1化は近い。僕の力でそうしてあるからね♪」


 死神がダンジョンに入って行った。

 ハンマさんが僕の肩に手を置いた。

 少しだけ緊張がほぐれた。


「レン、よくやったな。どう攻めるかは俺達に任せられている。要するに丸投げだ」

「攻めるんですか?」

「チュンチュンジャンプと7本の矢、今いる9人の特級でダンジョンに入って来る。駄目だと思えばすぐに撤退する。レンはドローンと一緒について来て欲しい。戦わずドローンを守るだけで良い」


「分かりました」


 9人の特級冒険者の後ろについて行ってダンジョンに入った。


 ダンジョンに入るとモンスターがいた。


「グレートオーガ、グレートスケルトン、グレートゴーレムにグレートガーゴイルか」

「全部、上級クラス、しかも、数が多い」

「レンはもう少し後ろに下がれ!」

「はい!」


 ドローンと一緒に後ろに下がるとすぐに戦闘が始まった。

 

 ハンマさんがハンマーでグレートスケルトンを叩き倒した。


 スズメさんはグレートオーガを蹴り倒す。


 7本の矢もモンスターを倒していった。


 これなら行ける!

 その時、上に画面が現れ死神が映し出された。


『この程度なら倒せるか……決めた、僕の分身体をつけるよ♪』


 2体のジョーカーが現れた。

 更にグレート系のモンスターがどんどん増えていく。


 ジョーカーの動きは速くない、でもなぜか攻撃が当たらない。

 当たるはずの攻撃が当たらないのだ。


「どうなっているんだ! 当たらない!」

「私が行く! ギア1!」


 スズメさんがジョーカーに連続蹴りを放った。


「な! スズメさんの10連撃を全部躱した!」


『言い忘れてたけど、僕の分身体は運がいい! 攻撃は中々当たらないよ! 頑張って倒しても時間が経てば復活するけどね♪』


 ハンマさんが当たるはずの無いジョーカーの攻撃を受けた。


「ぐあ! く、威力は低いが、体力を削られる!」

『またまた言い忘れてたけど、分身体の攻撃には気をつけた方が良い! 攻撃を食らうと体力を奪われるよ♪』


「撤退する!」


 みんなで素早く撤退する。

 後ろから死神の笑い声が聞こえた。



 少し休んで今度はドリーム1に乗り込みハザマを消滅させに行った。


 でもそこでもジョーカーが2体現れ、画面に死神が映し出された。


『ざーんねん! ジョーカー2体が邪魔するよ♪』


 当たるはずの攻撃がジョーカーに当たらない。

 当たらないはずのジョーカーの攻撃が何故か当たる。

 みんなは消耗した。


『時間切れ~! フェイズ1♪』


 ハザマからモンスターが出て来た。


「撤退する!」


 みんなで外に出た。


 後ろからモンスターの群れが出てくる。

 他の冒険者がモンスターを戦う。

 ユイとリナ、ユズキが遠距離攻撃でモンスターを倒して今は持ちこたえている。


 でも、皆の魔法が切れたら?


 銃が使えなくなったら?


 消耗戦に追い込まれた。


 まずい、このままでは全滅だ。


 ダンジョンは入り口付近で足止めされて、ドリーム1のフェイズ1が始まった。


 打てる手が無い。


 ブルーサンダーを使った所で何も変えられない。



 ものすごい勢いでスポーツカーが走って来た。


 スポーツカーがドリフトをしつつ急停止するとレイカさんとフトシが出て来た。


「配信を見ていた。レン、皆、作戦がある」


 フトシが建物に隠れて特級冒険者と僕を呼んだ。

 フトシの作戦にみんなが乗った。


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