第170話
澪奈とカトレアにはなるべく普段通りの生活を送ってもらいつつ、俺は異世界へと分身を派遣させながら異世界の様子を確認していた。
魔の森で分身たちに経験値を稼いでもらいつつの様子見だ。
……気分的には、張り込みでもしている探偵のような感覚。
特に大きな変化もなく、そろそろ一度澪奈の配信でもした方がいいかもなぁとか考えちえた時だった。
分身たちが森の奥……まあ俺たちから見ての奥であり、あの異世界の人たちから入口のところだ。そこに近づいてきているのは、複数の武装した集団。
馬車の中から降り立ったのは、一人の女性――彼女の姿が、異様なまでに目を引く。長く流れる銀色の髪を揺らし、深い青色の瞳を持つ女性。
そして……その横にいたのは、以前助けたリーンという騎士だった。
「……本当にまた来たのか」
リーンという騎士は警戒している様子であったが、その隣にいた女性はどこか天真爛漫といった様子で周囲を眺めている。
……身にまとっている衣装は、白を基調にした優雅なドレスのようなもの。
肩口が開いたデザインで、露出を控えながらも女性らしい美しいスタイルをしているのは良く分かる。
状況証拠的にも、彼女が……聖女レシティアで間違いないのではないだろうか?
遠くから、彼女のステータスを確認する。
レシティア レベル20
筋力::120 体力:110 速度:65 魔法力:200 器用:130 精神:220 運:110
ステータスポイント: 12
スキル: 【聖魔法:ランク20】【聖域の結界:ランク20】
装備: 【聖衣のドレス】、【聖女のロッド】
……やはり、そうだ。ただ、思っていたよりもステータスが低い。
それは、リーンもそうだった。この前一緒にいた時と比べて、かなりステータスは低下している。
レシティアほどではないが、リーンのステータスも全体的にかなり低い。……数値としては、オール300から400の間程度だった。
……どういうことだろうか? カトレアを基準に考えると、別に異世界の人たちが弱いとかそういうことではないと思うが。
そんなことを考えていると、すぐにレシティアから光のようなものが放たれ、森全体に柔らかな光が覆っていく。
この前は、結界を張るためにこの森へと来ていたんだから、恐らくはその張り直しをしているんだろう。
……とりあえず、その作業が終わるまでは見守ろうか。
今出て行っちゃったら、たぶん驚かすだろうしね。
しばらく周囲の様子を伺っていると、森の入口にいた魔物が外へと出ようとしていた。
……ゴブリンだ。別にたいして強い魔物ではないのだが、リーンたちは警戒した様子で剣を構え、連携とともにゴブリンを仕留めていく。
ただ、その時にステータスを確認してみると……全員のステータスが二倍か三倍くらいまで跳ね上がっていた。
「……スキルか何かで、ステータスを強化しているのか?」
……バフ魔法でステータスを強化している、と言われれば納得はできる。
ただ、それにしたって滅茶苦茶強力なスキルだとは思うけど。
とにかく、一時的とはいえ全員がオール800くらいのステータスにまで跳ね上がっている。
ただ、戦った後は全員がかなり疲労しているようで、別の騎士が入れ替わるようにしてレシティアの警護を行っている。
一時的に滅茶苦茶強化するようなスキルを持っているんだろうな。そして、その疲労の溜まり方が凄まじいと。
そうしてしばらく見守りつつ、俺も魔の森の中層付近で魔物を狩り続けていた。
「今回は、あまり魔物が出現しませんでしたね」
「……ですね。毎回、このくらいでしたら良かったのですけれど」
リーンとレシティアはふぅと軽く息を吐いていた。
……結界の張り直しが終わったようだ。
さてと……問題はここからである。
……俺、会いに行っても大丈夫かな?
リーンは前回あのように言っていたけど、あくまで異世界の社交辞令的なものなのかもしれないし……。
もしこれで出て行って、いきなり攻撃されたらどうしようか。
そんな不安はある。
「それで、リーン。この前助けてくれた方はどちらにいるのか……分かりますか?」
「……恐らくですが、魔の森の奥にいるかと」
「そうですか。結界で魔物たちも弱体化していると思いますし、大丈夫でしょうね。行ってみましょうか」
「……れ、レシティア様はこちらでお待ちを」
「いえ、私も行きます。……楽しそうですから!」
目をキラキラと輝かせているレシティア。
あっ、なんか……カトレアや澪奈と同じタイプの匂いがするぞ?
リーンが何やら疲れた様子である。……うんうん、俺も同じような立場なので気持ちは良く分かる。
関わったら面倒そうだけど……このまま放置するというのもなぁ。
せっかくの異世界人との交流だ。今後の澪奈の配信にも繋がる何かがあるかもしれない。
それと、レシティアの言っていたことが気になり、魔の森内部の魔物たちのステータスを確認する。
……レシティアが言っていた通り、本当に弱体化している。
オール200程度。……まあ、高いっちゃ高いほうだけど、全然問題なく戦えるくらいだ。
となると、もらえる経験値も少なくなってしまったのかもしれない……。残念だ。
とりあえず、魔の森へと入ってこようとしてきた彼女たちへと、俺は向かっていくことにした。
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新作書きましたので読んで頂けると嬉しいです。
世界最弱のSランク探索者として非難されていた俺、実は世界最強の探索者
ネットアイドルの配信を手伝っていたマネージャーの俺、なぜかバズってしまう 木嶋隆太 @nakajinn
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