第41話

 スレを見てみると、澪奈のほうがスレッド数は多いが、いくつか俺のスレッドもあるようだった。

 ……そういえば、配信とかでも名前とか聞かれることとかあったよな。

 答えたことはなかったけど。

 

 俺は澪奈の視聴者を改めて確認する。

 ……確か、『ライダーズ』のときって男女比は男性98%くらいで、残りが女性、くらいだったよな?

 今は男性70%、女性30%くらいになっているな。


 『ライダーズ』のときはどちらかというと女性という部分を前面に押し出していたが、澪奈ソロになってからは、冒険者を前面に押し出している。

 それも多少は影響していると思うが。


 人気の女性冒険者って、同じ同性からも「かっこいい」とかで見られがちだもんな。


 だから、俺はまったく関係ないのかもしれないが、俺を少しでも気にかけている人がいるというのなら嬉しい限りだ。


 情報はこんなところか。

 ……澪奈のチャンネル、と思っていたが難しいな。

 澪奈のMeiQubeチャンネルを見てみると、登録者が今も増加し続けている。

 この調子なら、すぐにでも10万人は突破するだろう。


 まあでも、ファンにしろアンチにしろ、見てくれる人が増えるのはいいことだよな。

 そんなことを考えながら、ネットでの情報を集めていった。




 なぜ……?

 そんな疑問とともに俺は目を覚ました。

 時刻は午前六時。少し早いが、睡眠時間的には問題ない。


 俺はちらと視線を横に向け、澪奈が同じ布団に入っているのを確認してから視線を天井に戻す。


 そして、再び問う。

 ……なぜ?


 布団は二つ用意し、狭い部屋ではあるが端と端に並べ、多少寝相が悪くともぶつかることはない程度にはなっていた。

 ……そのはずなのだが、澪奈は俺の布団に入っていた。

 昨日は大丈夫だったのに、今日は一体何があったんだ?


 今も俺の体にぎゅっと抱き着くようにして眠っている。

 彼女の色々な柔らかいものが押しつけられるのだから、男としてはどうしてもその感触を無視することはできなかった。


 夜中にトイレにでも起きて布団を間違えてしまったのだろうか?

 昨日の俺はわりと疲れが溜まっていたようで、電気を消してから今まで爆睡状態だったので澪奈がいつから俺の布団へ侵入していたのかも分からない。


 ……一度、落ち着こう。深呼吸を何度か挟むとふわりと澪奈の香りが鼻孔をくすぐるものだから、余計に意識してしまう。

 深呼吸は逆効果だ。

 ひとまずこの状況から脱出することだけを考えよう。


 澪奈は俺の体に巻き付くように抱き着いている。

 俺が今仰向けで眠っていて、澪奈は俺の左腕に抱き着くような形だ。


 なぜか、俺は澪奈に腕枕をしていて、そこに澪奈の頭が乗っているし、左足には澪奈が足を絡めてきている。

 俺の体を抱きしめるように澪奈も腕を回していて、柔らかな彼女の体がぐいぐいと押し付けられている。

 脱出しようと動こうとすると、その感触を嫌でも味わうこととなり、俺はなかなか動けずにいた。


 ……これだと、俺が澪奈の感触を楽しむために体を動かしているように勘違いされてしまうかもしれない。

 もちろん、嫌という気持ちはないのだが、相手は高校生なのだ。

 こんな場面他人に見つかれば一発アウト。まして、澪奈は冒険者でMeiQuberだ。


 色々な意味でアウトなので、今すぐに脱出しようと思っていたのだが、中々これが難しい。

 今朝がわりと冷えていたからか、俺が離れようとするとその熱を逃さまいとばかりに澪奈が力を込めてくる。

 どうしようかと迷っていたとき、澪奈の頬がわずかに赤くなっていることに気づいた。


 ……この状況で顔が赤くなっている。

 発熱などを疑わないのであれば――。


「澪奈。起きてるな?」

「……」


 返事はない。

 俺は小さくため息をついてから、澪奈のほうを見る。


「寝てるなら、キスしてもバレないか?」

「……」

「顔赤くしながら口をすぼめるんじゃない!」


 俺がステータスに任せた力業で引きはがすと、澪奈がぱちりと目を開けた。


「あれ、マネージャー? おはよう」

「とぼけるな。起きてただろ?」

「いや、なにのことかワカラナイ。オハヨウ」


 ……あくまで、そういうことでいくようだ。

 澪奈はあくびを軽くしながら、当然のように自分の布団へと戻り、スマホをいじり始める。

 ……俺も今朝はやることがあったので、カーテンを開けながらパソコンを立ちあげる。


「……まったく。今日は一日レベル上げでいいんだよな?」

「うん。そうしよう」


 澪奈と今日の予定を確認してから、俺はパソコンに届いていたメールを確認していった。





―――――――――

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