第146話


 カトレアの物件探しはわりとすぐに決まった。

 というのも、カトレアが求める条件がそれほど多くないからだ。そういうわけで、いくつかの部屋がある大き目の物件を借り、さっそく荷物を運びこんでいる。

 ……といっても、必要な荷物はそれほど多くはない。近くの店で購入してきた家具たちくらいだ。


 テーブルや椅子、ベッドなどを購入したが、どれも組み立てられているものを購入し、インベントリにしまって持ってきた。カトレアに配置だけ任せているが、彼女のステータスならそれらを軽々と動かせるようなので、今は自由に任せている。


 俺は、設置した洗濯機が正しく動作するのを確認し、さらに冷蔵庫の電源も入れて確認する。……すべて、問題ないな。

 契約費込みで100万くらいはかかったが、分身たちに稼がせたお金で十分支払える金額だ。

 カトレアが借りた物件は家族で暮らす用の大きい部屋だ。

 部屋が3LDKで、そのうちの一つを俺は貸してもらうことにした。別に住むつもりはないが、作業部屋だ。

 パソコンなどを置いて、主に動画編集や仕事の対応はここで行おうと思っている。部屋に置いていたパソコンとテーブルをそのまま運び、椅子も置けば完成だ。……これで、あの部屋は体を休めるためだけに使えるからな。

 

 実は……こういう部屋を自由にカスタマイズするというのは憧れていた。今の俺の部屋ではどうやっても限界があったので、カトレアが家を借りることには実は賛成だったのだ。

 そんなことを考えていると、部屋がノックされる。


「ケースケ様。荷物の整理終わりましたが、確認して頂けますか?」

「了解」


 カトレアが言った通り、まずはリビングを見て回る。ソファとテーブル、それにテレビが置かれている。

 キッチンにも調理器具は揃っていて、少し大きめの冷蔵庫も設置されている。

 問題ないだろう。

 ……まあ、キッチンに立つカトレアが料理をできるかどうかという問題はあるが。

 俺もあまり料理は得意ではないが、調べてレシピ通りに調理するくらいはできる。

 カトレアの寝室などを見てみたが、きちんと布団も敷かれている。彼女が大き目のベッドがいいということでセミダブルにしたが、カトレアの体なら十分問題ないだろう。


「とりあえず、問題なさそうだな」

「ええ。二人で寝るとしたら、余裕はありませんが……大丈夫だと思いますね」


 聞かなかったことにして、俺は仕事部屋へと戻る。

 パソコンを立ち上げ、メールを見ていく。相変わらず、クラン募集が多いな……今度は俺たちに対してよりもカトレアへのものが増えている。


「カトレアはクランに興味はあるか?」

「クランですか。私は今のままケースケ様とレーナ様とともに冒険者として生活できればいいかな、と思っていますね」

「それなら、断っておくか。インタビューの記事とかはどうする?」

「あっ、そのくらいなら受けてみたいです。楽しそうですし」

「そうか。了解」


 あとは、こちらで話を聞いてみてからだな。

 そんな作業をしていると、澪奈の学校も終わったようだ。学校近くのAランク迷宮に入った澪奈が、そこから一度俺たちの合流したいという連絡が届いている。

 なので、この部屋に呼び込むことにした。

 インベントリから澪奈を連れ出すと、彼女はちらちらと周囲を眺めていた。


「あれ? どこここ?」

「私とケースケ様の部屋ですね」

「……どういうこと?」

「カトレアの部屋を借りる話があっただろ? それでカトレアの部屋を借りたってわけだ。一室だけ、俺の作業部屋として貸してもらってる」

「なるほど……」

「まだ部屋は余っていますし、レーナ様もご自由に使っていただいて大丈夫ですよ?」

「それは嬉しいかも」


 きらきらと目を輝かせる澪奈。

 ……まあ澪奈くらいの年頃の子だと一人暮らしに憧れるものだよな。

 一人暮らしは気楽だが、大変な部分もあるからな。どっちがいいかは正直分からないのが本音だ。


「マネージャー。メッセージで相談したいことがあるって言っていたけど、何? 式場についてとか?」

「今度、俺がステータスを見られることなんかを発表しようと思ってな。生放送よりは動画とかのほうがいいと思って、その撮影をしないかって話だ」

「ステータス、話すの?」

「ああ。前に澪奈も言ってくれたけど、相手の能力をはっきりさせるのにちょうどいいと思ってな。能力測定器を使ってもいいけど、結局Sランク以外の情報はわからないだろ? なら、俺が判定してそれを公開したほうがいいと思ってな」


 何より金かかるしな……。別にお金に困っているわけではないが、だからといって無駄遣いするわけにもいかない。


「分かった。それなら、さっそく動画を撮る必要があるけど、いつもと同じ服装というのも味気ないし……私、スーツでも着てこようかな」

「スーツ? なんでだ?」

「ほら、今回は解説動画みたいになるわけだし、先生の恰好とかがいいと思って」

「女教師、ですね。私も着てみたいです」

「それなら、さっそく服を用意しにいこう」

「行きましょう!」


 何やら、二人は妙な方向に力を入れようとしているようだ。

 ……まあ、別にいいけどさ。

 近くの店で二人分のスーツを購入。スーツといっても比較的安価なものだ。

 さらに、近くの店でホワイトボードを購入してから、俺たちは家へと戻り、撮影を開始した。



―――――――――――

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