第47話

 倒れたワーウルフは起き上がることなく、そのまま素材を残して消えていった。

 ……なるほどな。

 これは便利だ。攻撃の瞬間に魔力を込めることで、恐らく筋力や体力を強化できているんだと思う。


 ワーウルフと何度か戦闘をし、拳と蹴りでの戦闘に慣れていく。

 状況に応じて肘鉄を使ったり、膝蹴りを使ったり。その場で使えるものをすべて使うのが、俺の戦闘スタイルだ。

 ……こうなると、【石投げ】も決して悪くはないのかもしれない。


 あれはゴブリンのスキルを見た限り、石のような魔力の塊を生成して投げつけていた。

 中距離を詰めるときに、便利かもしれない。

 拳銃よりは【石投げ】のほうが命中率も高そうだしなぁ。


 そんなことを考えながら、ワーウルフを倒して進んでいった俺は荒地エリアへと来ていた。

 ……澪奈の配信での動きを考えると、そろそろ新しいエリアを見て回れるようにしたい。

 俺は気配を消すの意識しながら、荒地エリアを進んでいく。


 右手にはダンジョンワープ玉を握りしめている。起動まで一分程度かかるとはいえ、一分間逃げ切ればいいからな。

 荒地エリアは高低差が多い。くぼみのような部分が多くあり、あまり遠くまで見渡すことができない。


 そんな中を進んでいった俺は、……ワーウルフを見つけた。


 ……いや、違う。

 見た目はワーウルフなのだが、筋肉量が凄まじい。

 前のワーウルフがひょろひょろだったのに比べ、このワーウルフたちはムキムキだ。

 名づけるならばワーウルフ・ムキムキだが――


 パワーワーウルフB レベル35 筋力:131 体力:132 速度:91 魔法力:51 器用:87 精神:84 運:85

 ステータスポイント:0

 スキル:【格闘術】

 装備:なし


 ……筋力が、えぐいな。

 ワーウルフたちをそのまま筋力、体力面のみ強化していったかのようだ。

 身長は……二メートルくらいか? 俺もわりと大柄なほうではあるが、それでも俺よりも頭一つ分くらいは大きい。


 体格が立派であるため、見た目以上に威圧感があるな。

 ……荒地エリア。初日に調子乗っていかなくて正解だな。


 それでも、速度は今の俺のほうが勝っている。二人がかりで挑めば、どうにかなるかもしれないくらいには俺たちも成長したようだ。


 発見したパワーワーウルフがBということはこいつもどこかで出現していて、出現数に上限があるタイプなのかもしれない。

 攻撃はせずに荒地エリアを散策していると、パワーワーウルフとワーウルフのペアで行動しているのも見かけた。

 ……このエリアでは単独行動しない魔物もいるのか。

 そのワーウルフのステータスも、高い。


 ワーウルフE レベル34 筋力:93 体力:70 速度:96 魔法力:71 器用:78 精神:74 運:75

 ステータスポイント:0

 スキル:【格闘術】

 装備:なし


 ……ほぉ。

 ワーウルフもこのエリアに出てくるのか。

 ただ、明らかに個体が別扱いなんだろうな。

 草原エリアで戦っていたときにAからZまですべてのワーウルフを倒したことがあった。


 ……ということは、逆に言えば奴らは別のエリアを跨がない可能性もあるよな。

 迷宮のように線引きされているとすれば、これほど気楽なことはないが。

 荒地エリアのワーウルフも単独行動していることがあるな。

 このエリアは1から2体で行動している魔物が多いな。

 ……狙いどころとしてはワーウルフか。


 パワーワーウルフはまだ挑まないほうがいいよな。挑むなら澪奈と二人がかりだ。

 荒地エリアを抜けると、また別の草原があるようだ。

 ただまあ、もうこれ以上調査する時間はないな。


 澪奈の配信時間も迫っているので、ひとまず戻ろうか。




 配信開始時間となり、俺はカメラを澪奈のほうに向けた。


〈おっ、始まった。今日も楽しみにしてます ¥2000〉

〈一週間ぶりの配信だぁ……澪奈ちゃんを見れなくて寂しかったです! ¥1000〉

〈こんばんわー。いつもの六畳間からありがとうございます! ¥5000〉

〈親の顔よりよく見る六畳間だ ¥1000〉


 開始と同時にいくつものスパチャが飛んでくる。

 ……すでに視聴者は2000人を超えていて、その数に驚かされる。

 ただ、澪奈は慣れた様子で微笑とともに手を振っている。


「皆さんお久しぶりです。一週間ぶりですかね? あっ、コメントたくさんありがとうございます。スパチャもありがとうございます。最後にすべて読み上げさせていただきますね」


 澪奈も手元のスマホで自分の配信を確認しながら話していく。

 視聴者はさらに集まっていき、


〈登録者十万人おめでとうございます!〉

〈冒険者界隈でも話題になっているみたいですよ!〉

〈なんか高校生ではありえないくらい強いみたいですねっ。いくつかの冒険者パーティーが誘いたいって言っていましたよ!〉

〈ネットニュース見ました! クランに所属するんですか!?〉


 ネットニュース。

 そういえば、澪奈のことについて書かれた記事があったな。




―――――――――

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


楽しんでいただけた方は☆☆☆やブクマをしていただけると励みになりますので、よろしくお願いいたします!


※☆は目次やこのページ下部の「☆で称える」から行ってください!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る