第35話

 放課後になると走ってゴウタさんの初級ハザマに向かった。


 ゴウタさんに挨拶する。


「こんにちわ!」

「おう!来たか」

「今日は魔石の納品に来ました。俺、初級レベル5になりたいです!ハザマでたくさん稼いでたくさん納品したいです!」


「初級レベル5か……50万円以上の納品が必要だな」


 俺は偽キング以外の魔石をストックしていた。


「あれ?ゴブリンの魔石が値上がりしてる?」

「おう!前は売値1万だったが、今は3万に値上がりした。ゴブリンの魔石はドロップ率が上がる。そしてゴブリンのハザマが消えたからな」


 俺の影響もあるのか?

 いや、今は雑念を消そう。

 ランク上げだ。


「50万円分か」

「ゴブリンの魔石17個で初級レベル5の試験資格を得られる」

「換金します」


 俺はアイテムボックスからすっと魔石を取り出した。


「いいのか?待っていれば更に値上がりするかもしれないぜ?」

「大丈夫です」

「分かった。51万円、まいどあり!……フトシ」


「何ですか?」

「まだあるな?」

「ん?」

「まだ魔石を持ってるな?」

「な、何でそう思ったんですか?」


「小銭を出すような動きで魔石を出しただろ?」

「い、今を大事に生きていきたいので。即決しました」

「いや、いいんだ。貯めておくのは悪くはないし深く聞く気はない。アイテムボックスは便利だ」

「……」


「どうした?」

「武器が欲しくて」

「オーガの金棒はどうした?」

「折れました」


「……は?意味が分からねえ」

「オーガの金棒が折れました」

「言葉の意味じゃなくて!いやいや!あれは折れるモノじゃない。……まあ、武器ならある」


「オーガの金棒より良いのが欲しいです」

「オーガの金棒より良いなら、グレートオーガの金棒だな。だがあれは丈夫だが重すぎる。置いてはあるが、飾り用に置いてあるだけだ。使っている奴を生で見た事が無い」


 ネット動画でオーガの金棒を使っている人はいたけどネタ扱いだった。

 使っている本人は必死で金棒の良さを熱弁していたけど、それでもコメントはネガティブなものが多かった。


 多くの高ランク冒険者が刀や剣、たまに斧・ハンマー・槍を使っている。

 みんな高ランク冒険者のマネをする。

 その影響は大きい。

 俺は片手でグレートオーガの金棒を手に取った。


「振ってみてもいいですか」

「片手で箸を持つように持ったか……外でやってくれ」

「分かりました。借ります」


 2人で外に出ると俺はグレートオーガの金棒を振った。

 オーガの金棒より重くて太い、しっかりしていて壊れにくいだろう。

 全身の筋肉を使って振り回す感じになるけど、それでもしっくりくる。


「いいですね。欲しいです!」

「……ちょっと待ってくれ。値段を調べてくる」


 また一緒に施設に入った。

 買えるのか?

 ゴブリンの上位種がオーガでさらにその上位にグレートオーガがいる。

 高かったらどうしよう。


「……100万だな」

「買います。ゴブリンの魔石を後17個出します」

「おう、これでもっと上のランク試験を受けられる」


 ゴウタさんの顔が暗い。


「何かあったんですか?」

「顔に出ちまったか。実はな、この初級ハザマ施設を閉める事になりそうだ」


「えええええええええええええええええええええ!!!」

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