第119話



 これは……ちょうど良い検証になるな。

 あとは、戦闘の継続時間についてだが……どうやらやられない限りは動き続けられるようだな。

 分身五十体が新宿駅周辺にいた魔物たちを仕留め終えたようだ。

 ……遠隔から、「終わりましたー」という感じの連絡が届いた。

 

 はっきりとした言葉ではなく、なんとなくでしか分からないがこちらから指示を出せるのと同じで、向こうからも指示が送り返せるようだ。

 これは、便利だな。

 残っていた分身二十五体に迷宮を囲んでもらい、魔物が出てきた随時撃破せよと指示を出す。

 残りの二十五体は迷宮内に入って攻略に向かうよう指示を出してから、穴倉さんに近づいた。


「穴倉さん終わりました……穴倉さん?」


 声をかけにいくと、穴倉さんはぽかんとしたまま固まっていた。

 よくみるとそれは穴倉さんだけではなく、この場にいた人たちも同じだった。


「穴倉さん」


 俺が改めて少し大きな声で呼びかけると、驚いたようにこちらを見てくる。


「あ、ああ……茅野さん。どうしたんだい?」

「街内の魔物たちの討伐が完了したので、結界の縮小をお願いしようと思っていたのですが……」

「お、終わった……!? も、もう!?」

「はい。分身たちが頑張ってくれたようでして」

「……あ、あの分身は……紛れもなくキミそのものの力を有しているのかい?」

「いえ、たぶんですけど……半分程度の力ですね」

「は、半分で……暴走状態のBランクの魔物たちを、一掃……」


 穴倉さんの呟きに、その場にいた獅子原さんまでも信じられないものでも見るかのようにこちらを見てくる。


「……半分で、マジかよ……前より、さらに強くなってるじゃないか……こんな短期間でこんなにって……」


 獅子原さんは、俺の成長速度に驚いているようだ。

 ……ただ、それは俺も似たような意見だ。

 獅子原さんだって、現在ステータスポイントは60も余っている。


 前よりも確実に成長するためのポイントは手に入れているんだ。

 それが適切に割り振られにくいから、皆困っているのだろうけど。

 穴倉さんが指示を出し、一度結界を解除する。それまで結界を覆うように配置されていた警察や自衛隊とともに歩いていく。


 ……なるほど、こうやって結界の範囲を縮めていくんだな。

 結界は一度展開してしまうと、その範囲の操作はできないようだ。


 俺たちの動きに合わせ、背後のマスコミたちも一緒に動いてくる。

 ずんずんと様々な職業の人たちが入り混じり行進していき、目的の迷宮の入口へと向かう姿は、なかなかに異様な光景だろう。


 やがて迷宮の入り口が見えてきた。俺が派遣していた分身たちは暇そうに迷宮を取り囲んでいる。

 周囲を守る分身たちに穴倉さんが驚いていたが、すぐに指示を出す。


「迷宮周囲に結界を展開しろ!」


 穴倉さんの号令に合わせ、再び結界が展開される。

 先ほどよりも小さな結界であり、術者の女性の負担も減っているように見える。

 ……あの結界のスキルは強力だよな。


 使用している女性のステータスを見てみたが、ステータスは魔法力が150ほどだ。

 それでいて、あれだけの魔物たちを封じ込めておけるのだからか優秀だ。


 そんなことを冷静に考えていたときだった。

 迷宮が白い渦へと姿を変えた。黒から白への変化。

 それは迷宮が攻略されたことの証明だ。


 ……俺の自宅の迷宮がおかしかったために、この攻略後の迷宮を見たのは久しぶりだ。

 やがて、中から大量の分身たちが外へと出てくる。


 遅れて分身たちから迷宮を攻略したという連絡が届いた。

 ……なるほどな。

 分身たちの合計は35体にまで減っていた。というのも、ボスモンスターとの戦闘で火力不足に陥ったために自爆による討伐を行ったらしい。


 それがちょうど十体ほどぶつかったところで、ボスモンスターを討伐したということだ。

 獲得したスキルは……【毒耐性】、【火魔法】の二つか。

 悪くはないが、思ったよりも報酬としては少ないか。


 一応、道中に手に入れた素材とボスモンスターから獲得した武器もあるな。

 ……武器は斧か。スキルも特についていないので、これは必要ないな。




―――――――――――

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