第119話

「その前に、フトシ君はこれで戦ってもらいます」


 野球の木製バットをレイカさんが手渡した。


「え?いや、これじゃハンマさんのハンマーを防げませんよ」

「避けてください」

「バットをハンマさんに当てても、バットが壊れます」

「壊れたら試験ストップです」


『レイカ無茶振り来た!』

『でも、金棒を召喚して戦われたらまずいだろ、アシュラ殺しの金棒を使う方が危ない』

『でも、さすがに木製バットは無茶だろ!』

『バットはグレードダウンし過ぎだ』


「では位置についてください。試験開始!」


「早速全開で行く!スタンプ!」

「あっぶな!」


 俺は横に飛んでハンマさんのスキルを回避した。

 轟音と共に地面にハンマーがめり込み、地面の周辺にはヒビが入っていた。


「ふう、避けるかい」


『はあ!いきなりスキルを使って来たぞ!』

『スタンプはアシュラを倒す時に活躍した高威力の攻撃だ。あれは人に使うもんじゃない』

『ハンマさんはスタンプを使ってもフトシなら大丈夫だと思ったんだろ』


「言っておくけど、本気でやる。本気でスタンプを当てる気で行く。うおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!せい!おりゃああああああああああああああああ!スタンプ!スタンプ!スタンプうううううううううううううううううう!」


 ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドッゴーン!ドッゴーン!ドッゴーン!


『早すぎて動きが追えない』

『全部避けれる認識でいいんか?』

『フトシに傷がついている感じも、吹き飛ばされてる様子もない。多分避けてるんじゃね?』


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


『バット持ちでノーダメージ?てか、ハンマさんが弱く見える?』

『フトシが避けすぎなんだ』


 パアン!


『ん?フトシのバットが壊れた?』

『何が起きた?気づいたらハンマの後ろにフトシがいてバットが壊れていた』


「俺の負けだ。まさか俺が背中に攻撃を受けるとはねえ」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!勝った!フトシが勝ったぞ!』

『フトシを見てて寒気がするわ。これが不安定な天才か』

『レイカさんの努力が無いと、フトシの凄さは分からなかっただろう』


「次はスズメさんと木製バットで……スズメちゃん、どうしました?」

「フトシに、蹴りを教える」


「俺、蹴りはあまり使ったことがありません」

「今から教える。私のマネをして」


 スズメさんのマネをして蹴りの型をやった。


「ハンマさん、解説をお願いします」

「スズメは蹴り対決がしたいんだろう」

「その通り」


「だ、ダメですダメです!フトシ君の蹴りが当たったら危ないです!」

「いや、やりようはある。フトシには蹴りは攻撃を弾くだけでフトシからの攻撃禁止だ。しかもスズメの蹴りを止める程度の威力に蹴りを手加減して貰う」


「危なくないですか?」

「だが、華があって、切り抜きが拡散された方がみんなの認識が上がって未来の安全に繋がる。皆に分かりやすくフトシの強さを伝えたい」

「……分かりました」

「決まりだな」



「フトシ君、スズメちゃんの蹴りと同じ位の力で蹴りを弾けますか?」

「やってみます」


「攻撃は無しですよ?」

「大丈夫です」

「蹴りで攻撃を弾くだけです」

「大丈夫です」

「本気で蹴らないでくださいね」

「大丈夫です」


「では位置についてください。試験開始です」


「ギア3!」


『いきなりギア3を使った!』

『普通なら、ギア1、ギア2、ギア3と段階を踏むだろ!』

『一番強い10秒強化じゃなきゃ無理だと判断したんだろう』


 スズメさんが走ってきて踵落としを放つ。

 俺はそれに合わせて蹴り上げで攻撃を止めた。


 ドーーーーーーーーン!


 蹴りの撃ち合いで轟音が響いた。


『は?見えなかった』

『スズメの踵落としに蹴り上げを返した?この一瞬で?』


 スズメさんが蹴りの連撃を放ち、俺はそれを蹴りで受けた。


 ドン!ドドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


 何度も蹴りで攻撃を受けるが、スズメさんのギア3が切れた瞬間に俺は攻撃を蹴りで受け止めた。


「あ!」


 スズメさんが回転しながら吹き飛んだ。


 ぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるんぐるん!


 そして地面に転がる。


 ゴロゴロゴロゴロ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!


「スズメちゃん!大丈夫ですか!」

「私は、大丈夫」


「し、試験終了です!」


『はあ!スズメちゃんを吹き飛ばしたのか!』

『これは切り抜き案件だぜ!』

『これは、バズる』

『もうバズってるやん。今回は500万越え』


『モンスター省は、対応を迫られるだろうな』


「すいません、電話です。はい、はい、分かりました。フトシ君は上級レベル1までなら問題無くランクアップ可能です」


 特級冒険者のみんなが歓声を上げた。

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