第83話



 装備品に関しては、ドロップとかしてくれるのだろうか?

 新しい要素が様々だが、まずはこの異常なまでに高いステータスを相手に、俺たちがどこまで戦えるかだな。


「澪奈、キングワーウルフのときと同じように戦うけど、俺と澪奈の立場を入れ替えるってことでいいか?」

「うん、大丈夫」


 今の俺は【雷迅】を持っている。俺がスキルを発動して前回の澪奈のようにタンクとして立ち回るほうがいいだろう。

 俺が【雷迅】を発動し、ウォーリアリザードマンへと接近する。


 バチバチと俺の体に稲光が現れるが、俺の体自体に電流が流れているわけではない。

 特に、俺の体に負荷がかかるわけではないようだな。


 こちらに気づいたウォーリアリザードマンが剣を構えるが、その背後をとる。

 ……遅い。

 いや、俺の今のステータスが高すぎるのか。

 自分のステータスを確認してみると、速度が300を超えていた。


 やはり、30%強化で小数点以下は切り捨てなんだろう。

 ウォーリアリザードマンの背後から拳を放つ。仕留めるためではなく、内臓を揺らす一撃だ。

 硬いな。鎧がない部分もここまで硬いのは、ステータスが高いからだろうか。


 ウォーリアリザードマンが顔を顰めながら、剣を振りぬいてくる。

 状況を観察しながら、拳を振るっていく。

 隙があれば顎などを狙い、よろめけば連撃を与えていく。

 俺は速度を活かし、ウォーリアリザードマンは自慢の体力を活かして反撃を仕掛けてくる。


 しかし、俺の一撃一撃は確実にウォーリアリザードマンの内部を崩していく。

 澪奈の銃弾も確実に削っていく。


 ……どこをどう攻撃すれば、ウォーリアリザードマンを崩せるかが目に見える。

 拳を振りぬき、ウォーリアリザードマンが膝をついた。脳が相当揺れたのだろう。

 それでも、自慢の耐久力で立ち上がろうとしたそこへ、澪奈の剣が降りぬかれた。


 首へと深くめりこみ、ウォーリアリザードマンは倒れた。


「ふぅ……戦闘は問題なさそうだったな」

「うん。私たちにかかればこんなもの」

「そうだな」

「でも、マネージャーの体ずっとびりびりしてるけど……これってダメージはないの?」

「ああ、大丈夫だ」

「触ってみてもいい?」

「ああ」


 俺が腕を向けると、澪奈が触ってくる。

 ぺたぺたと触ってきて、そのまま抱き着いて来ようとしたので、【雷迅】の速度を活かして額を押さえる。


「確かめるのに必要」

「どう必要なんだ?」

「私、手の感覚が薄いから。体をくっつけないと分からない」

「いいから、ほら次の魔物倒しに行くぞ」


 澪奈がぶーっと頬を膨らまし、俺たちは渋谷の街を歩いていく。

 ……本当に、破損の感じが凄いな。

 ハチ公前すぐ近くにあった建物は窓などが壊れている。エスカレーターもあるのだが、もちろん起動はしていないし、ひび割れなどが多くみられた。

 その内部にもウォーリアリザードマンはいて、まるで魔物たちが街を破壊している姿を見せられているようだ。


「……もしも、現実でこうなったら、大変」

「そう、だな。でも、迷宮が出始めた頃は……こういうこともあったらしいな」

「それは、学校の授業で聞いた」


 ……迷宮が出始めた頃、まだ誰も今のような能力に目覚めていない、あるいは気づいていない時代。

 魔物や迷宮が突如世界に現れ、警察官や自衛隊が戦闘を行っていった。


 ……ただ、魔物たちは通常の銃火器などが効きにくかった。スキルで製作した武器や、迷宮で拾った武器でないとダメージが通りにくく、各国はその対応に苦戦した。

 そして、対応が間に合わなかった市区町村、あるいは小国などが魔物によって支配されてしまった。


 今では魔物たちを殲滅し、平和な世の中に戻ってはいるが……今後、同じように魔物が大量発生した場合、対応しきれるのかどうかは疑問が残る。


 ……まあ、昔ほど酷い状況にはならないと思うが、それでも苦戦させられることはあるかもしれない。


 今では冒険者や迷宮は娯楽として扱われている部分はあるが、いつまた過去と同じようになるかは分からない。

 そう考えると、わりと危うい状況で今の生活は続いているんだな、と思わされる。


 ウォーリアリザードマンたちを倒しながら俺たちはしばらく進んでいたのだが、ある地点で渋谷エリアが終了した。

 ……そこから先は、また別の場所だ。

 目の前に現れた新宿駅の看板を見るに、新宿駅周辺のようだ。

 確かに、見覚え自体はあったが、一気にがらりと様子が変わったな。


 魔物はまだ確認できていないが、前回のような可能性もあるため、ひとまず攻略はここで終わりだ。

 新宿エリアの反対側へと向かうと、そちらは何もない。見えない壁のようなものがあり、先には進めないようになっていた。


「……ってことは、新宿エリアを進んでいくしかないってことだよな」

「たぶん、そうだと思う。ただ、やっぱり危険もあるからある程度ここでレベルを上げてからのほうがいい」

「そうだな。今手持ちもないしな……」


 前回のように、いきなりボスモンスターが出現する可能性もあるからな……。


「うん。次はボスが絶望するくらい準備を整えてから挑みたい」


 澪奈のいう通りだ。

 前回は予想できない状況であり、わりと切羽詰まった状態での戦闘になってしまった。

 なので、ウォーリアリザードマンたちを狩りまくってから先に進もう。


 方針が決まったので、澪奈とともにウォーリアリザードマンたちを討伐していった。


―――――――――――

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