第20話
現在よく生配信を行う人でもDランク迷宮くらいまでだ。そんな人たちに並ぶほどの活躍ができれば、おのずと注目も集めるだろう。
「だから、ここに二百万持ってきた。確か、売っている商品で一番高額なのがほしい」
「それは、分かったけど……この前スキルブックが入荷されたからもしかしたら今後品ぞろえは増える可能性もあるぞ?」
「スキルブック?」
……この情報は澪奈には伝えていなかったな。
「ああ。新しいスキルを持っているゴブリンが出るんだけど、そいつ倒したら入荷したんだ。今後、もっと高レベルの魔物とか倒したら新しく入荷される可能性はある」
「そのときは、また買い替えればいい。今の装備品も半額くらいでは売れる?」
「……そうだな」
「それなら、新しくいいの入ったら今の売ればいい。RPGと一緒」
……確かに、そうだな。
最悪、澪奈の装備を俺が譲ってもらうとかもできる。
「分かった。それじゃあ、本当にこの金で装備を買っていいんだな?」
「うん」
澪奈の言葉に頷き、俺は彼女から二百万円を受け取り、ゴールドに変換する。
……貨幣ってそれぞれに番号が割り振られているが、こうしてショップで換金してしまって大丈夫なのだろうか? とかはちょっと考えていた。
購入した武器は、一つ100万ゴールドで合計二つ。
ロングソード ランク7
【筋力+9】【速度+9】
ハンドガン
【速度+9】【器用+9】
これで素材を換金して手に入れた端数のゴールドが残っているくらいだ。
澪奈がそれらを身に着けると、ステータスが一気に跳ね上がった。
……スキルの効果もあってか、すべての装備品の効果は二倍だからな。
……まだ残っていた五万ゴールドでハンドガンをもう一つ購入し、澪奈に装備させる。
装備したものは、一定の範囲にあればいいようだ。
俺のインベントリにしまっても、俺が近くにいればステータスの上昇効果は得られるようだ。
戦闘で使う予定のないロングソード一本とハンドガン一丁は俺のインベントリにしまっておいた。
澪奈のステータスをメモ帳に記録し、確認する。
神崎澪奈(かんざきれいな) レベル15 筋力:56 体力:8 速度:74 魔法力:15 器用:51 精神:9 運:9
ステータスポイント:0
スキル:【氷魔法:ランク3】【剣術:ランク1】【銃術:ランク1】
装備:【ロングソード 筋力+9 速度+9】【ハンドガン 速度+9 器用+9】【ハンドガン 器用+3】【ハンドガン 器用+3】
装備合計:筋力+9 速度+18 器用+15
ステータスポイントに関しては自動で割り振られてしまっているときもあったので記録していない。
それにしても、装備が整うとスキルの恩恵は大きいな。
……羨ましい。俺もスキルを手に入れられれば、澪奈のように強化できるのかもしれない。
ただ、スキルブック高いんだよなぁ……。【石投げ】のようなあまり使えなさそうなスキルでさえ100万ゴールドだ。
澪奈の【剣術】などはそれこそ数倍の価値があるだろう。
俺がスキルを手に入れるのは、いつの日になるのやら。
澪奈のステータス割り振りが終わったところで、俺は澪奈にある話を持ち掛ける。
「澪奈。アイテムを使ってみてもいいか?」
「え? 媚薬とか?」
何言ってんだこいつは。
「ダンジョンワープ玉だ」
「ダンジョンワープ玉? なにそれ?」
「迷宮内を自由に行き来できるアイテムなんだけど、それを使って十階層に移動して、ゴブリンリーダーが召喚するゴブリンを狩っていたほうが効率がいいと思ってな」
「お金大丈夫? 行きかえりで2万ゴールド? 二人で使ったら……4万ゴールド?」
「……ま、まあ。今後使うときにちゃんと使えるかどうかのお試しみたいなものだよ」
4万ゴールドは4万円と同価値なので、数字を言われると多少怯んでしまうが、使い方を覚えておいたほうがいいとは思っていた。
いざというときの緊急脱出にも使えるわけだしな。
ゴブリンリーダーのいる十階層までは、最短ルートで行けたとしても一時間以上かかってしまう。
……さすがにそれは、時間的に勿体ない。
ゴブリンリーダーの側近のゴブリンを倒し続けるだけで、ゴールドは5000ゴールドくらいは稼げるしな。
ダンジョンワープ玉をとりあえず二つ購入してみる。
インベントリから取り出すと丸い水晶玉だ。その水晶玉に「ダ」、という文字が書いてあるのがそこはかとなください、というか手作り感が凄い。
それから、それの使い方を調べてみる。
……どうやら使用しようと思えば使用できるようだ。
「これ、たぶん対象は一人だよな?」
「かもしれないけど、例えばくっついていたら同時に使えるとかない?」
「……あるかもな」
インベントリに入っていても、澪奈の装備効果は消えていない。
可能性はあるかもしれない。
澪奈が口にした瞬間、俺の腕にぎゅっと抱きついてくる。
「これなら、きっと大丈夫」
「だったらいいんだけどな」
僅かに頬を赤らめながらくっついてくる澪奈を一瞥してから、俺はダンジョンワープ玉を使用する。
ぱりんと水晶が割れ、俺の体が僅かな浮遊感に襲われる。
俺の眼前には、ゴブリンリーダーが出現した大広間がある。
そして、左腕には澪奈の温もりが残っていた。
「成功みたいだな」
「……う、うん」
……これで、一つの疑問が解消された。
ダンジョンワープ玉を使えば、1万ゴールドかかるが移動を短縮できる。
往復で2万ゴールドか……。
Gランク迷宮での使用はもったいないが、もう少し高ランクの迷宮ならありかもしれないな。
「……ねぇマネージャー」
「なんだ?」
「現役女子高生美少女MeiQuberがずっとくっついているのに、さっきから無反応は……な、なに?」
「いや、いつもわりとくっついてくるだろ? だから慣れたっていうか……」
そりゃあ最初の頃はドキリとさせられることはあったが、もう澪奈の対応にはすっかり慣れたものだ。
俺の言い方が気にくわなかったのが、澪奈が柔らかな物を押しつけるようにぎゅっと力をこめてくる。
「ほらほら。何か柔らかい感触ない?」
「あんまりそういうことをしないように」
やんわりと引きはがしながら答える。
……さすがに、意識してしまうものはあったが、それを悟られると澪奈のペースに巻き込まれるだけだ。
「澪奈。あのあたりまで歩くとゴブリンリーダーが出てくるんだ。それで、ゴブリンリーダーが仲間を四体呼ぶが……どうする? ゴブリンでの経験値稼ぎとゴブリンリーダーとの戦闘、どっちからやる?」
「とりあえず、ゴブリンリーダーと戦ってみたい」
「分かった。それじゃあ俺がゴブリンたちの相手をするな」
「うん」
澪奈もさすがにおふざけモードから真剣モードへと切り替わっている。
彼女が先に歩いていき、俺がその後ろについていった。
十階層の中央。俺が初めに伝えた場所に到着すると、霧が集まりゴブリンリーダーへと姿を変える。
一応、ゴブリンリーダーのステータスを確認してみたが、前回のとまったく同じ。
……やはり、こいつは他の魔物とは少し違うようだ。中ボスか、あるいは迷宮のボスか。
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