第161話


 想定外のところで大きな盛り上がりを見せたが、おかげで視聴者もさらに増えていっている。

 もしかして、今日新たな風を呼び込む必要なかったか?

 なんて考えながらも、今更今日の予定を変えるわけにはいかないので、進行していくことに。


「そういえば、マネージャー。魔物のステータスは書いた?」

「いえ、まだですね。とりあえず、先に異世界の魔物のステータスを書いておきますね」


 生放送前に集めた魔物の情報を載せていく。

 俺が事前に集めていた魔物のステータスを載せていくと、コメント欄が盛り上がる。


〈やば……異世界の魔物強すぎないか?〉

〈強いはずの澪奈ちゃんたちでさえ結構厳しくないか?〉

〈ステータスは結構勝ってるから問題ないとは思うけど、それでも普通の冒険者じゃまず無理そうだよな……〉

〈日本の冒険者……例えば澪奈ちゃんたちの化け物以外のSランク冒険者ってどのくらいのステータスなんだろうな?〉

〈もしもまったく対応できなかったら……やばいよな〉

〈でも、マネージャーたちと戦った獅子原さんとかってまったく歯が立ってなかったよな?〉

〈装備を整えたりしていれば話は別だけど、それでも厳しいかもしれないよな……〉


 俺たち以外のSランク冒険者か。

 コメントにもあったが、獅子原さんのステータスは覚えているので公開できないこともないが、さすがに個人情報なので許可なく明かす予定はない。

 ただまあ……申し訳ないが俺の知っている獅子原さんでは歯が立たないとは思う。


「さっそく新しい魔物たちと戦いに向かう」


 澪奈がそう言ったところで、俺たちは異世界へと移動した。

 それから分身を派遣し、魔物を探させに向かう。

 ゴブリンに関しては分身たちに仕留めてもらい、生放送では初めてとなる魔物を見つけ出してもらう。


 ……発見したのは、スケルトンナイトとスケルトンウィザードだ。

 前を歩いていた澪奈たちに、俺は声をかける。


「澪奈さん、カトレアさん。魔物見つけました」

「わかった。相手はどれだった?」

「スケルトンナイトとスケルトンウィザードですね。それぞれ、三体ずつです」

「だって皆。さっそく行ってみようか」


 澪奈とカトレアの準備も終わったので、すぐに俺たちはインベントリを使って移動する。

 分身たちはスケルトンナイトとスケルトンウィザードから少し離れた位置にいた。

 まだ、こちらに気づいている様子はないな。

 交戦前にコメント欄を見てみると、いくつか俺の移動方法に驚いているコメントがあったが、それについてはほかのコメントが説明してくれているのでまあ問題はないのではないだろうか?


〈うわ、こいつらがスケルトンナイトか。かなりステータス高いな〉

〈こいつら一体でも地球にいたらその地方は壊滅するレベルだよな〉

〈マネージャーさんの索敵精度は相変わらずすごいですね〉

〈索敵(物理)だからなぁ〉

〈索敵系のスキルよりはちょっと時間かかるとはいえ、便利すぎるよな〉

〈何より、瞬間移動できるしな……これマジチートだよ〉

〈三人の戦闘楽しみです! 頑張ってくださいね!〉


 ……コメント欄も期待してくれているし、恥ずかしいところは見せられないな。

 といっても、この配信のメインは澪奈だ。なので、彼女が目立つように戦闘は行う予定だ。

 俺が澪奈へと視線を向けると、彼女のそばにいた分身がインベントリから長い銃を取り出した。


 それを受け取った澪奈にカメラを向ける。


〈それもしかしてスナイパーライフル?〉

〈もしかして、澪奈ちゃんそれも使えるの!?〉

〈スナイパーライフル系統の魔銃って扱いが難しいって話だけど……さすがだな〉

「ちょっと練習で使ってみた感じ、問題なく使えた」


 ぶいっとカメラにピースを作った後、澪奈がスコープを覗き構える。

 覗いたのは一瞬――引き金が引かれ、銃弾が放たれる。

 まっすぐに向かった銃弾は、狙い通りではないだろうか? スケルトンの眉間を打ち抜き、一体を仕留めた。

 その攻撃に合わせ、スケルトンたちも即座に反応する。


 驚いたのはその判断能力の高さだ。連続の攻撃を警戒してか、スケルトンたちは即座にその場から跳躍した。

 その動きまでは読んでいなかったため、澪奈の二撃目はかわされる。銃弾は静かに地面をえぐり、スケルトンたちが骨を打ち合わせるようにして叫んだ。


 同時に、即座に地面を蹴りつけ、こちらへと迫る。

 後方には三体のスケルトンウィザードが魔法の準備を始める。

 ……さすがに、これらすべてを相手にするのは難しい。

 俺は自分の分身を三体作り出し、スケルトンたちと対面しないよう大きく迂回させるように動かす。


 分身三体に魔法の妨害をしてもらうためだ。スケルトンたちは分身を確認していたが、まずは俺たちを仕留めるのを優先したようだ。

 澪奈がスナイパーライフルで銃弾を放っていくが、スケルトンはそれを持っていた骨で弾いていく。

 ……器用な魔物たちだ。そして、俺たちに肉薄する。

 後方のカトレアと澪奈を守るため、俺が一歩前に出る。

 スケルトンたちは、骨を振り下ろしてくるが、それを俺は手の甲で殴るように弾く。

 連続で振りぬかれた攻撃をかわしきったところで、スケルトンに隙を見つけた俺はその場で足を動かし、腰を回すようにして回し蹴りを放った。

 踵がスケルトンの頭に当たり、骨の砕ける音が響く。スケルトンを弾き飛ばすと、背後からスケルトンが迫ってきたがそれを分身を召喚することによって一瞬受け止めてもらう。


 スケルトンが後方に跳んだのを見て、俺はさらに二体の分身を出す。

 二体の分身は【石投げ】とともに接近するが、スケルトンには当たらない。

 左右から攻撃をしかけた分身にスケルトンが骨を構えなおしたところで、俺はインベントリを使用し左の分身から這い出た。

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