第85話


「とりあえず、心配しないで。いざって時はマネージャーも戦いに参加するから。そういうわけで、れっつごー」

〈遊びにでも行くかのようなテンションで草〉

〈完全にテンションが迷宮に行くものじゃないんだよなぁ〉


 澪奈がガッツポーズを作り、迷宮へと入っていく。

 俺もそのあとを追い、中へと入る。


〈この迷宮、やっぱり渋谷だよな?〉

〈……迷宮って地球の神様が作っているとか言われていたけど、だとしたらこれって悪趣味だよな〉

〈俺、ここ毎日出勤のとき歩いているからマジで嫌だわ〉

〈もしもリアルでこうなったら本当に困るわな〉


 悲観する声がいくつか増えていた。

 気づけば視聴者は50000人を超えていて、今もぞくぞくと増えている。

 新しい迷宮でおまけに現実がモデルになっていることもあり、かなり注目を集めているな。 

 ていうか、コメント欄の冒険者通りのやり取りを見るに、完全にここは迷宮攻略チャンネルとしての扱いだ。


 しばらく澪奈がコメントに返事をしながら歩いていき、ぴたりとその足が止まる。


「いました。ここに出現する魔物です」


 澪奈が指さした方向には、ウォーリアリザードマンがいる。


〈リザードマンか。ってことはCランクか?〉

〈いや、こいつめっちゃ装備してるタイプだ! BかAランク迷宮でしか出ないぞ!〉

〈剣だけなら、B、鎧までつけてるからこいつはたぶんAで間違いない〉

〈Aランクの魔物とソロで戦うとか不可能だろ! 澪奈ちゃん! 逃げて!〉


 ……そう心配するコメント欄を無視するように、澪奈が剣とハンドガンを構えて攻撃を開始する。

 俺も澪奈に【鼓舞】を使用し、援護する。

 今は【速度のネックレス】を外し、【ゴブリンリーダーの指輪】を装備している。


 多少ステータスは下がるが、その分くらいなら【雷迅】で補えるからな。

 澪奈が軽やかに動き、ウォーリアリザードマンを捌いていく。以前よりもステータスも上がっているので、その戦闘に危険性はない。


 初めに心配していたコメント欄は、気づけば畏怖のコメントばかりが増えていく。


〈澪奈ちゃん、この前よりも成長してないか?〉

〈Aランクの魔物ってことはキングワーウルフとそう変わらないくらいの能力だろ? なのに、これって……澪奈ちゃんの成長速度やっぱり異常じゃないか?〉

〈これ、普通にSランク冒険者くらいあるよな?〉

〈Cute!〉

〈キュートで片づけられない化け物なんだよなぁ……〉


 ……澪奈の戦闘に、海外からのコメントも増えている。

 ただ、海外の人も畏怖するようなコメントがあり、澪奈の能力の高さを物語っている。

 ……今のSランク冒険者ってどのくらいなんだろうな?

 もしも会う機会があれば、その人のステータスを見てみたいものだ。


〈マネージャーが戦っている場面も見てみたいです〉

〈マネージャーはさすがに厳しいのでは? 前回のキングワーウルフ戦でも援護に徹してたし〉


 そういう声が多いようだ。

 それに対して、澪奈が微笑とともに話し出す。


「それが、前回キングワーウルフがドロップしたアクセサリー覚えてる?」

〈そういえば、そんなのもあったな〉

〈あの場面思い出すと、マネージャーが迫真の顔でスマホを回収している姿が思い出されるな〉

〈マネージャーの凛々しい顔よかったわぁ〉

〈あの場面、素材として配布されてたぞ?〉

〈マネージャーが必死にヘッドスライディングする動画とか作られてて面白かったな」


 え? 何それ?

 俺はまったく知らなかったのだが、澪奈が笑いだす。


「私も学校の友人に言われていくつか見た。まあ、あんまり変なことしないなら自由に使って大丈夫。ね、マネージャー?」

「いや、その動画自体知らないんですけど」

「オッケーだって」

「……うん、まあ、いいですはい」

〈草〉

〈相変わらずの澪奈ちゃんのゴリ押しに弱いマネージャーw〉


「とにかく、あのときに回収したアクセサリーがキングワーウルフが使っていたスキルが付いてたから、マネージャーもそれを使えるようになったって感じ」

〈マジで?〉

〈装備との相性が良かったってことか〉


 ……装備品に関しては、装備との相性という言葉がある。

 自分が手にした装備品も相性が悪いと効果を発揮しない、とか。


―――――――――――

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