第36話
そうして、休憩を挟みながら昼までレベル上げをしていた俺たちは、一度迷宮を出て昼休憩にする。
澪奈が昨日の夕飯に作ってくれたステーキもまだ残っていたので、俺たちはそれを昼飯に迷宮についての情報をまとめていく。
「魔物の出現方法自体は、他の迷宮と変わらないみたい……だね」
「そうだな」
他の迷宮だって、あくまで予測ではあるが、一定の範囲で冒険者を感知して出現するというものだ。
出現する時間だって、迷宮やその階層によってまちまちだがおおよそ決まっている。
「あの魔法陣から魔物が出てきてくれるのは楽。経験値稼ぎの効率はいい」
「そうだな」
ワーウルフの出現間隔はだいたい二分に一度。
一回に一体から三体ほど出てくる。
まとめると、こんなところか。
「配信は、とりあえずワーウルフとの戦闘と草原エリアの探索って感じの内容でいいんじゃないか?」
「それでいいと思う。……それまでに、もうちょっとレベルを上げておきたい」
「またご飯食べたら、迷宮に向かおうか」
「うん」
俺たちのレベルもゴブリンたちを倒していたときよりもハイペースで上がっているので、相手が格上なのは明らかだ。
それでも、まだ圧倒できるほどではないので、澪奈が一人で戦闘を行う場合は不安が残る。
といっても、カメラマンとして俺ができることは【鼓舞】での強化くらいだからな。
一応、ハンドガンで援護できるが、俺の銃弾は明らかにまっすぐ飛ばないのだ。
たぶん、スキルによる差があるんだと思う。
澪奈の吸い込まれるようにワーウルフの目を射抜いたあの銃撃は、動画にされているなら見返したいくらいだ。
食事を終えたところで、澪奈が軽く背筋を伸ばす。
澪奈の表情を見ればわかる。レベル上げを楽しんでいるようだ。
それは俺も同じだ。
準備を終えた俺たちは、再びレベル上げへと向かった。
午後八時。
配信の開始時間となり、俺はいつものように開始のボタンをタッチした。
「こんばんわ、皆さん。一日ぶりです。澪奈です。あっ、配信の開始ツイートしますね」
配信を開始するとともに、澪奈が頭を下げ、スマホを操作する。
そうしている間にも、それまで待機していた人たちが一斉にコメントを打ち始める。
〈ばんわー ¥1000〉
〈澪奈ちゃん、今日も頑張って! ¥2000〉
〈マネージャーさん、頑張って! ¥1000〉
〈新しい迷宮楽しみです! ¥10000〉
〈よかったら飲み物代にでも ¥5000〉
〈切り抜きから来ました。今日の攻略楽しみです〉
〈切り抜きですけど、再生数10万再生突破おめでとうございます〉
……いきなり、凄い飛んでくるな。
「皆、ありがとう。スーパーチャットは最後にまとめて読み上げますね。っと、今日は新しい迷宮を攻略していくんだけど……ほとんど見ていくって感じになりそうです。って……もう凄い人集まってる」
澪奈がそういった通り、配信の人数はすでに2000人を超えている。
まあ俺たちが迷宮攻略している間に澪奈の登録者数が三万人を超えていたからな。
澪奈のファンが増えているのも確かだと思うが、昨日の一件で冒険者関係のほうで注目を集めたのが強い。
ていうか、『ライダーズ』で活動していたときの人数をあっという間に超えてしまったのだから、驚きだ。
逆に言うと、今までの二年間何をしていたんだと……いう気持ちはあるが、そもそもこの自宅に迷宮が出現したという環境が追い風になっている可能性もある。
「まず、初めにですけどマネージャーに用意してもらっていた私のホームページができあがりました。そちらにも記載してもらいましたが、切り抜きでの収益に関してです。切り抜き動画に関しては私の元の動画、チャンネルのリンクを概要欄に記載してくだされば100%もらっても構いません。ただ、それもいずれは変わるかもしれませんので、また変わったら告知させていただきますので、ご理解ください。切り抜いた元動画のリンクさえ乗せてくれれば、どこで拡散していただいても大丈夫です」
澪奈がピースを作ると、コメント欄が伸びていく。
そういえば、澪奈ちゃんのピースシーン集とかもまとめられてたな……。
〈ありがとうございます!〉
〈切り抜きしまくって宣伝します!〉
〈いずれ変わるのはしゃーなし〉
〈切り抜き待機。見せ場期待してます!〉
……まあ、これは宣伝費用のようなものだ。
俺たちが自力で広告費を出すよりは、こちらのほうが手間がかからないからな。
要は外注みたいなものだ。
「とりあえず、権利関係の話はそれで終わり。それじゃあ、さっそく迷宮の行楽に行こう」
澪奈がガッツポーズを振り上げ、それからちらとこちらを見てくる。
―――――――――
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
楽しんでいただけた方は☆☆☆やブクマをしていただけると励みになりますので、よろしくお願いいたします!
※☆は目次やこのページ下部の「☆で称える」から行ってください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます