第8話
俺とは違って職業の欄はないが、それでも十分に優秀なステータスだ。
それと、どうやら俺とは成長の仕方が違うようだ。……いや、俺が周りと違うのか?
ステータスポイントもどうしてこんなにあるのだろう? 鍛錬とかで溜まっていくのだろうか?
興味深くてじっと眺めていると、
「ま、マネージャー? あんまりじっと見られると発情する」
「わ、悪い。あと、普通発情じゃなくて照れるだからな?」
「それは普通の人の場合だから。それで何かあった?」
「……俺の能力なんだけど自分のステータスを確認できるっていう能力なんだけど、どうやら澪奈のステータスもみられるみたいなんだよ」
「私のステータス? ステータスって、ゲームみたいな?」
「ああ、そうなんだけど……俺とは少し違うみたいなんだよな」
「違うって、いい意味? 悪い意味?」
「いや、どっちかはちょっとわからないけど……とりあえず、メモ帳に澪奈のステータスをメモするよ」
俺のステータスと比較してみてもらったほうが早いだろう。
その間に澪奈は米をといで、炊飯器にセットしていく。
それが終わったところで、俺は改めて澪奈にステータスを確認してもらう。
「こんな感じなんだ」
先ほどの澪奈とステータスと俺のステータスを比較してみる。
「……私、こんなにスキル持ってたの?」
「みたいだな。確か、検査の時って一つしか分からなかったよな?」
「うん。検査機だと一つしか調べられない。でも、確かに複数スキルを持っている人もいるにはいるって聞いたことがある……それは個人で自覚するしかないみたいだけど……ていうか、マネージャーのほうがステータス高い?」
「俺は装備品で補ってるからな。澪奈はまだ一つも装備してないし、ステータスポイントが異様に余ってるんだよ」
「あっ、ほんとだ。マネージャーは全然ない?」
「俺はレベルアップですべてのステータスがプラス1されて、ステータスポイントも1手に入るんだ。でも、澪奈の場合はちょっと違うみたいなんだよな」
「……成長の仕方が違う? 鍛錬とかでステータスポイントが入っている、っていうなら確かに私は迷宮で戦ったりトレーニングしたりしてるから分かるけど……」
ってことは俺もトレーニングとかしたらステータスポイントがもらえるのだろうか?
それとも俺はちょっとみんなとは特殊なのだろうか?
……特殊なのは俺のほうだよな。
この迷宮に近づいた時、このステータスなどが与えられた。……他の人たちは皆生まれた瞬間、能力のあるなしが分かるんだしな。
そんなことを考えていると、顎に手を当てていた澪奈が何かに気づいたように目を見開く。
「マネージャー……私のステータスポイントって割り振れる?」
いわれた通りに割り振ってみようとすると、
【対象が遠いため、操作できません】
と表示された。
「えーと……距離が近ければできるみたいだな」
試しに澪奈の肩に手をのせてみると、できた。
対象に触れているのが条件のようだ。
すぐに澪奈から手を離して見てみると、彼女は少し頬を赤らめていた。
「……マネージャーの能力、とんでも能力かもしれない」
「……どういうことだ?」
「マネージャーって、冒険者の覚醒って知ってる?」
「ああ。魔物と戦っていた人がある日突然、急に力が伸びるっていう現象だよな。……まさか」
「もしかしたら、普通の人は戦っていけばステータスポイントが手に入っていく。でも、それが適切にステータスに割り振られないけど……たまに運よく割り振られることがある、としたら?」
その言葉の意味は、俺も理解できる。
「マネージャーは、他の人のステータスを自由に割り振れる……つまり、本来故意にできない覚醒を、意図的に起こせる可能性があ」
「……覚醒、っていうより得た経験を正しく割り振れる、ってことだよな」
「うん。でも、私みたいに得た経験がそのまま蓄積したままの人もいる……それを、操作できるのは凄いと思う」
澪奈の言葉に、俺は思わず唾を飲み込んだ。
確かに、今の澪奈のステータスポイントを自由に割り振ることができれば、それは澪奈が覚醒したかのように大きく成長できるだろう。
バランスよく振っても一つのステータスが7くらいは上がるんだからな。
「ステータスポイントってこんなに溜まっちゃうくらい、まったく割り振られないのかね?」
「どうなんだろう? 他の冒険者たちを見てみないとわからないけど、順調に成長できている冒険者はちゃんとステータスポイントが割り振られている可能性はある」
「そうだよな」
すべての人が覚醒しないとステータスポイントが割り振られないというのなら、世の中に冒険者の成長という言葉はないだろう。
どちらにせよ、今の俺は周りの冒険者たちも自由に成長させることができる。
確かに、この能力は【商人】などよりも便利かもしれない。
「……とりあえず、ステータスポイントについてはまた後で考えるとしようか。今は夕飯食べて、迷宮に潜るってことで」
「……うん。とりあえずできることから片付けよう」
澪奈が頷いて、夕食の準備を始めていく。
俺もできることは手伝っていたが、いかんせんキッチンが狭いからな。
二人も人が立つとまともに動けなくなりそうなので、俺はリビングに移動し、インベントリにしまっていたテーブルを取り出して、床に置いた。
「……マネージャー。もしかして、【アイテムボックス】のスキルもゲットした感じ?」
食器などの準備をしていると、澪奈が驚いたようにこちらを見てきた。
……そういえば、もう昨日から当たり前のように使っていたインベントリだが、これもかなりのレアスキルなんだよな。
「一応、インベントリっていうんで、【アイテムボックス】とは名称は違うんだよ。効果は同じみたいだけど」
「それ、とても便利」
「だな。容量もなさそうだし、適当に部屋の荷物を入れてるんだ」
「……そっか。ていうか、マネージャー。その二つの能力だけでも、普通にごはん食べていけると思う」
「そうかもしれないな。でも、俺澪奈のマネージャーしたいしな」
「え?」
「ほら。最初にスカウトしたときに言っただろ? 絶対トップMeiQuberにするって」
「う、うん。いきなりカラオケ店で……言われた」
俺と澪奈の出会いは、カラオケ店だった。
俺が駅前のカラオケ店でストレス発散に歌を歌っていたのだが、トイレから戻ってきたとき部屋を間違えてしまい、澪奈の部屋に入ってしまった。
澪奈は特に気にせずに歌を歌っていたのだが、そのときの澪奈の持つ迫力に圧倒され……気づけばスカウトしていた。
「だから、澪奈。一緒にMeiQuberのトップを目指すぞ」
「……マネージャー。うん、一緒に頑張ろう」
澪奈が笑顔とともに頷く。
普段あまり笑わない彼女の笑顔は、思わずマネージャーという立場を忘れるくらいに魅力的なものであり、俺はついつい見とれてしまう。
この笑顔が、澪奈の武器だ。
澪奈の才能は間違いない。
あとはいかにして注目を集められるかどうかな。
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