第5話
今の時代、金属バットなどの身を守る武器は最低でも家に常備しているものだ。
いつ、どこで魔物に襲われるか分かったものじゃないからな。
これでも、高校時代は野球部でそこそこ活躍していたので、体は動くほうだ。
軽く素振りをしながら歩いていた俺はステータスに書かれている【商人】を確認する。
明らかに、戦闘職じゃないよな。
ゲームとかでいえば、例えば値切りのスキルとかそういった補助系のスキルが手に入りそうだけど……。
そんなことを考えながらステータスを見ていると、
「ショップか」
ステータス画面にショップという項目があった事に気付いた。
そこを開いてみると、ずらりと商品が現れた。
治療玉、毒消し玉などなど――。
項目を変えれば武器もある。
武器か。
武器の所持は冒険者登録を済ませる必要があるんだよな。
冒険者になるには一日程度の講習を受ける必要があって……貴重な休日をそれに割きたくはない。
よく見てみると、インベントリというのもある。どうやら、世にいう【アイテムボックス】的なものも【商人】の能力の一つらしい。
これは非常に便利で、注目度の高いスキルだ。
あれ? もしかしてこれだけで冒険者として生活できるか?
【アイテムボックス】は超レアスキルの一つであり、荷物持ちとしてではあるがどこの冒険者パーティーでも重宝されるだろう。
……いや。でも、【アイテムボックス】だけだと安くこき使われる可能性もあるか?
冒険者関連会社の募集要項でも、荷物持ちは一番安いからな……。
それに、俺には澪奈をMeiQuberにするという目標ができた。
……事務所へのあてつけ、ではないが……負けたくない気持ちもあるしな。
さらに能力を確認していく。
どうやら、ショップで何かを購入する場合はゴールドを支払う必要があるようだ。
ゴールドってどうやって入手するんだ?
……この売却って項目か?
購入の隣に売却の項目があるので、それを選択してみる。
今の手持ちのアイテムかインベントリのアイテムを売ることができるようだ。
俺の持っている金属バットは、例えば10000ゴールドになるようだ。
元々購入したときが20000円くらいだったよな? 中古だから安くなっているのか、ショップに反映した場合の値段がこうなのか。
俺は一度部屋に戻り、財布から現金を取り出して売却で確認してみる。
すると、1円=1ゴールドになった。
色々と検証してみたが、中古品だと値段が下がる傾向にあるようだ。
それでも、食べ終えた菓子パンの袋とかでも1ゴールドにはなる。
あれ? これ結構便利かも。
部屋にあったゴミをすべて売却し、さらに財布に入っていたお金もすべて入れてみると、合計21万ゴールドになった。
……わりと、部屋に無駄なものがあったんだな。
随分と部屋が広く感じて、ちょっぴり迷宮に感謝だ。
……いや、そもそも迷宮のせいで狭くなってるし、感謝は取り消そう。
購入する際は、検索条件をつけることで狙いの品を絞れるようだ。
21万ゴールドで買える武器を調べてみると、いくつか該当した。
剣、短剣、槍、斧などなど。
様々な武器があり、この20万ゴールドのランク帯の武器はどれも似たような効果だ。
一番使いやすそうな剣を購入する。
ロングソード ランク3
効果:【筋力+3】【速度+3】
これを身に着けても、ステータスに変化はない。
おかしいなと思っていると、メニュー画面に装備画面というものがあった。
装備はちゃんと装備しないとダメ、ってことか。
装備、と念じるとロングソードを装備することができた。
それによって、筋力と速度のステータスが4になる。
そうなると、一気に体が軽くなった気がした。
これはいいな。
金属バットはインベントリにしまい、迷宮へと下りて剣を振る。
まあ、たぶん素人丸出しの剣術だと思うが、一応動けている。
マネージャー業は体を使う部分もあったため、体力にはそれなりに自信があった。
とりあえず、今なら問題なく戦えそうだ。
試しに迷宮内を歩いていると、ゴブリンが現れた。
Gランク迷宮のゴブリンといえば、かなり最弱に近い魔物だ。
とはいえ、油断はできない。
俺がじっと観察していると、ステータスが表示された。
ゴブリンA レベル3 筋力:5 体力:3 速度:3 魔法力:1 器用:1 精神:1 運:1
ステータスポイント:0
スキル:なし
装備:【棍棒】
……なるほど。
これがゴブリンAのステータスか。
あれ? 案外高くないか?
少し不安に感じていると、ゴブリンがこちらに近づいてきた。
「ガアア!」
っと!
棍棒を振り下ろされ、俺は咄嗟に後退してかわす。
動きは、俺のほうが速いが……ステータスの差なんてほぼないか?
魔物と人間だと、ステータスの意味合いも変わってくるかもしれないし、勝っているといっても油断してはいけないだろう。
回避と同時に剣を振るってみると、攻撃は当たった。
ゴブリンを斬った部位がえぐれていたが、血はでない。かわりに霧のようなものが出ていた。
迷宮の魔物はこんな感じなのだ。すべての魔物が霧でできていて、傷を負ったときなどはそれが少し漏れ出る。
さらに、仕留めた場合は霧のように消滅し、魔石などをドロップする。
だから、冒険者をゲーム感覚で楽しんでいる人もいるそうだが……確かに、これは体感型のゲームみたいだ。
賭けているのが自分の命というのが少し不安だったが、それでもこれは……楽しいな。
子どものときに憧れた魔物との戦闘。それを今、俺はやっているんだ。
攻撃をかわし、隙を見つけて剣を振りぬくと、ゴブリンは断末魔をあげて倒れた。
そして、俺のレベルが上がった。
―――――――――――
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