第70話
【ユイ視点】
試験官3人とフトシだけがグラウンドの中央に立ち、試験の説明を受けた。
「第一試験のルールだが、30メートル離れた彼女の魔法攻撃をかいくぐって攻撃を当てる、もしくは一定時間避け続ける。これが1つ目の試験内容になるが、すべて避ける必要はない。何か質問はあるか?」
「僕のスキルは召喚系です。アイテムボックスから物を取り出して投げたり、武器を召喚してもいいですか?」
マイルームのスキルを使うと試験が大掛かりになる。
アイテムボックスは大掛かりにならないか確認したいのが分かった。
「問題無い。彼女のランクは上級だ。むしろ攻撃をすべて避けて攻撃を当てられたら合格間違い無しだな。はっはっは」
「分かりました」
フトシはグレートオーガの金棒を振りかぶった。
いやな予感がする。
「位置に着きました。準備OKです!」
「よし、彼女の準備は出来た。試験スタート!」
試験官の女性が遠くから炎の弾を飛ばす。
フトシは2回それを避けた。
「おりゃあああああああ!」
グレートオーガの金棒を試験官に投げつけた。
「ひい!」
試験官は悲鳴を上げながら金棒を避ける。
落ちた金棒が轟音と砂埃を発生させてグラウンドに穴が開いた。
フトシは距離を詰めて2つ目の金棒をアイテムボックスから取り出して投げつけた。
試験官の太もも上部に攻撃が当たりそうになる。
ギリギリで金棒を避けると防御効果の付与された服がビリビリと破けた。
「ちょ!ちょっと待って!」
試験官の顔が恐怖で引きつった。
私はすかさず叫んだ。
「フトシ!ストップ!止まって!」
「一時中止!!攻撃中止だ!!!」
さっきまで試験内容を説明していた試験官が大声で叫んだ。
そこでようやくフトシが止まった。
ざわざわざわざわ!
見学していたみんなが騒がしく話し出した。
「俺元気ですから!」
「一旦審議する!」
「まだいけます!」
「審議だ!!!」
3人の試験官が集まって話を始めた。
「……武器は危ない」
「そ、それよりも、着替えて来ていいですか?パンツが見えて」
「すまん、すぐに着替えて来てくれ」
男の試験官が上着を女性試験官に渡すと彼女は走って建物に入って行った。
残された男の試験官2人で話を続ける。
「第一試験は終わりでいいと思いますよ。あの生徒は逸材です。初級のレベルは完全に超えています」
「だよな、後あいつ、危なくね?なにかあったかわからんが、余裕が無いやつは何をするか分からない。一応証拠の映像は残して、初級越えは証明する、その上で何か言われても、いや、言われる前に証拠を提出しておけば問題無いだろう」
「ですね、第二試験は金棒の代わりに木製バットとかの方が良くないですか?」
「バット、あるのか?」
「あるでしょう、あ、でも、許可が下りないかもしれないです。壊す前提なので」
「竹刀ならある、それで我慢してもらうか」
「竹刀が割れますね」
「それを映像で撮って提出する」
「あ、了解です」
「おほん、第一試験は通過だ」
声をあげようとしていたフトシが黙った。
通常なら最後に合否判定を出す。
フトシを刺激しないつもりなんだ。
「次は第二試験は近接戦闘だ。だが、次は竹刀で戦ってもらう。もちろん普段と違う武器を使う為、甘く得点をつける。それと、竹刀が折れたら試験はいったん中止だ、武器を出して戦うのは禁止だ。殴ったり蹴ったり、投げたりするのも禁止になる」
「はい!分かりました!」
その後、試験官2人で目を合わせた。
「はあ、俺が相手をする。撮影はお願いしてもいいか?」
「気を使ってくれて助かります。撮影だけなら気が楽です。あ、すぐに竹刀を持ってきますね」
「フトシ君と言ったな。何度も言う。武器を出すのは禁止だ。殴るのも蹴るのも投げ飛ばすのも駄目で竹刀が折れたら試験は一旦ストップだ」
「はい!元気に頑張ります!」
「竹刀を持ってきました」
「撮影も準備OKです」
「竹刀が折れたら一旦ストップだ!いいな!」
「はい!元気に頑張ります!」
「第二試験は1分間です。両者構えて、試験開始!」
バキャアアア!
お互いに竹刀で打ち合いフトシの竹刀が折れた。
「ストップうううううううう!!!」
「ストップです!次の竹刀を渡します」
ざわざわざわ!
「はい、試験再開!」
バキャアアア!
今度は試験官の竹刀が折れた。
ざわざわざわざわざわ!
「ストップです!この竹刀で最後なので、これで折れたら試験終了です。試験再開」
バキボキバッキャ!
お互いの竹刀が折れた。
フトシが足を踏み込んだ瞬間に地面が揺れて音を立てた。
ざわざわざわざわざわざわ!
「はい、試験終了です。お疲れさまでした。結果は1時間以内にお知らせしますね」
「まだいけます!俺元気ですから!」
「「もう終わりだ!」」
試験が終わった瞬間にアマミヤ先生とヒトミが泣きながら走ってフトシに抱き着いた。
何があったの?
フトシは強くなった。
そんな事よりも、私だけがのけ者にされているような、もやもやした感情が渦巻いた。
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