第34話


 仕掛けるのは澪奈からだ。彼女のハンドガンが攻撃の合図だ。

 俺は近くの木の裏に隠れ、様子を伺う。

 澪奈がワーウルフCの背後から、両手に持ったハンドガンの銃口を向ける。


「アイスショット!」


 先制攻撃として、氷の玉を放つ。同時に、ハンドガンの引き金を引き、銃撃の雨を浴びせる。

 ワーウルフは、恐らくこちらの魔力か何かで攻撃を察知したのだろう。振り返り、アイスショットをかわした。

 ……速いな。ただ、目で追えないほどではない。


 ゴブリンリーダーと俺たちが相手をしたときはステータスの差がさらに開いていたが、俺とワーウルフくらいの差なら問題ないか。


 澪奈が銃撃を浴びせながら俺が隠れているほうへと足を近づける。ワーウルフは左右に動き、銃弾をかわしていく。

 すべてをかわされているわけではないが、ワーウルフの高耐久のステータスからか、ゴブリンのように銃弾だけで仕留めるまではいかない。


 ワーウルフと澪奈の距離が縮まったとき。俺は木の陰から飛び出した。

 澪奈が装備中の剣を握りしめ、振り下ろす。

 俺の不意打ちの一閃に、ワーウルフが反応したがまさに澪奈に攻撃を仕掛けようとしたタイミングだったので、俺の剣はもろにワーウルフの腕を切りつけた。

 ただ、斬れ味が足りない。浅く斬りつける程度。

 連続して剣を振りぬくが、かわされる。


 そして――


「ガア!」


 ワーウルフが吠えるようにして蹴りを放ってくる。

 まずい、かわしきれない。

 俺は剣の腹で蹴りを受けたが、思い切り弾き飛ばされる。

 ……なんていう、力だ。ただ、俺は澪奈から渡されていたハンドガンを持ち、銃弾を放つ。

 俺の銃弾はまったくもって当たらなかったが、銃弾に気を取られていたワーウルフに澪奈が背後から近づき、剣を振り下ろした。


「……グ」


 ワーウルフの片足を斬りつけ、怯ませる。

 ただ、ワーウルフは気合を入れるように叫ぶと、その傷を負った足を振り回した。

 澪奈はそれをかわしながら、左手のハンドガンでワーウルフの目を射抜いた。

 足を傷つけられていたワーウルフはそれをかわせない。


 的確に両目を射抜いた澪奈に負けじと、俺も剣を持ってワーウルフの背後から突っ込み、その胸を貫いた。

 ワーウルフも、さすがにその攻撃には耐えきれず膝から崩れるようにして、倒れた。

 魔石と素材のドロップを確認した俺は、僅かな疲労を感じながらその場に腰を下ろした。


「……強いな」

「うん。マネージャー、怪我してない?」

「ああ、大丈夫だ。ちょっと擦りむいたくらいだな」

「わかった。舐める」

「民間療法に頼らなくても、最悪治療玉使うから」


 今の傷くらいなら1000ゴールドのものでも大丈夫だろう。

 顔を近づけてきた澪奈を押し返しながら、彼女の状態を確かめる。

 攻撃は一度も食らっていないように見えたが、心配はある。


「澪奈は怪我してないな?」

「うん。大丈夫。ステータスポイントはある? もう少し、速度を上げたい」

「……そうだな」


 今回の戦闘で分かったが、速度がもっとも重要なステータスかもしれない。

 筋力がないと攻撃が通りにくいのは確かだが、速度を上げないとそもそも攻撃が当たらない。

 逃げるにしても、しかし回り込まれてしまった! となりやすいだろう。


「そういえば、【格闘術】はどうだった?」

「……ショップに、追加されてるな」

「金額は?」

「300万ゴールドだ」

「……今、いくらだっけ?」

「24万ゴールドくらいだな」

「まだ、先は長い……ワーウルフの魔石はどのくらいで売れる?」

「魔石は70ゴールドだな。素材も50ゴールドだ」

「ってことは、一体あたり100ゴールドくらいで計算してもよさそう?」

「だな。狩り続ければ、そのうちどうにかなると思うな」

「それじゃあ、とりあえずそこまで頑張ろう


 俺のレベルはあがっていたし、澪奈のステータスポイントも1だが増えている。

 お互い、しばらくはワーウルフを上回るくらいの速度になるまで、速度に割り振ろうと考え、迷宮を歩いて行った。


 しばらく、二人でワーウルフ狩りを行っていく。

 探索しようにも、ワーウルフ以上の魔物が出てきたらどうしようもないからだ。

 ワーウルフ自体はわりと見つかった。

 ただ、ワーウルフAやBではないので、恐らくこの迷宮のどこかをさまよっているのだろう。




―――――――――

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