第48話
あまり信憑性のないニュースを流す会社なのだが、そこには某クランや某クランがすでに接触している……とか、何とかあることないこと書かれていたな。
最後の文章では、クランに所属しての活動になるだろう……みたいに。
まったくインタビューなどを受けていないので、すべてその記者の憶測なのだが、一度記事として世の中に出ると信じられてしまうんだよな。
澪奈もそれについては知っていたようで、思い出したように声を上げる。
「クラン! そういえば仕事用のメールにクラン関連のものが届いていましたね。評価していただいているのはとても嬉しいのですが、今はこのくらいの感じで活動したいので、ごめんなさい。一応受験生ですしね」
〈受験生……そういえば十八歳だっけ?〉
〈設定では確か〉
「設定じゃないですよ。受験忙しいんですよー」
ちょっと怒ったような声を上げ、それから苦笑する。
〈大学どこ行くんですか!?〉
〈俺も同じ大学行きたいです!〉
「内緒です。それじゃあ早速ですけど、今回は私のこの一週間の成長を見てもらいたいと思います。あと、マネージャーの戦ってるところも見たいという声もあったので。私のことを心配している声も多いし」
〈マネージャー! 久しぶりですね〉
〈戦っているところみたいです〉
賛成のほうが多い、という感じか?
……まあ、俺としてはどちらでもいいが、やはり澪奈を心配する声が多いようだ。
だから、マネージャーがどのくらい戦えるのかを見たい、という意見が結構ある。
「安全調査にもなるから、ちょっとだけ戦ってもらおうと思ってる。まあ、マネージャーがだいたいロケハンしてくれてて、安全な中で撮影しているんだけど」
〈マネージャーのロケハン見てみたいかも〉
〈マネージャーって今仕事してないんだよね? 澪奈が配信できないときとかロケハンの様子みたいかも〉
〈確かに。マネージャーの日常とかも見てみたいし〉
〈マネージャーの生配信みてみたいです!〉
「だって、どうするマネージャー?」
「……あくまで澪奈さんがメインのチャンネルですので」
「やるとしたらマネージャーがチャンネルを作ってそちらでやるってこと?」
「そこまで言ってないんですけど?」
〈それはそれで楽しみ〉
〈ロケハン放送楽しみにしてます!〉
〈期待!〉
……これってどっちなんだろうな?
悪ノリしているコメント欄もあると思うから、あまり真に受けないほうがいいとは思うが、需要があるならやるのもありかもしれないよな。
それについてはまたあとで検討するということで、視聴者も5000人近くまで増えていたので俺は迷宮を指さした。
俺の意図を理解した澪奈が、迷宮のほうへと歩き出す。
「それじゃあ、そろそろ迷宮に入ります。今日はこの一週間頑張って訓練した成果を見てもらうおうと思ってます」
〈一週間頑張ったっていっても、一週間でそんなに変わるの?〉
〈そんなに変わらないよね? 変わるとしても、相手の癖が分かったとかそのくらい?〉
〈ただ、今の澪奈ちゃんは急成長状態だから、一週間でも結構変わるかも〉
〈とにかく期待。できるなら、新しいエリアを見てみたいかも〉
〈こういった迷宮がエリアごとに魔物が違うのかとか、ボスモンスターはどんな感じなのかと、色々調べてほしいから早く成長してほしい〉
澪奈の純粋なファンと、冒険者としてのファンが入り乱れていて、様々なコメントが流れていく。
それらを見ながら俺は澪奈とともに迷宮へと入っていく。
見慣れた草原に到着したところで、澪奈がワーウルフを探して歩き出す。
まだ魔物は見つかっていないので澪奈がスマホでコメントと話しながら、迷宮内を歩いていき、
「ガアアア!」
ワーウルフを発見した。
すでに向こうもこちらに気付いていて、澪奈がスマホをしまってハンドガンと剣を構える。
俺ももちろんすかさず【鼓舞】を使用してアシストする。
ワーウルフが動き出すと澪奈がその動きを先読みして弾丸を浴びせていく。
回避しようとしたワーウルフだが、その回避先にすでに弾丸があるようなイメージ。
〈え? マジで?〉
〈先週と驚くくらい動き変わってない?〉
〈ワーウルフがかわいそうなくらい避けれてない……〉
〈マジで成長速すぎないか!?〉
ワーウルフがどうにか射程内にまで入ったときには、すでに結構傷を負っている。
……HPでいえば、半分は削られているのではないだろうか?
ワーウルフが拳を振りぬいたが、すでにそこに澪奈はいない。ワーウルフの拳をくぐるようにしてかわし、澪奈が剣を振りぬいた。
ワーウルフの足を斬りつける。よろめいたワーウルフが蹴りを放つが、すでに澪奈はその反対に回っている。
ワーウルフが攻撃しようと動けば、すでにそこから澪奈は移動している。
澪奈の攻撃はすべて当たり、ワーウルフの攻撃は外れる……。
完全に、澪奈の手の平の上で転がされているな。
それから澪奈は数度ワーウルフを攻撃したあと――。
膝をついて崩れたワーウルフの首を跳ね飛ばした。
戦闘を終えた澪奈が微笑とともにこちらを見てきた。
「とりあえずこのくらいは戦えるようになった。結構強いでしょ?」
〈結構どころじゃないんですがそれは……〉
〈明らかDランク冒険者の域を超えてるよな……? 再検査って受けたの?〉
〈これなら普通にCランクパーティーとか入っても大丈夫だよな……〉
「再検査はまだ受けてなうです。別に受けなくても困ってないから、とりあえずはこのままでやっていこうと思ってる。パーティーも同じ理由から今は考えてない、って感じです?」
澪奈がそういって何度かワーウルフと戦闘を行っていくと、視聴者も気づけば10000人を超えていた。
今ではだいたい配信をすると10000人を超えてくるな。
……これが当たり前ではない。
この人数を継続していけるようにやらないとな。
コメントを見ながら一視聴者として澪奈の配信を眺めていると、
「それじゃ、マネージャーの戦闘も見てもらおっか。マネージャーカメラマン交代」
澪奈が近づいてきて、スマホを貸してといった様子で手を差し出してくる。
―――――――――
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
楽しんでいただけた方は☆☆☆やブクマをしていただけると励みになりますので、よろしくお願いいたします!
※☆は目次やこのページ下部の「☆で称える」から行ってください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます