第134話
家に向かうと男性がハンカチを落とした。
「あの、ハンカチを落としましたよ?」
「あ、失礼しました。お礼に食事をご馳走しますよ」
「いえ、大丈夫です」
「遠慮なさらずに! お時間が無い様でしたらここで数分話をしましょう」
あ、マスコミの人だ。
だんだん小技を使う人が増えてきた気がする。
「失礼します!」
俺は走って逃げた。
家に帰るとすぐにお客さんが来た。
ピンポーン!
「毎週ウイーク新聞の者です! フトシさん! お話を聞かせてください! いますよね! そこにいるのは分かっています! 開けてください!」
最近マスコミがしつこい。
ベルの音を無視するようになった。
父さんと母さんはリビングでくつろいでいる。
テレビを見ると『世界最大のハザマ施設!』と書かれた映像が映し出された。
施設の代表がインタビューを受ける。
『カネイリさん、今回のハザマ施設に対する思い入れなどがありましたらお聞かせください』
『アシュラ災害によりこの国は多くの優秀な冒険者を失いました。ですが、その原因はハザマ施設の合理化が進んでいないことがあげられます! 早急に超大規模ハザマ施設を建造し、一刻も早くオープンする事でハザマ施設の合理化が進み、ハザマを監視する冒険者を守りから攻めに転換する土台を作る事で! 日本の皆様が安全に暮らせる日本にしていきたいのです!』
『なるほど、ですが、冒険者の犠牲、アシュラ災害は政府の失策と取る声も聞かれますがその点についてお考えをお聞かせください』
『後から考えれば、そう言いたい気持ちも分かります。しかし、あの状況では一刻も早く冒険者を現地に向かわせることが重要にも見えました。要は終わった後に言う批判はすべて後出しじゃんけんです』
『政府の失策ではないと?』
『はい、犠牲者が増えた最大の原因は数の力で押し負け包囲されたからです。もしも小さい規模のハザマ施設を合理化出来ていれば冒険者側が数の力で勝てた、そう考えると、ハザマの合理化が出来ていれば被害は大きく抑えられた、そう考えます』
良い事を言っているけど、台本を丸暗記して読み上げたような感じがする。
後、見た目が悪そうに見える。
後、スポンサーだからしょうがないんだけど、超大規模ハザマ施設を作れば管理面での不安を危険視する声がある。
そして超大型ハザマ施設をオープンすれば小規模ハザマの潰すと言っているようなものだ。
メリットは分かるけど、デメリットには一切触れないのか。
『はい、ありがとうございます。カネイリさん、今日はご出演ありがとうございました』
『こちらこそありがとうございます』
ヒトミ・ユイ・いのりが裏口から帰って来た。
「フトシ君! 見てください! ででん!」
ヒトミが急に服を脱ぎだした。
「え!?」
「新しい水着です!」
大きい。
黒いビキニにレースのフリルがついた水着を着用していた。
今買って来たんだな。
「ヒトミ、みんなびっくりするでしょ」
「サプライズです」
「フトシ君、今日の16時に出発なのは聞いてる?」
「どこに?」
「サードプレイスに行くのよ?」
「知らない内に時間まで決まってた!」
「あー、パタパタしてたから」
「フトシ、行くなら配信をしてマスコミのみんなに分かるようにお願いね」
「そうだぞ、父さんも母さんも、家にいる時くらい落ち着きたい」
「……うん、それは、迷惑にならないようにする」
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