第23話


 今日は澪奈の初生配信を行う水曜日だ。

 すでにTwotterなどで澪奈の活動予定については発表していて、ファンの人たちも期待してくれているようだった。

 そんな中、俺がしていることといえば、レベル上げだ。

 昨日今日とひたすら迷宮にこもってゴブリンたちを狩っていたのだが、そろそろ澪奈が来る時間になるので、迷宮から部屋へと戻ってきた。


「……こんなものか」


 軽く息を吐いてから、俺は自分のステータスを確認する。


 茅野圭介 レベル17 筋力:47 体力:17 速度:55 魔法力:17 器用:17 精神:17 運:17

 ステータスポイント:0

 職業:【商人】

 装備:【ロングソード 筋力+3 速度+3】【速度のネックレス 速度+18】【筋力のネックレス 筋力+18】【速度のネックレス 速度+9】


 装備合計:筋力+21 速度+30

 ステータスポイント割り振り:筋力+9 速度+8


 ……ゴブリンリーダーの召喚するゴブリンたちはやはり最高率だ。

 途中休みを挟みながらではあるが、ほとんどずっと狩っていたからか、俺のレベルは4上がった。


 ゴールドも2万ゴールドを越えるくらい稼げた。まあ、今回はダンジョンワープ玉を使用せずに向かったけど。


 ステータスが、何とか澪奈に追いついてきたところだ。

 我ながら、中々の成長速度だと思っているが、平均的な冒険者と比べたらどうなんだろうな?


 部屋に戻ってきた俺は澪奈と合流して、夕食を頂く。

 少し早めの夕食を終え、すぐに配信の準備をする。


 目的の時間近くになって生放送の管理画面を見てみると、すでに待機者が結構いた。


「……皆、見に来てくれてるな」

「うん」


 澪奈は……あまり緊張していないようだ。

 一応、『ライダーズ』でも活動していたからな。

 それでも、まったく緊張していないというわけでもないようなので、その緊張をほぐすように背中を軽く叩いた。


「澪奈はいつも通りにしていれば、それだけで人を惹きつける魅力があるから大丈夫だ」

「ということは、マネージャーに冗談を言っても大丈夫?」

「それはやめろ」


 俺の苦々しい顔に、澪奈は笑っている。

 ……俺としては本気でやめてほしいと思っているのだが、どうやら澪奈は軽く考えている部分があるようだ。

 澪奈の体から緊張が抜けたようで、いつもの落ち着いた微笑を浮かべている。

 もう、配信開始の時間間近だ。俺はスマホを構え、澪奈のほうに向ける。


「澪奈、準備いいか?」

「うん、大丈夫」

「それじゃあ、生放送開始する。3、2、1、スタート!」


 着替えを終えた澪奈が迷宮の入口である黒い渦の前に立っている。

 そこで俺は生放送を開始し、澪奈のほうを映した。

 生放送が始まったことで、コメント欄が本格的に動き始める。

 視聴者は今のところ……100人くらいか。

 決して多くはないが、いきなりでこれだけ集まっているのだから悪くはないだろう。


「こんばんは、澪奈です。これから迷宮攻略に行きたいと思います」


 淡々と、いつもの調子の澪奈に、コメント欄も反応していく。 


〈こんばんはー〉

〈澪奈さん、今日も可愛いです!〉

〈動画見ました! これからソロでの活動頑張ってください!〉


「コメントさん、ありがとう。撮影はマネージャーに任せているから。マネージャー。質問コメントとかきたら教えてね。一応、戦闘しないときは私も自分のスマホで見てますけど、あんまりリアルタイムで対応できない可能性はありますから、そこはごめんなさい」


 俺はなるべくしゃべらないほうがいいと思っているので、片手で丸印を作ると、同じように澪奈も丸印を作った。


「マネージャーが、丸、だって。それじゃいきましょうか」


 澪奈もスマホを片手にもち、俺も頷いて澪奈の後に続いた。


〈澪奈ちゃん、可愛い〉

〈ここってマネージャーの自宅なの?〉

〈……かなり狭くない?〉


「マネージャー、質問来てる。答えてあげて」

「……俺が?」

「うん。ほら、どうぞ」


 澪奈がカメラに近づいてきて、マイクに見立てたかのように片手を伸ばしてくる。

 澪奈のアップに、コメント欄が少し伸びる。


〈澪奈ちゃん、可愛い……〉

〈澪奈ちゃんが俺に近づいてきてくれた……〉

〈マネージャーさん、聞きたいですけど迷宮がマジで自宅に出てきたんですか?〉


 再度質問されてしまったので、俺は仕方なく答える。


「ええ、そうですね。家帰ったらあんな感じであったんですよ……」

「ね。いろいろあって帰ったのに。たまたま終電の日じゃなくて良かった」

「……そうですね」


〈たまたま? 終電じゃない日がたまたまなのかw〉

〈もしかしてマネージャー業ってブラック?〉


「……そこは、ノーコメントで」

「それってある意味肯定」


 くすくすと澪奈が笑い、コメント欄でも「w」といったものが増えている。


〈事務所とかって大手以外はそんなものじゃないか?〉

〈俺の知り合いに大手事務所の人いるけど、大手でも似たようなもんらしいぞ? 始発で行って、終電で帰るとか当たり前だって〉


 ……色々あったが、俺としては事務所を悪く言うつもりはないので、コメントの意見に同意しておこう。


「……そうですね。どこも始発で行って次の日の終電で帰るときとかもあるみたいですね」


〈草〉

〈マネージャーさんはあったんですか?〉


「……ノーコメントで」

「肯定いただきました」


〈澪奈ちゃんの頬が引くついてて草〉

〈マネージャーさん……強く生きてくれ〉

〈ていうか、澪奈ちゃんもそんな感じなの!? 大丈夫!?〉


 コメント欄に誤解されてしまったかもしれない。

 俺は慌てて、それを否定する。


「澪奈さんは違いますから安心してください! 学生なので、だいたいの活動は休日に合わせてます。それも九時、十八時になるようにしていますよ」


 そこだけは誤解がないように伝えておかないといけない。


―――――――――

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