第145話
「和風と洋風……ですか。ケースケ様はどちらがお好きですか?」
「俺は洋風かな」
ただし、値段が安ければどちらでもいいというのが本音である。
今いる物件も決め手は家賃だからな。
「では、ケースケ様に合わせましょうか」
「いや、俺じゃなくてカトレアが住みやすいほうがいいんじゃないか?」
「いえ、同居人の意見も尊重しないといけません」
「あれ、まだその設定続いていたの?」
「というよりも、私が一人で暮らすというのは危険、ではないでしょうか?」
「危険……」
……どう、だろうか?
でも確かにカトレアを一人にしておくと、好き勝手に動かれると困るという意見もあるかもしれない。
だからこそ、こうして紹介されている物件も、すべて俺たちの家から近い場所になっているのかも。
秋雨会長は口にこそ出していないが、カトレアを警戒しているのかもしれない。
……カトレアはそれを敏感に察していて、俺がなかなか気づかないからわざわざ教えてくれたのかもしれない。
でも。
カトレアは悪い子ではないと思っている。今はまだ監視される立場だとしても、せめて家くらいは自由に選んでもいいはずだ。
「……カトレア。そう卑下しなくても、自分の住みたい場所を選べばいいんじゃないか?」
「ですが……私、掃除も料理もできないんですよ?」
「……へ?」
「その私が一人で過ごすというのは……とても危険ではないでしょうか? それに、なにより女性の一人暮らしは危険だとも聞いています」
「最後に関しては問題ないと思う……むしろカトレアが本気出したら俺以外は誰も勝てる可能性もないから」
「それはつまり、私を無理やり押し倒すという意味と受け取っても?」
「どこからどうそうなるんだ。……そういえば、掃除も料理もできないのか。これまで、一応異世界で一人暮らしをしていたんだよな?」
「料理に関しては肉を焼いたくらいですかね。野菜に関しては家の庭にて栽培されていますので、そちらを活用していました」
「……そういえば、そうだな。野菜はちなみに、調理はしないのか?」
「野菜って丸かじりできるんですよ?」
「……そうか。そうだな」
確かに、もろもろを考えるとカトレアを一人暮らしさせるのはまずいかもしれない。
それなら、このまま澪奈の家に住まわせてもらうか? でも、それだと苦労をかけてしまう部分もあるよな。
……うーん、どうするか。
今とれる選択としては二つか。俺がカトレアと一緒に住むか、澪奈の家にこのままカトレアを預けるか、だな。
引っ越しも一つの手ではあるんだよな。最近、俺の家近くまでやってくるファンなのかアンチなのか分からない人たちもいるからな。
だから、多少離れた場所に引っ越しをするのはありだ。
どこに行こうとも、分身を使えば移動は簡単だしな。
カトレアが女性という点を除けば、別に問題もないか。
「それなら、慣れるまでは俺がフォローするっていう条件付きで、一人暮らしを始めてみるのはどうだ?」
「それはつまり、私と同居してくれるということですか?」
「まあ、俺はこの家も残したままで、寝泊りは基本こっちでするけどな」
カトレアの将来を考えると、日本の生活に慣れてもらう必要もあるし、一人暮らしは悪い選択ではないと思うんだよな。
「別に寝泊りも共にしていただいて大丈夫ですよ? 私、抱き枕としての性能が高いとレーナ様からの評価も高いんですよ?」
「普段、一緒に寝てたのか?」
「一緒に寝ることもありましたが、基本は別々でしたよ。ですが、一緒に寝たいというケースケ様の意見。尊重しましょう」
「一言も言ってないからな。……とりあえず、いくつか家を見て回ってみるか」
俺は早速担当者へと連絡を行い、カトレアの物件探しを始めていった。
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