第118話



 その分身のステータスを確認する。


 カヤノ・ケイスケA レベル35 筋力:215 体力:35 速度:230 魔法力:35 器用:35 精神:35 運:35


 ……なるほど、これが分身のステータスか。

 ちょうど能力にして半分か。

 スキルなどはどうなのだろうか?

 俺が影に向けてスキルを使用できないかどうか問いかけてみると、影は【鼓舞】を俺にかけてきた。


 ……マジか。影から自分にバフスキルを使用できるのか。

 これは便利だ。これなら、ゴブリンリーダーのネックレスももう不要になるかもしれない。

 装備品のスキルはどうなのだろうか? 影に【雷迅】を使用してもらってみると、使用できた。

 これなら、Aランクの魔物相手もどうにかなるかもしれないな。


 次は、この影の数だ。

 一体何体まで出せるのか……。

 確認してみたところ、十体だ。


 ……ただ、さすがに十体も作ると俺の魔力もすっからかんだ。

 恐らく、一度の分身で魔力を10%程度消費するのだろう。ほぼゼロになったあたり、消費効率が変わらない限り全快の状態で十体を作るのが限界だ。


 軽い眩暈を感じた俺は、治療玉を使用して魔力を回復する。

 ……一回一万ゴールドなので、気楽には使えないな。


 ただ、分身からさらに分身を作ることはできる。

 そのたびに半分になっていくので……まあ、お察しレベルのステータスになってしまう。

 俺のステータスが1000くらいあれば、二回分身したところで250は確保できるので悪くないかもしれないな。


 ただ、分身するたびに魔力も分け与えるようなので、

 ついでに、【鼓舞】が重複するかどうかについても調べたが、しなかった。

 さすがにな。


「穴倉さん。魔物ってどのくらい確認されてますか?」

「……迷宮の中から今も出てきているからね。たぶんだけど百体は外に出ている可能性があるね」

「分かりました。迷宮入口にいるのも含めて、一掃させます」

「……え?」


 とはいえ、一万ゴールドで治療玉は買える。五分ほど時間をもらい、俺は分身を五十体用意した。

 持っていた治療玉はこれで終わりだが、今回の依頼達成で報酬も獲得できるからな。


「すみません。結界の中に分身たちを派遣するので、少し開けてもらっていいですか?」

「は、はい……!」


 俺が結界を張っていたものに声をかけ、分身たちが通れる道を用意してもらう。

 そこに気づいたゴブリンジェネラルが向かってきたが、それを踏みつぶして仕留める。

 素材を回収しながら俺は、分身たちに指示を出す。


「それじゃあ分身たち。二人一組でお互いに【鼓舞】を使用しながら魔物たちを一掃してきてくれ。それと、手に入れた素材はちゃんと回収しまってくれ……」


 ……インベントリって使えるのだろうか?

 俺の意図を理解したのか、分身たちは軽く頷いてから結界内へと入っていった。


 俺たちがいる場所から見える位置で早速戦闘が開始される。

 分身たちのステータスは筋力と速度だけとはいえ、200を超えている。

 そこに【鼓舞】、【雷迅】、【格闘術】があわされば――ゴブリンジェネラルくらいの相手なら苦戦は少ない。

 敵を一方的に仕留めていく。

 常に二体で行動させ、お互いに【鼓舞】を使用かけあう。

 さすがに二人がかりなら問題ないな。連携もばっちりだ。


 気になっていたインベントリの使用に関しても……問題ないな。

 倒した魔物の素材をちゃんと回収してくれている。

 おまけに、経験値も入るのか。ちょうどレベルアップした。

 ……これは滅茶苦茶便利だな。




―――――――――――

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