ネットアイドルの配信を手伝っていたマネージャーの俺、なぜかバズってしまう

第123話

「そうだった。今日は色々と今後についてと頂いていた質問について答えていこうと思ってたんでした。そういうわけで、まずは今後の生放送の方針についてですが……とりあえずは迷宮攻略についてです」

〈もうマネージャーの家に迷宮なくなっちゃったもんなぁ〉

〈でも、逆にいえばマネージャーも引っ越せるんじゃない？〉

〈確かに。もうちょっと大きな部屋に引っ越してもいいのでは？〉

「マネージャー、そこはどうする？」

「そうですねぇ。でも別にこの部屋で困ってませんしね。あっ、でも最近勝手に色々荷物を送られてくるのは少し困っているんですよね……」

　日用品などを送ってくれる人はいいのだが、わりと変なものも送られてくるのでそこは困っている。

　もらったもので、明らかにヤバそうなものはすべてショップに買い取ってもらっているが。

「だそうです。引っ越しについてはまたあとで考えるとして、迷宮攻略に関しては……マネージャー、今ギルド協会とも話してるんだっけ？」

「そうですね。大手クランのように、個別に依頼を出すことはあるかもしれない、と。あとは、新人冒険者の面倒を見てもらいたいみたいな依頼もたまにあるかもですね」

〈新人冒険者！〉

〈いいなぁ……マネージャーと澪奈ちゃんに見てもらうとか〉

〈もういっそのこと二人がクランを作ったらいいんじゃないの？〉

〈やっぱクラン作ってほしいよなぁ。Ｓランク二人のクランとか話題性も凄そうだし〉

　クランのコメントを見ていた澪奈が、ぽつりと漏らした。

「クランに関しては、今のところ作る予定はない……かな？　さすがにクランを作るってなるともっと忙しくなるし、私一応受験生だし。今後の配信の形式は、依頼された迷宮攻略になると思うけど、迷宮のランクに関してはまちまちになるから、そこだけご了承ください、って感じ？」

「そうですね。どちらかというと迷宮攻略を行うときに気を付けること、みたいな感じのマナー動画みたいになるかもしれませんね」

　……といっても、俺たちも別に普通の迷宮攻略に詳しいわけではないんだけど。

　コメント欄を見るが、別に悲観的な意見はなさそうだ。

「というわけで、今後も戦闘をしないわけじゃないから安心して。それと……皆さんから一番多かった質問についてです」

〈もしかしてあの女性のことですか！？〉

〈あのエルフ美女は何者なんですか！？　目を覚ましたんですか！？〉

　……澪奈がその言葉を口にした瞬間、コメント欄の盛り上がりが異常になった。

　まあ、そりゃあそうだよな。

「まだ、目を覚ましてなくて、はっきりとしたことは分かっていません。そちらに関しても、ギルド協会と話していて、今後分かれば色々と発表されるかも？　くらいです。現状、あの人が目を覚まさない限り何も分からない」

　……あくまで、いえるのここまでだ。

　一応、今日協会の人間がカトレアの様子を見に来て、ステータスの調査をしていき、Ｓランク冒険者を遥かに超える力を持っていることは確認しているのだが、それはまだ未公開の情報だ。

〈なんだぁ……〉

〈マジで異世界人だったらどうなるんだろうな？〉

〈強いのかな？　そもそも、言葉が通じるのかな？〉

〈マジの異世界人だったら大事件なんだよなぁ……まあ、何も面倒なことが起きなければいいんだけど〉

　……本当にそうなんだよな。

「もらっていた質問はそんな感じ。あとは、ちょこちょこ昨日の迷宮の戦いでも振り替えっていこうと思う。私も、周囲を警戒したままで全然コメントとか見る余裕なかったし」

〈それはいいですね〉

〈ぜひマネージャーさんに戦いの解説をしてほしいです〉

「だって、マネージャー。がんば」

「……まあ、できる範囲で伝えますよ」

　そういうわけで、俺たちは昨日の生放送の戦闘を映しながら、振り返っていき、その日の生放送を終えた。

　次の日。

　俺はギルド協会へと来ていた。

　秋雨会長に呼ばれていたからだ。前回と同じように裏口から中へと入り、会議室へと案内される。

「お待ちしていました、茅野さん」

「秋雨会長、おはようございます」

　軽く挨拶をかわしてから、俺たちは向かい合うように座る。

　すぐに、今日俺がここに呼ばれた理由が切り出される。

「昨日ですが……うちの人間を手配して、エルフの女性の能力について調べてもらったのは聞いていますよね？」

「ええ、聞きました。確かＳランク冒険者を超えるほどの力を持っているとか」

「ええ。茅野さんと同じく、検査機が破損しそうになったので、検査を中断しました……。そして……国は、彼女に対して強い警戒をしております」

「そうですか」

　それはまあ、当然のことだろう。

　エルフの女性が何者かは分かっていないだろうし、Ｓランク冒険者に匹敵する力を有しているのなら、調べ自体はすぐにつくだろう。

　他国の冒険者を含めて調査し、その中に該当しないとなれば……一体誰なのだという話になる。

　ネットや昨日の生放送でも話があったように、異世界人という可能性だってある。

　本当に異世界人というのなら、この世界の常識も通用しない相手の可能性もある。

「……すでに、茅野さんもあのエルフの女性もどちらも能力が高すぎて、どちらが強いか分かりません。そのエルフの女性が、敵意を持って攻撃してきた場合、どうなるか」

「まあ、大きな被害が出ますよね」

「ええ、そういうことです。そして、ギルド協会が伝えられた内容としては……彼女の管理を茅野さんにお願いしたい、ということです」

「俺ですか？」

　……なるほどな。

　つまり、ギルド協会――それらを管理している最終的なトップは日本政府なわけで、つまり政府は俺に彼女の責任を押しつけてこようとしているわけだ。

　日本政府は彼女がもたらす悪影響の可能性を恐れ、俺に責任を押し付けようとしているわけだ。

　……まあ、未知の存在に対する対応としてはどちらが正解か分からないが、俺としては好都合だ。

―――――――――――

ここまで読んでくださり、ありがとうございます！

『楽しかった！』　『続きが気になる！』という方は【☆☆☆】や【ブクマ】をしていただけると嬉しいです！

ランキングに影響があり、作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします！