第2話
「やる気があるのはいい事だ。引率役に立候補させてくれないか?」
美人新人教師の雨宮いのり(アマミヤイノリ)が俺に近づいて来た。
髪の長さはセミロングで前髪を目の上で分けた清潔感のある髪型。
体型にぴったり合うスーツ
見た目は美人アナウンサーのようだ。
レンとユイが立ち上がった。
「アマミヤ先生、よろしくお願いします」
「先生、ご迷惑をおかけします」
3人にみんなの視線が集まる。
美男美女か、レンが羨ましい。
俺は、レンに嫉妬しているのか?
自分で勝手に太っているのに、痩せていてモテるレンに嫉妬してしまう。
そんな自分が嫌になる。
俺はその感情を見て見ぬふりをするように違う事を考えた。
良くなる事だけを考えよう。
ダイエットが出来れば俺も変われるかもしれない。
3人を見てそう思った。
◇
放課後になると4人でハザマがある施設に向かう。
ユイとアマミヤ先生が並んで楽しそうに話をする。
俺とレンは後ろをついていく。
「先生、今は入学シーズンで忙しいのに本当に助かりました」
「仕事だからな。それにハザマに行く積極性はいいと思うぞ」
「ハザマに行く許可がすんなり出て良かったです」
「そう、だな」
レンが前に出て会話に参加する。
「他の先生には僕が話をしたんだ。僕に父親が居なくて経済的に苦しい事と、ハザマ施設はユイの父がやっていて引率を協力してもらうよう話をしてあること、アマミヤ先生に引率をお願いした事、危なくなったら逃げる事を言ったら書類提出だけですぐ許可が出たよ」
高校入学一カ月まではハザマに行かない暗黙の了解がある。
許可を出す先生側としては問題を起こしたくない。
特に公務員は保守的だ。
でも、レンは先生に責任が行かないように持っていく事でうまく許可を取ったのだ。
自分が貧乏である事を言って許可を与えるしかないように持って行った。
しかも何か問題があった場合証拠が残るよう自分で書類を書いた。
「レン、いつもすげえな」
「早く働きたいからね。早く強くなって母さんを助けたいんだ」
「施設についたよ」
『初級ハザマ施設』と大きく青文字の看板が掲げられている。
その下に施設名が小さく表示されていた。
間違いがあれば人が死ぬため、初級ハザマ施設の文字だけはフォントの形から色まで統一されており、ルール違反があれば国の注意が入るのだ。
スマホをかざして建物に入ると武具やアイテムの売店があったが見ないようにした。
金が無いのだ。
宵越しの金は持たず、今を楽しく、それが俺の生き方だ。
「私が着替えるまで地下には入らないでくれ、ここで待機だ」
「「はい」」
俺は荷物をロッカーに入れて鏡に映った自分を見る。
横幅が広く、メガネをかけて髪はぼさぼさだ。
いかにもオタクのような見た目だ。
ハザマダイエットで痩せよう。
みんなには食事制限を勧められた。
確かに運動より食事の方が効果は高いらしい。
でも、二兎を追う者は一兎をも得ずだ!
俺は気持ちを切り替えて移動する。
少し待つと先生が着替えて出てきた。
凹凸のはっきりしたスタイルが目に飛び込んできた。
ダイバースーツのような見た目の青い防具を着ており、左腰には刀を2本差、右腰から太ももにかけてアイテム入れを取り付けてある。
冒険者の男性客が先生をちらちらと見る。
アマミヤ先生は、目立つよな。
「お父さんは扉の中にいるって」
「行くか」
地下室に降り、金庫のように厳重な扉に先生がスマホをかざすと扉がゆっくりと開く。
扉を通り過ぎると自動で扉が閉まり、また2つ目の厳重な扉にスマホをかざすと2つ目の扉が開いた。
二重の扉を抜けるとすぐに2人の見張りが居て、上を見ると監視カメラがいくつも設置されている。
かなり厳重な施設だが、これでも初心者向けの小規模施設なのだ。
ハザマは異界からモンスターがこの世界に侵入するための中継地点と言われている。
ハザマを放置するとモンスターがこの世界に出てくる。
見張り2人でモンスターを止められなかった場合厳重な二重扉は普通に突破される。
扉は冒険者が集まり包囲するまでの時間稼ぎをするためにあるのだ。
「生で始めてハザマの入り口を見た。緊張する」
「僕も緊張するよ」
周りを見渡すと100近い魔法陣が並ぶ、この魔法陣1つ1つがハザマへの入り口だ。
1つの魔法陣を見ると、地面に三角形の魔法陣が光り、くるくると回っている。
魔法陣によって光の色や強さが違っていた。
ユイの父、紬剛太(ツムギゴウタ)がニコッと笑って俺達に手を挙げた。
「よお!来たな、見習い冒険者!初のハザマ行きを案内するぜ!」
声が大きいし背が大きくてマッチョ、冒険者のイメージにぴったりだ。
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