第46話
「澪奈?」
「……な、なに?」
なぜか顔が赤かったので、問いかけると彼女は少し恥ずかしそうにしていた。
理由は分からないが、とりあえず再確認だけしておこう。
「それじゃあ、返信しちゃうからな」
「うん、お願い」
一方的に送られてきているため、無視することもできるが良くない印象を与えてしまうだろう。
ただ断るにしても、断り方というのもある。
今はMeiQubeでの活動に集中したい、ということでまた機会がありましたら……という程度にしておく。
澪奈が将来的に所属したいと思った時に所属できるような可能性を残せるようにだ。
……それに、仮にクランに所属しないとしても何かしらの仕事の話を頂けるかもしれないからな。
一通り連絡をしたところで、次は件名がないメールなどを確認していく。
……ファンからのメッセージのようなものが多いな。
澪奈のTwotterのDMを閉じたことで、こちらに来るようになったみたいだ。
いくつか、澪奈には見せたくないような画像を送り付けてくる輩もいる。
こいつらは、メールを保存しておいて、あまりにも何度も来る場合は訴訟も辞さないということで……。
応援メッセージなどはファイルにまとめて入れ、あとで澪奈に見てもらうか。
そうしてメールを捌いていると、
「は!?」
急に裸の女性の画像が出てきた。
そして本文には、
『マネージャーさん! 私マネージャーさんのファンです! よかったら返信してください!』
……な、なに言ってんだこいつは!
さらにはスリーサイズなども書かれていて、わりとでかいな……。
いや、そうじゃない!
とち狂ったメールに頬が引きつっていると、
「マネージャー?」
背後に立っていた澪奈が画面をのぞき込んでくる。
これはいけない。澪奈に悪影響を与えてしまう可能性がある!
俺がメールを消そうとマウスを操作すると、澪奈がそのマウスを奪ってメールを眺めている。
そして、
「私のほうが大きい」
そういってメールを削除した。
……一応、こういったメールは残しておけばあとで証拠に使えるかもしれないから俺は残していたのだが……澪奈はちらとこちらを見てくる。
「マネージャー。さっきじっと見てなかった?」
「い、いや見てない」
「そう?」
そういって澪奈がわざとらしく胸を揺らす。
俺は一瞬視線を引っ張られたが、すぐに横にそらす。
「み、見てないぞ」
「それなら別にいい。ああいうメール、全部無視するように」
「分かってる。澪奈の名前に傷つけるようなことはしないから」
「それならいい。困ったときは私に言って」
「言いませんからっ」
……うーん、メールを開放しておくというのも考え物だな。
でも、さっきのように仕事の話などもあるからなぁ。
今後……例えば迷宮攻略をしてほしいと言われたら、交渉次第で動画のネタになるしな。
まあ、今はあまり有効に使えていないかもしれないが、将来的なことを考えるならこのままのほうがいいだろう。
単純に、ファンレターのようなものも受け取れるんだしな。
配信を行う前に俺は一人迷宮へと来ていた。
成長させた上ステータスを確認するためだ。
特に今回は……新しいスキルもあるんだしな。
【格闘術】。果たして、どんなものだろうか。
俺はいつものジャージに袖を通し、迷宮内を歩いていく。
ワーウルフはすぐに見つかった。
レベル28……一番強い個体か。
今回は、正面から戦ってみよう。
俺が正面から歩いていくと、ワーウルフがこちらに気付いた。
堂々と歩いていたからか、ワーウルフは苛立ったようにこちらを睨みつけてくる。
舐められている、とでも思ったのかもしれない。
ワーウルフが地面を蹴りつけ、迫ってくる。
振りぬかれた拳を、俺は腕を折り曲げるようにして弾いた。ワーウルフが拳と足を振り回し、こちらを倒すために動いてくる。
……だが、見える。【格闘術】のおかげか、ワーウルフの動きが手を取るように見える。
そして、同時に戦い方も――。
ワーウルフが魔力をまとった拳を振りぬいてくる。
……最初に剣で受けたときがあったのだが、あのときは予想以上の衝撃に襲われた。
その正体はこの【格闘術】に関連しての魔力強化だ。
要領が分かれば、こちらも同じように攻撃すればいい。大きく足を滑らせるようにしてワーウルフの脇へと移動する。
右手に魔力を込めながら、思い切り拳を振りぬく。
ワーウルフの脇腹に深くめりこみ、ワーウルフの体が吹き飛んだ。
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