第128話

「見切りのシンって、冒険者ランク上級レベル10のあの?」

「そうですよ」


 シンさんはランクが高いだけでなく、冒険者を見極める優秀な試験官としても有名だ。

 近接戦闘、魔法攻撃、回復、射撃が出来てすべての技量が高い。


「もちろん無料です。場所は学校前のハザマ施設になりますが、ただ、公平な審判を行うために配信を行いますが、どうです?」


「やろうよ」

「フトシ君、やりましょう。フトシ君は自分の事をもっと知った方が良いです」

「僕もやるべきだと思う」

「フトシ君は公平なジャッジを受けてその話をよく聞いた方が良いわ」


 何故か俺より先にみんなが反応した。


「そっか、シンさんなら信頼できる。やってみよう」


 レイカさんがすっとスマホを取り出した。


「もしもし、シンさん、はい、時間は11時でどうですか? はい、決まりですね……決まりました。11時に学校前のハザマに、もう30分、すぐに出発しましょう」

「わ、分かりました」


 レイカさん、頭の回転が速すぎる。

 段取りが良すぎる。


「私は、ここで編集作業をしたいですが、いいですか?」

「ここでお昼ご飯を食べていく? みんなも食べていきましょう」

「ありがとうございます。フトシ君、早く行きましょう、多分、シンさんは11時前に施設前に立ってますよ」


「すぐに行きます!」


 俺は走って家を出た。



【レイカ視点】


 全部うまくいった。

 レン君にいのりの家電をプレゼントしに行くいい絵が撮れた。


 レン君の家にある家電は大分傷んでいた。

 洗濯機を回すと大きな音がして、冷蔵庫の冷凍は壊れている。

 レン君のお母さんは申し訳なさそうな顔でプレゼントを断った。

 でもプレゼントの交換条件としてレン君のドキュメンタリー動画を作成させてくださいと言ったら受け取ってくれた。


 フトシ君がシンさんに会いに行くのも計画通り。


 レン君のドキュメンタリー動画を作りアップした。

 コーヒーを飲むとほっと一息ついた。

 そして食事が美味しい。


 食事が終わるとみんなでレン君の動画をテレビで観賞した。


『レン君のお母さんにお話を聞いて行きます。レン君の事をどう思われますか?』

『私は、シングルマザーで、でもこの子は本当に真っすぐ育ってくれました。でも……この子には苦労を掛けたせいで、大人になりすぎて、私にもっと力があれば、こ、こんなに苦労を、ううううう、あああああ!』


 レン君のお母さんが泣きだした。


 みんなを見ると目に涙をためている。

 心を動かすいい動画が出来た。


 お母さんの後ろに見える古い家


 涙を流すお母さん


 そんなお母さんを悲しげに見つめるレン君


 努力で這い上がり、生活費を渡しながら頑張るイケメン高校生、これはバズる。

 そして、フトシ君とレン君は親友だ。

 まだアップしていないが2人の想いもついでに取材した。

 このレン君のドキュメンタリー動画はいわば前振り。


 次に貧乏なレン君をフトシ君が引き上げようとする動画をアップする!

 魔石を渡そうとして断る真面目なレン君、そして魔石を受け取って貰えず悔しそうで、それでいて悲しそうな表情を浮かべるフトシ君の表情を映して動画を終わらせる。

 みんなはこう思うだろう。


『フトシ君がレン君に魔石を渡して食べて欲しい』と。 



 更にサードプレイスのパンフレットをヒトミちゃんに渡しておいたのも良かった。

 パズルのピースがすべて噛み合っていく!


「感動してもらえましたか?」

「不覚にも感動した。いいじゃないか」

「レイカさんは皆にレン君の事を伝えるのが上手ねえ。涙が出ちゃったわ」

「いえいえ、所でここで動画編集をしたいのですがいいですか?」


「「もちろん」」


 レン君が魔石を食べたら、フトシ君は強さだけではない。


 その性格も知れ渡る。







 

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