第164話
……火魔法? 別にカトレアも使えないわけではないが、カトレアはまだ魔法を放っていない。
となると、魔法の発生地点へと視線を向けると……そちらには、先ほど助けた騎士の女性がいた。
リーン レベル60 筋力:832 体力:635 速度:856 魔法力:489 器用:654 精神:643 運:565
ステータスポイント:13
スキル:【騎士道:ランク15】【剣闘術:ランク14】【火魔法:ランク8】
装備:なし
騎士の女性――リーンのステータスをちらと見ると、やはり高ステータスだ。
スキルには【火魔法】もあったので、先ほどの魔法は彼女が生み出したものだとは思うが、ブラッディオーガに通用している様子はない。
それでも、ブラッディオーガの表情は険しい。
その理由は何となくではあるが予想できる。
先ほど、リーンがブラッディオーガを押さえていたときの力を取り戻していたとすれば、ブラッディオーガからすれば苦労する相手だからだろう。
ブラッディオーガが俺たちの様子を伺っている間に、俺は近づいてきたリーンに声をかける。
「旅の人、助けていただいてありがとうございます」
丁寧な口調と凛とした声を響かせたリーンは、すっと頭を下げる。
「それは気にしないでください。あまり時間もありませんので、単刀直入に話をします」
「なんでしょうか?」
こちらの返答に少し驚いた様子を見せたリーンは、しかしすぐに表情を引き締める。
……やはり俺の他者のステータスを確認する能力は、異世界人にも驚かれるもののようだ。
「私は他人のステータスを見る力を持っています。リーンさん。あなたは、先ほどブラッディオーガに並ぶほどまでステータスを引き上げていたようですが、それはもう一度使用可能ですか?」
……魔力が必要なのであれば、先ほど一緒に回復している。
だが、俺の問いかけにリーンは首を横に振った。
「……いえ、不可能です。私のスキルの一つですが、あれは再使用までの時間制限があります。まだ、使用できないようです。おおよそ再使用までに一時間ほどかかってしまいます」
「分かりました。それでは、下がっていてください」
「しかし……! 私は聖女の騎士として守っていただいてばかりでは――」
「ステータスが足りていなければ、どうしようもないというのはわかっていますよね? 私も、全力でやってどうなるか分からない状況です。ですので、万が一足手まといになられては困るんです」
……聖女の騎士、とリーンは言った。
おそらくだが、先ほど逃げていった一団の中に、聖女様かそれに準ずる存在がいたのではないかと考えられる。
他者を守る立場のリーンからすれば、一方的に助けられてばかりというのも思うところはあるのだろうが、彼女は冷静に頷いた。
「……それは、そうですね。申し訳ございません。何か、できることがあれば言ってください」
リーンはしかし、そんな自身のプライドを押し込み、すっと俺から離れるように後ずさる。
リーンは確かに優秀なステータスを持っている。それでも、ブラッディオーガとのステータス差は大きい。
この状況では、急所を狙った攻撃以外はまともに通ることはないだろう。
……それは、俺も同じなんだけどな。
速度に関しては負けていないが、それでも俺だって厳しいことには変わりない。
リーンが俺から離れていくところを観察していたブラッディオーガは、しかしまだリーンへの警戒を緩めていない。
隙を見つけてリーンを仕留めるため、というよりはまだリーンがあの力を出せる可能性を警戒しているのかもしれない。
……その間に、どれだけダメージを与えるか。
俺は、再び【雷迅】を使用し、ブラッディオーガへと向かった。
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