第35話
そうして、歩いていくと草原のエリアから奥の荒野エリアが見えてきた。
「……とりあえず、この辺までにしておこうか。どんな魔物がいるか分からないし」
「うん。ワーウルフよりも速いのがいたら危険」
この迷宮内は、ある程度魔物ごとに制限はあるのかもしれない、恐らく自由に行き来できる。
例えば、普通の迷宮なら二階層から一階層に逃げれば問題ないが、ここだとどこまでも追いかけてくる可能性がある。
万が一の可能性があるので、そこから先には進まない。
もう一つ、調べておきたいことがある。
ダンジョンワープ玉の効果だ。
お金はもったいないが、どのように移動できるのかは知っておきたい。
これまでは階層ごとに移動していたのだが、果たしてここではどうなるのか?
澪奈が俺の肩をもむようにして触れてきたので、そこでダンジョンワープ玉を使用してみる。
手につかんで使用してみようとすると……移動先にゲート近くが思い浮かんだ。
……もしかして、そこに戻れるのだろうか?
もったいないが、使用してみる。
ダンジョンワープ玉の発動はおおよそ一分ほどかかる。ダンジョンワープ玉にヒビが入っていき、最後に砕け散って俺たちの体が入口ゲート近くへとワープした。
「……こんな感じか」
「ワープまでに一分くらいかかるから、本当の緊急時には間に合わない?」
「そうだな。どっかに隠れてやり過ごせるなら話は別だけど、緊急脱出用として過信しないほうがいいな」
ダンジョンワープ玉で戻れる地点は、もしかしたら何か所かあるのかもしれない。
チェックポイントのようなものがあり、そこに到達する必要がある……とか?。
可能性としては荒野エリアの入り口あたりだが、やはり踏み込むのはもう少し成長してからだな。
入口から再び散策して、ワーウルフを仕留めていく。レベルは25から28くらいまでだ。
そこまでステータスに大きな差がないし、俺たちも成長しているので二人がかりなら問題ない。
そうして、ひたすらワーウルフを仕留めながら散策していくと、
「……マネージャー。あっちの森で何か光った」
「本当か? 新しい魔物じゃないだろうな……」
俺たちは大きめの岩の後ろに隠れて、ひょこりと顔を出して様子を伺う。
澪奈がくっついてくる。隠れるためにここまで近づく必要はあるだろうか? という気持ちはあったが、仕方ない。
森から出てきたのは……ワーウルフだ。
「ワーウルフC? もう一周したのか」
「たぶん。新しい個体が出てきた……とか?」
「……ちょっと、光について調べてみようか」
「うん」
ワーウルフCをさくっと倒し、それから光を見たという森を見て回る。
すると、地面の土に描かれた魔法陣を発見した。
今はまったく光っていない。白い文字で記入された幾何学模様は、なんと書いてあるか分からない。少なくとも、誰かに伝えるメッセージ、などではないのだろう。
地面をこするようにしても、その魔法陣が消えることはない。
一体何なのだろうか。
しばらく眺めていると、再び魔法陣が光を放つ。俺たちはすぐ近くの茂みに隠れ、そして――。
「グウ」
ワーウルフが現れた。その数は二体。二体は特に意思疎通をとることなく、別々の方向へと歩き出す。
ワーウルフたちが去っていったところで、俺たちは顔を見合わせる。
「もしかして、魔物の出現地点とかか?」
「かも、しれない」
すでにワーウルフは離れていたが、自然にお互い小声で話す。
……魔物の出現地点と分かれば、ここで魔物狩りをするのが効率いいかもしれない。
ただ、懸念点もある。
「……一度に二体出ることもあるんだな」
「さすがに、一度に二体相手するのは厳しい」
澪奈のいう通り、まだ一人では余裕をもって戦えるほどではない。
一体だけなら、二人がかりで挑めば余裕なんだけどなぁ。
「だよな……。魔法陣を狙ってレベル上げするのはいいけど。同時に三体とか出てきたら死ぬぞ……」
「この木々から少し離れた場所で狩りをするのがいいかも」
「だな」
意見が一致したところで、再び魔法陣が光を放った。
スマホを見てみると、再出現までは二分くらいということがわかる。
今度は一体だ。
背後から奇襲して仕留める。
倒した俺たちだったが、毎度このようにうまくいくとも思っていないので、速やかに近場に姿を隠して、一体ずつ確実に倒していった。
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