第42話

 月曜日になり、俺は街中を歩いていた。

 今頃澪奈は学校だろう。

 昨日は一日中迷宮でレベル上げをしていたので疲労が溜まっていないかだけは心配だった。

 学校の授業に支障が出ていないことを願うばかりだ。


 街中を歩いていた俺は目的だった装備屋を見つけたので中へと入る。

 入場には冒険者カードが必要なので、入口のセキュリティゲートに冒険者カードをかざす。

 すぐに認識され、俺は中へと踏み込んだ。

 

 ずらりと並ぶ大量の武器、防具、装飾品。

 ……これまでショップで買い物をしていた。

 それが俺がわざわざ店に来たのは確認したいことがあったからだ。


「……やっぱり、そうか」


 並ぶ武器の質の低さに、思わず頬がひきつった。

 ネットで事前に調べていたが、あまり店の装備はよくないものが多いな。


 ここに並ぶ商品は【鍛冶術】を持った冒険者が製作したものだろう。ただ、あまりスキルのランクが高くないのか、そこまで品質は良くない。


 ……腕のいい【鍛冶術】を持った冒険者ならば、かなりの代物が期待できるそうだが、そういった冒険者は何年先まで製作の予約が埋まっているため、俺たちが作ってもらうのは難しいだろう。


 店の品でももちろんいいものはあるが、この場に現品はない。画像だけが張り出されていて、声をかければ現物を見せてもらえるみたいだが、今回の目的はそれではない。


 店に並ぶ商品をざっと見ていく。

 ……十万円で……筋力+1か。

 スキルとかもついていないし、これはあまり使い勝手は良くないな。ランク自体は3の装備品か。斬れ味が良いのだろうか?


 いくつか見ていったが、やはり良い装備品はない。

 これなら、ショップで購入したほうがどう考えても得だ。

 逆に言えば、俺が持っている装備を売ろうとすれば、かなりの金額になるのではないだろうか?


 下手をすれば、今持っているロングソードを打ったお金をゴールドに変換してまた売却ということもできるかもしれない。


 そういう金策って、ゲームとかでよくあるよな。

 錬金ができる系のゲームだと、二つの村で集めた素材を錬金して売ると、素材分を含んでも儲けがでるから無限に金が増えていくみたいな……。


 リアルでやると税金も重くのしかかってくるが、それは来年の俺に任せればいい。

 俺たち冒険者は個人事業主の立場となるため、確定申告をした年に昨年の支払いを行っていく。


 だから、よく考えずに浪費して、来年に収入が下がると税金を払うこともできない、なんて状態になるのだ。


 来年の今頃は去年の俺死ね! とか思っているかもしれないな。

 とりあえず、今手元にあるロングソードの値段を確認してみようか。


 買取のレジへと向かい、俺はカバンの中に手を突っ込んでから、ロングソードを取り出す。

 もちろん、インベントリに入れていたのだが、こうすることで怪しまれずに取り出せる。

 その剣を、俺は店員へと差し出した。


「迷宮内の魔物がドロップしたのですが、この剣っていくらくらいになりますか?」


 俺は店員に確認しながら、ステータスを確認させてもらう。

 ……【鑑定】持ちか。

 【鑑定】があると、装備品の能力などを把握することができるはずだ。


 ただ、ステータスなどは見られないのだろう。

 わかっていれば、すでに世の中にステータスという概念が出回っているしな。


 このレジの女性もステータスポイントが100ほど余っている。もともとのステータスもそこそこ高いので、これらがきちんと割り振られていれば冒険者として戦うこともできるのかもしれない。

 それは、この人だけではなく、店内にいる冒険者たちもそうだ。


 ……ただ、色々な冒険者を見ているが、澪奈のように複数スキルを持っている人は見ていない。

 ステータス含め、澪奈って優秀なんだなぁ、と思う。


「こちらの剣、なかなかの切れ味ですね。十万円ほどになりますね」


 ……斬れ味のみの評価なのか?

 少し、質問してみよう。


「……そう、ですか。あの、追加効果などってわかりませんか?」

「追加効果……? スキルなどはついていませんね」

「……そうですか。例えばー筋力とか強化されたりってしませんかね?」


 少し踏み込んだ質問だ。

 女性は不思議そうに首を傾げていて、俺の意図していることは理解できていないように見える。


「え? 筋力、ですか? そういったスキルはついていないように思いますが……」

「……そうなんですね。迷宮で拾ったときになんだか力が沸き上がる気がしたので、残念です……」

「そうなんですね。スキルなどはないのですが、その人にあった装備というものはあるみたいなので……もしかしたらお客様に合っていたのかもしれませんね」


 その人にあった装備、というのはスキルにあった装備、あるいはきちんと【装備】できたものとかになるんだと思う。

 世の中の冒険者を見てみても、剣を持っているのに装備できていない人とかもいるからな。


 笑いながらレジの女性との会話を切り上げる。

 十万円。

 別に低い数字ではないし、ショップでの売値も半値になるのでこれは間違いではない。

 だが、女性はまったくステータス強化の効果に気づいていないようだったんだよな。


―――――――――

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


楽しんでいただけた方は☆☆☆やブクマをしていただけると励みになりますので、よろしくお願いいたします!


※☆は目次やこのページ下部の「☆で称える」から行ってください!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る