第168話
編集されているものもすでにあり、皆がどれだけ熱心に活動してくれているかがよく分かる。
ただ、今回は俺の戦闘ばかりだ。澪奈やカトレアの戦闘はほとんどないため、かなり俺が目立ってしまっている。
「……今回は状況が状況だったとはいえ、俺ばっかりが戦っちゃったよな」
「うん。もうマネージャーがチャンネルの主役みたい」
「なんか嬉しそうじゃないか……?」
澪奈からすればチャンネルを乗っ取られているような状況ではないだろうか?
「だって、マネージャーと私が並んでいても誰も文句言わなくなってるし。堂々とカップル宣言できる」
「絶対するなよ……」
「うん。隠していたほうが背徳感あるし」
「そういう意味じゃないからな」
相変わらずの調子の澪奈に、ため息をつく。
澪奈は俺の戦闘シーンについての切り抜き動画などを見ているようで、それはもう楽しそうにしている。
同じようにカトレアも先日購入したスマホをもって、今日の生放送に関しての情報収集を行っている。
「なんか、かなりケースケ様の戦闘についての解説動画がありますね」
「今回の戦闘に関しては、俺が事前に解説してなかったもんな」
実は裏では今回のようなインベントリを通じた攻撃は練習していたので、うまくいくこと自体はわかっていた。
ただまあ、強敵のために温存していた技だったため、それらの解説はまったくしていなかった。
「私たちの攻撃をインベントリに取り込み、それを吐き出す。これ下手をすると私たちはこの部屋にいたまま配信もできますよね」
「それを澪奈やカトレアが解説するのも、たまにはいいかもな」
毎回皆で現地に向かうと大変なこともあるからな。
俺がカメラマンを担当し、それを澪奈たちに見てもらうというのもありっちゃありかもしれない。
ただ、二人の安心は確保できるとはいえ、カメラに映り続けるのが俺だけというのはさすがに絵的に華がない気がする。
「……とりあえず、今日の生放送は無事終わった。けど、問題は次の異世界人の人との交流」
「そう、だな。向こうが話の分かる相手ならいいんだけどな……」
あの場では、さすがに俺たちを異世界人だとは把握していなかったようだ。
仮に、異世界人とバレた場合、どうなるのだろうか?
カトレアのようにさして気にしなくてもいいのか、敵対されるのか……。
どう転がるか分からないんだよな……。
そのために、やるべきことがある。
「一応、生放送までには時間もあるし、とにかく強くなっておく必要があるよな」
俺含め、全員の装備を今購入できる最高のものに切り替えたいところだ。
レベル上げによる成長は最近では微々たるものだ。それでも、スキルレベルを上げると確かに一段階強化されるので、やる必要はあるのだが……そちらは長期的に育てていくものだ。
ステータスは、装備品で補うことができるので、俺たちの装備を整えたい。
「やっぱり迷宮にひたすら潜る?」
「そうだな。それと、ギルド協会と連携して仕事を請け負っていこうかと思ってる。分身たちを使えば、一気に大金を稼げるだろうしな」
報酬をお金でもらわず、余っている装備品を金額分受け取るというのでもいいだろう。
そうすれば、ゴールドに変換する手間も省けるし。
「そっちは、マネージャーの【軍勢】に頼るしかない」
「そうですね。装備品を入れ替えて、というのも考えられますが……一番自由に動けて、一番能力が高いケースケ様が使用したほうが効率いいですよね」
「まあ、【軍勢】に関してはスキルとして購入もできるからな。今後、必要になれば」
「でも、キングリザードマンのネックレスが優秀だっていっても、店売りの装備品のほうが優秀だから、いずれは変更する必要もある」
澪奈のいう通りだ。実際、【鼓舞】と【雷迅】はそうやって装備品から外れてスキルを購入したんだからな……。
スキル付き装備品自体は今も所有しているが、使い道はないんだよな。
今後の方針も見えてきたところで、俺は腰かけていた座布団から立ち上がる。
「とりあえず、今日はもう夜も遅いし、二人も家に帰るか?」
「あれ? 今夜は一緒に寝るって約束があったと思うんだけど……」
「そういえば、そうでしたね。ささ、ケースケ様。私の部屋までお越しください」
「二人とも、それじゃあな」
俺は分身たちを使い、二人をそれぞれの部屋へと帰した。
二人が去ったあと、俺は出会った魔物や異世界の人についてを思い出す。
……俺もかなり成長したと思っていたが、まだまだ強い魔物も人もいる。
あの魔の森でレベル上げはもちろん、日本でできることをこなしていかないといけないな。
何より、澪奈のチャンネルを盛り上げるために、安心安全の異世界・迷宮攻略を視聴者に届けられるよう、もっと強くなろう。
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新作投稿しました!
ゲームの悪役キャラに転生した俺が、裏でこっそり英雄ムーブで楽しんでたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまった
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