第134話


 生放送開始日。

 今週、カトレアはMeiQubeやテレビを見ていき、この世界の情報を集めていった。

 そのおかげもあってか、かなり常識については理解してくれたようだった。

 ……一応、それらの進捗に関しては澪奈に任せていたので俺も詳細は分からない。

 まあ、澪奈はふざけることはあってもそういう判断は正しいはずだ。


 そういうわけで生放送の準備が整ったので、俺は分身にカメラを操作してもらう。

 別のスマホで状況を確認する。

 ……うん、ちゃんと澪奈とカトレアが映っているな。澪奈がこちらに手招きをしてきたので、俺も仕方なく一番端にちょこんと立った。

 ……狭い部屋に三人が並ぶと圧巻だな。

 そんなことを考えていると、澪奈が手を振った。


「皆さんどうもお久しぶりです。色々ありましたが、ひとまず脇に置いておいて、今日はいつも通り異世界の攻略でもしていこうと思います」

〈久しぶりです!〉

〈それを脇に置かないでください!〉

〈うわ……エルフマジ美人……〉

〈何度も切り抜きで見たけど、動いているところを見ると……あれですな……むふふ〉


「こらこら。いきなりセクハラしない。はい、カトレア。ちょっとだけ自己紹介してもらってもいい?」

「分かりましたレーナ様。皆さま、初めまして。カトレアと申します。澪奈様とマネージャー様のチャンネルにお邪魔してしまい、ファンの方からは色々と思うところはあると思いますが、どうか怒らないでいただければと思います」


〈いや、むしろ歓迎!〉

〈カトレアちゃん……胸大きくて健気で丁寧で胸大きくて可愛くて胸大きい!〉

〈ていうか、どうして異世界人なのにどうしてこんなに流暢に日本語話せるんだ?〉

〈日本語なんてかなり難しい言語なのにな? そもそも一週間で覚えられるなんておかしくないか?〉

〈いやいや、おまえたち! そもそもレーナもマネージャーも英語を話しているぞ!〉

〈いや、英語だけじゃないぞ!? 普通にフランス語も話しているじゃないか!〉


 海外の人たちと思われるコメントが、いくつか見られた。

 それに気づいた澪奈が、カトレアに耳打ちする。

 カトレアが耳をぴんと上げると、それを喜ぶコメントが増えている。


「あっ、事前に説明しておくべきでしたね。レーナ様とマネージャー様に話したところ、どうやらこの世界には自動変換機という魔道具がないようですね」

〈え? 何その神みたいな魔道具?〉

〈つまり、それで会話できるってことか!?〉


「コメント欄の皆様、正解ですよ。私がつけているこの首のチョーカーがそれにあたります。あと、私の異世界の家に余っていた二つの自動変換機も二つ、レーナ様とマネージャー様に渡していますので、それですべての言語に自動で変換されているんです」


〈え? ヤバwww!〉

〈カトレアちゃんのチョーカー似合ってるなぁ。可愛いのぉ……〉

〈カトレアちゃん、マジ声が落ち着いていて癒される……〉

〈やばwww海外で二人の生放送をミラー配信で日本語の解説していた人たちが頭抱えてるw〉

〈マジじゃん。そこの視聴者たちが流れてきてるぞ!〉

〈おいもうTwotterのトレンドに上がってるじゃねぇか!〉

〈視聴者が一気に増えてるな……これが、バイリンガルの力か……〉


 ……確かにコメント欄のいう通り、それまで十五万人ほどの視聴者が一気に増えていっている。

 あっという間に二十万人を超え、今もその調子は落ちていない。

 これが、世界を巻き込める力か。

 確かに、MeiQubeで活動する場合英語のほうがいいというのは聞いたことがあるのだが、まさかここまでとは思わなかったな。

 カトレアが説明を終え、少しドヤ顔を澪奈に向け、澪奈もありがとうとばかりに会釈をしてからあとを引き継ぐ。


「とにかく、これらの魔道具のおかげで自動で変換されるみたい。だから、これからは海外のコメントも拾っていける」

〈やばすぎww〉

〈……異世界の魔道具やばすぎるだろ。やっぱ、異世界の技術力恐ろしいな……〉

「あっ、技術力に関しては私もとても驚いていますよ!」


 とりあえず、簡単に俺たちの事情も説明し終えたし、と思っているとカトレアが目を輝かせて声を上げる。

 これは予想外であったが、まあ別に急ぐ必要もないだろう。

 まだまだ視聴者が増えているので、視聴者の流入が鈍ったタイミングで異世界進出でいいはずだ。

 それまでは澪奈とカトレアのまったり雑談をお届けしよう。

 ……俺必要ないよな? やっぱり。


「カトレアは地球に来てから何に驚いたの?」

「あっ、驚いたのは……コンドピームですね!」


 おいこら!

 俺が視線をカトレアに向けたが、澪奈もカトレアも気にしていない。


〈へ? ぴーむ?〉

〈へ? コン〇ーム?〉

「はい! あのようなものは私の世界にはありませんでした。あと、アダルトグッズ関連の道具はどれも豊富にあり、とても性への興味が強い世界なのだと思いました」


〈あれ? もしかして罵倒されてる?〉

〈いやでも、性に対する探究って大事だろ?〉

〈異世界って殺伐としてるイメージだし、あくまで繁殖としての位置づけとかなのかね?〉


 ……いや、まあ大事だよ?

 そりゃあ色々な病気からお互いを守ってくれるだろうしな。





―――――――――――

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